青の教室 「色が見つかる場所」 第7章 りくの揺れ──「本当は悔しいんだ」
記事
学び
第7章 りくの揺れ──「本当は悔しいんだ」
藤井りくは、
体育館の裏でサッカーボールを蹴りながら、
ため息をついていた。
「……やっべぇな、今回のテスト」
答案用紙の点数が頭から離れない。
友達の前では笑ってごまかした。
「俺、バカだからさ〜」
でも、
その言葉を言った瞬間、
胸の奥がズキッと痛んだ。
(ほんとは……悔しいんだよ)
その気持ちを誰にも言えなかった。
■ 青の教室での沈黙
青の教室に着くと、
ひなたとそらがプリントに向かっていた。
「りく、今日も来たんだ」
ひなたが笑う。
「まあな。暇だったし」
りくはいつもの調子で返した。
でも、
プリントを開いた瞬間、
りくの手は止まった。
(……またできなかったらどうしよう)
胸の奥がざわざわして、
鉛筆が動かない。
友彦がそっと近づいた。
「りくくん、今日は静かな風だね」
「……別に」
りくはそっぽを向いた。
■ 友彦の“ちょうどいい言葉”
友彦は、
りくの隣に静かに座った。
「テスト、悔しかったね」
りくは、
思わず顔を上げた。
「……なんでわかるんすか」
「悔しいときの風は、
ちょっとだけ重くなるんだよ」
りくは、
胸の奥がぎゅっとなった。
「……悔しいっすよ。
めちゃくちゃ悔しいっす」
その言葉は、
りくが初めて口にした“本音”だった。
友彦は、
その言葉を大切に扱うようにうなずいた。
「悔しいってね、
根っこが動いてる証拠なんだよ」
「根っこ……?」
「うん。
“できるようになりたい”って気持ちが、
りくくんの中で動き始めてるってこと」
りくの胸の奥が、
じんわり熱くなった。
■ りくの“初めての挑戦”
友彦は、
りくのプリントの一問を指さした。
「りくくん、
今日はこれだけでいいよ」
「これだけ?」
「うん。
“全部”じゃなくて、
“ひとつ”をやってみよう」
りくは、
ゆっくり鉛筆を動かした。
書けた。
「……できた」
「できたね」
友彦は、
それ以上ほめなかった。
でもその“ちょうどいい肯定”が、
りくの胸にすっと入った。
(俺……
ほんとは、できるようになりたいんだ)
その気持ちが、
りくの中で静かに芽を動かした。
■ りくの“揺れ”が色になる
帰り際、
りくはドアの前で立ち止まった。
「先生……」
「うん?」
「俺……
もっとできるようになりたいっす」
その言葉は、
りくの根源が初めて言葉になった瞬間だった。
友彦は微笑んだ。
「その気持ちがあれば、
りくくんはどこまでも伸びるよ」
りくは、
胸の奥がふわっと軽くなるのを感じた。
――悔しいって、
悪いことじゃないんだ。
その小さな揺れが、
りくの色をそっと動かし始めた。