青の教室 「色が見つかる場所」 第3章 りく──できない自分を隠す理由
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第3章 りく──できない自分を隠す理由
藤井りくは、
青の教室の前でスニーカーのつま先をトントンと鳴らしていた。
「……まあ、ちょっとだけなら行ってみるか」
ひなたとそらが通っていると聞いて、
なんとなく来てみた。
りくは運動が得意だ。
サッカーも走るのも速いし、体育の時間はいつもヒーローだ。
でも――
勉強になると、急に黙る。
「バカだからさ」
と笑ってごまかすのが癖になっていた。
本当は、
その言葉を言うたびに胸が少し痛む。
でも、
“できない自分”を見られるよりはマシだった。
■ りくと友彦の最初の会話
ドアを開けると、
友彦がゆっくりと顔を上げた。
「藤井りくくんだね。ようこそ」
「どもっす」
りくは、
いつもの“軽い感じ”で返事をした。
でも友彦は、
その軽さの奥にある“本音”を見抜いたような目をしていた。
「りくくんは、どんな勉強が好き?」
「いや、別に。
俺、バカなんで」
軽く言ったつもりだった。
でも友彦は、
その言葉を笑わなかった。
「“バカ”ってね……
自分を守るための言葉なんだよ」
りくは、
思わず顔を上げた。
「守る……?」
「うん。
本当は“できるようになりたい”って思ってる証拠なんだ」
りくの胸の奥が、
ズキッとした。
図星だった。
■ りくの“止まった鉛筆”
プリントを渡されると、
りくは鉛筆を握ったまま動かなくなった。
「……これ、無理っす」
「どこが無理?」
「全部」
りくは笑った。
でもその笑いは、
自分でもわかるくらい弱かった。
友彦は、
りくの横に静かに座った。
「りくくん、
“全部無理”って言うときはね……
本当は“どこからやればいいかわからない”ってときなんだよ」
りくは、
ハッとした。
「……そうかも」
「じゃあ、ここから一緒にやってみよう」
友彦は、
りくのプリントの“最初の一問”だけを指さした。
「ここだけでいいよ」
りくは、
ゆっくり鉛筆を動かした。
書けた。
「……あ、できた」
「できたね」
友彦は、
それ以上ほめなかった。
でもその“ちょうどいい肯定”が、
りくの胸にすっと入った。
■ りくの“本当の気持ち”
帰り際、
りくはドアの前で立ち止まった。
「先生……」
「うん?」
「俺……
本当は、できるようになりたいっす」
その言葉は、
りくがずっと胸の奥に押し込んでいた“本音”だった。
友彦は、
その言葉を大切に扱うように微笑んだ。
「その気持ちがあれば、
りくくんはどこまでも伸びるよ」
りくは、
胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。
――ここなら、
“バカ”って言わなくてもいいのかもしれない。
その小さな気づきが、
りくの中でそっと芽を動かした。