ストレッチマン患者さんが来なくなってからしばらくがたち、
私も仕事に追われる日々を過ごしていた。
「あっ、あの人よ」
ストレッチマン患者さんのお姉さんが、女性と一緒にリハビリ室の前で話していて、私を見つけると嬉しそうに手招きした。
「はじめまして。主人がお世話になっております…」
その人は、ストレッチマン患者さんの奥様だった。
「あの人から言われて来たんです」
と小さな花束を差し出した。病院職員は、物品を受け取ってはいけないと規約にあった為、断ろうとした
「プレゼントと言ったら断られるから、そこに落ちてたと言いなさいと言われています。ここに置ておきますので、私たちが帰ってから飾ってください」
ストレッチマン患者さんらしい口調だ。
お礼を伝え、ベンチに腰掛けた。
「実は、私たちには子供がおりません。小さいころ、病気で亡くしてしまってね…あなたと同じ名前だったんです」
私の名札を見ながら言う。
お姉さんから私のことを聞いて、リハビリの指示をもらったのだという。
私と話していると、大きくなった娘と話しているようだったと。
一緒に運動をすると、楽しかったと言われた。
「あの人、末期がんでね。丁度落ち込んでいた時に姉からあなたのことを聞いて。リハビリに通いだしたら気持ちも落ち着いたみたいで…ほんとうにありがとう…」
今はむこうの病院の緩和病棟に入院しているという。
会いに行ってもいいかと尋ねると、是非と言われたので、その日の夕方に会いに行くことにした。