『瞳のタロット逆算リーディング学習・序編』
暗記しないタロット入門。78枚は、覚えずに「絵」で読む
まず、絵から意味へたどる、いちばん基本のタロット
第一話「タロットって、なに?」
タロットを始めたいけれど、78枚も覚えられる気がしない。
カードを一枚引くたびに本を開いて、意味を確かめて、また忘れて。
これを78枚、上下の向きで二通りずつ。
そう考えただけで、始める前に気が遠くなる。
一度それで本を閉じた人も、たぶん少なくありません。
でも、つまずいているのは、覚える力ではありません。
入口を、暗記から入ってしまっただけです。
タロットは、絵に意味が込められた78枚です。
だから、まず絵を見る。
旅に出る人の絵なら「始まり」、みんなで杯を交わす絵なら「喜び」。
意味を覚える前に、絵そのものが、もう半分を教えてくれる。
覚えるのではなく、絵から意味へたどる。
その目を育てれば、78枚を丸暗記しなくても、カードは読めるようになります。
この『序編』は、その絵から読む基礎を、最初の一歩から物語仕立てで身につけていきます。(全6話。無料投稿と有料販売があります。)
(そして基礎が固まったら、この先に本編『瞳のタロット逆算リーディング学習』があります。同じ絵を、こんどは逆算的に、限界まで読み切る稽古です。いまいるのは、その最初の一段です。)
次のような方にこそ、もっとも最適な学習教材となります。
・これから始めたいのに、78枚という数を見ただけで気おくれする方。
・前に一度始めて、覚えきれずに本を閉じてしまった方。
・覚えることが習得だと思って、丸暗記に疲れている方。
・興味はあるけれど、難しそうで手を出せずにいる方。
今回は第一話。
タロットって、そもそも何か。
78枚の全体像から始めます。
◆ このシリーズは
『瞳のタロット逆算リーディング学習』は、カードが示す意味を、限界まで読み切るシリーズです。
その稽古は、本編でやります。
でも、いきなり逆算的には読めません。
逆算的に読むには、まず「ふつうの読み方」を知っている必要があります。
絵を見て、意味を知る、いちばん基本のタロットです。
この『序編』は、その基礎を、最初から身につけるための入口です。
難しい専門用語は使いません。
基礎と基本だけ。
丸暗記ではなく、絵から意味へたどる感覚を育てるので、覚えるのが苦手でも大丈夫です。
順番は、こうです。
まず、この『序編』でふつうの読み方を身につける。
それから本編『瞳のタロット逆算リーディング学習』で、逆算的に読む稽古に進む。
今いるのは、その最初の一段です。
案内役は、セーラー服の占い師・瞳。
隣で、兄の僕が、初めての人の代わりに「それ、なに?」と聞く係をやります。
僕はタロットの素人で、最後まで素人のままですが、その分、みなさんが引っかかるところで、ちゃんと引っかかります。
なお、この著者は、「おちゃのこ」です。
◆ 序編・全六回の道のり(タロットの基礎を、順番に)
第一話 タロットって、なに?(今回/無料)
第二話 大アルカナ、22枚の物語
第三話 四つのスートと、四つの力
第四話 数札とコート(小アルカナの中身)
第五話 正位置と、逆位置
第六話 一枚引きで、読んでみる
※コンテンツマーケットで販売します。
ここまでで土台ができたら、本編『瞳のタロット逆算リーディング学習』へ。
(※コンテンツマーケットで販売します。)
① 妹の、実験台
うちには、年の離れた妹がいる。
名前は瞳。
高校二年生。
放課後の空き教室で友達を占い、夜は自分の部屋でカードと向き合っている、セーラー服の占い師だ。
僕はといえば、タロットなんてさっぱりだ。
占いの結果を聞かされて「へえ」と言うくらいのもので、カードが何枚あるのかも知らない。
その瞳が、ある晩、リビングのテーブルに紫のクロスを敷きながら、こう言った。
「お兄ちゃん、ちょっと付き合って。タロットって何か、いちばん最初から説明する練習がしたいの」
「説明? 誰に」
「これから始める人に。でも、いきなり知らない人に話すのは難しいから、まずお兄ちゃんで試す。お兄ちゃん、タロットさっぱりでしょ」
「さっぱりだ。胸を張れるくらいさっぱりだ」
「それがいいの。さっぱりの人に分かるように話せたら、本物だから。お兄ちゃんが『分かんない』って言ったところが、きっと、みんなも引っかかるところ。だから、分かんなかったら、遠慮なく言って」
「じゃあ、僕は実験台か」
「いちばん大事な実験台。覚えなくていいからね。ただ、分かるか分からないか、正直に言ってくれれば」
覚えなくていい、と言われて、少し気が楽になった。
どうせ、覚えられる気もしない。
「で、何から?」
「まず、タロットがどんなものか。全体を、ざっくり。今日はそれだけ」
② 78枚、ぜんぶ違う絵
瞳は箱からカードを出して、クロスの上に、ばっと広げた。
色とりどりの絵が、扇みたいに並ぶ。
「これ、ぜんぶで78枚。一枚ずつ、違う絵が描いてあるの」
「78? けっこうあるな」
「あるでしょ。でもね、78枚はぜんぶバラバラじゃなくて、二つのグループに分かれてるの」
瞳は指を二本立てた。
「大アルカナが22枚。小アルカナが56枚」
「だいあるかな……」
「アルカナって、“秘密”って意味なんだけど、そこは今は気にしなくていい。大きいグループと、小さいグループ、くらいで。22と56で、足すと78」
「大きいのと、小さいの。何が違うんだ」
「それは、絵を見たほうが早い。一枚、見てみよ」
③ まず、一枚見てみる
瞳は広げたカードの中から、一枚を抜いて、僕の前に置いた。
「これ、“愚者”っていうカード。番号は0番。いちばん最初のカード」
「ゼロ番? 1からじゃないのか」
「0から始まるの。見て。若い人が、これから旅に出るところ。荷物を肩に担いで、足元に小さい犬。崖のふちだけど、こわがってない。これから何かが始まる、っていう絵」
「言われてみると、たしかに、出かける感じだな」
「でしょ。意味を覚える前に、まず絵を見る。タロットはね、絵に意味が込められてるの。だから絵を見れば、だいたい何の話か、見当がつくようにできてる」
瞳は愚者を指でとんと叩いた。
「この0番から始まって、1番、2番……って、21番まで。大アルカナの22枚は、ぜんぶつながってて、一人の人が旅をして成長していく物語みたいになってるの。だから、人生の大きなテーマを表す。始まり、とか、出会い、とか、大きな転機、とか。そういう、大きいやつ」
④ 大きいグループと、小さいグループ
「で、もう片方。小アルカナの56枚」
瞳は、別の一束を寄せた。
「こっちは、もっと身近な話。毎日の中で起きる、小さい場面。大アルカナが“人生の大きな流れ”なら、小アルカナは“日々の細かいこと”。役割が違うの」
「22枚と56枚。なんで小さいほうが多いんだ」
「小アルカナはね、四つのグループに分かれてるから。ワンド、カップ、ソード、ペンタクル。この四つ」
「四つの、なんだ?」
「スート、って言うの。トランプを思い出して。スペード、ハート、ダイヤ、クラブって、四つのマークがあるでしょ。あれのタロット版」
「ああ、マークのことか。それなら分かる」
「トランプとそっくりなの。タロットの四つのスートが、それぞれ14枚ずつ。1から10までの数字のカードが10枚と、人の絵のカードが4枚。14×4で、56枚」
「人の絵のカード?」
「うん。王様とか、お妃さまとか。そういう“人”のカードが、各スートに4枚ずついるの。そこは、また今度ゆっくり。今日は“四つのグループに分かれてる”ってことだけ、頭の隅に置いといて」
僕は指を折って数えてみた。
大アルカナ22。
小アルカナは14が四つで56。
足して78。
さっき広げた、あの扇いっぱいのカードと、ちゃんと数が合う。
⑤ 小アルカナも、一枚
「小アルカナも、一枚見てみよ」
瞳は、もう一枚抜いて、愚者の隣に置いた。
「これ、カップの3。さっきのスートの“カップ”の、3番。三人が、杯を持って、輪になって乾杯してる」
「楽しそうだな」
「楽しそうでしょ。友達と、わいわい喜んでる場面。さっきの愚者が“人生の始まり”っていう大きい話だったのに比べて、こっちは、こういう身近な喜び。これが、小アルカナ。日々の、こまかい場面の話」
「並べると、たしかにスケールが違うな。片方は旅立ちで、片方は飲み会だ」
「飲み会て」
瞳は笑った。
「でも、そういうこと。大きいテーマか、日々の場面か。それが、大アルカナと小アルカナの違い」
⑥ 覚えなくて、いい
「ね、お兄ちゃん。いま二枚、見たでしょ。愚者は“始まり”、カップの3は“みんなで喜ぶ”。これ、覚えた?」
「いや、覚えるつもりで見てなかった」
「それでいいの」
「いいのか」
「うん。だって、覚えなくても、絵を見たら、なんとなくそう見えたでしょ。旅立ちっぽい、乾杯してる、って。タロットは、絵から意味へたどれるように作ってあるの。だから、まず絵を見る。意味は、あとから付いてくる」
瞳は、二枚を指でなぞった。
「もちろん、カードごとに“こういう意味で読むことが多い”っていう手がかりはある。それは、これから少しずつ教える。でも、それは手がかりであって、丸暗記する正解集じゃないの。78枚を、上下の向きで二通りずつ……ぜんぶ暗記しようとしたら、156通り。しんどいでしょ」
「しんどいな」
「でしょ。絵から行けば、ずっと楽。覚えるんじゃなくて、絵が読めるようになる。それが、この入門で育てたい目なの」
我が妹ながら、いつの間にか、ちゃんと先生の顔で喋るようになっている。
◆ 全体像を、一枚に
今日の話を、一枚の地図にまとめておきます。
見返すときは、これだけ見れば思い出せます。
◆ 読者のみなさんへ
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
今日のところは、これだけです。
タロットは78枚。
大きなテーマの大アルカナが22枚、日々の場面の小アルカナが56枚。
小アルカナは四つのスートに分かれている。
そして、意味を覚える前に、まず絵を見る。
お伝えしたいことが、三つあります。
ひとつ。
もし手元にカードがあるなら、いちど全部、広げてみてください。
78枚の絵が、いっぺんに目に入ります。
アプリでも大丈夫です。
カードもアプリも手元になければ、瞳が見せた絵柄は、下に挙げた原典(パブリックドメイン)でそのまま見られます。
ふたつ。
その中から、好きな一枚を選んで、絵だけを、しばらく見てみてください。
何が描いてあるか。
どんな場面か。
意味を調べる前に、絵そのものを。
みっつ。
覚えようとしないでください。
今日はそれでいいんです。
「絵を見る」という、いちばん最初の癖を、ここでつけておくことが、この先ぜんぶの土台になります。
僕自身は、相変わらずタロットの素人です。
今日も、妹の実験台をやっただけ。
何も覚えていません。
でも、そんな素人でも、二枚見せられて、片方は旅立ち、片方は乾杯だ、というくらいは、絵から分かりました。
専門知識ゼロでも、それくらいは見える。
たぶん、その「絵から、なんとなく分かる」が、いちばん最初の一歩です。
だからどうか、みなさんも、覚えるより先に、まず絵を見てください。
◆ 次回予告
第二話「大アルカナ、22枚の物語」
次回は、大アルカナを見ていきます。
0番の愚者から、21番の世界まで。
一人の人が旅をして成長していく、22枚の大きな物語。
一枚ずつぜんぶ暗記する回ではなく、「こういう流れになっている」という地図を、瞳が見せてくれます。
いちばん華のある22枚です。
そうして『序編』で基礎が固まったら、本編『瞳のタロット逆算リーディング学習』へ。
そこで、カードが示す意味を限界まで読み切る、逆算的リーディングの稽古に入ります。
今日のは、その土台の一段目でした。
※ この物語は、学びを目的としたフィクションです。
登場する占いの場面は、ウェイト=スミス版タロット(Pamela Colman Smith, 1909, パブリックドメイン)の絵柄に基づいて構成しています。
※ この回で見せたカード:愚者(The Fool・正位置/大アルカナの代表として)/カップの3(Three of Cups・正位置/小アルカナの代表として)。
基礎を見せるために精選した二枚です。
※ 絵柄の入手先:ウェイト=スミス版タロット(1909年・パブリックドメイン)。
原典の全78枚は Wikimedia Commons「Rider-Waite tarot deck」カテゴリで見られます。
※ このシリーズの特典として、絵柄つきのタロット辞書(全78枚・基礎の意味つき)を用意していきます。
今回の愚者とカップの3も、そこに収録します。
/ 瞳と兄の会話 /
今夜は、もうカードをしまった。
瞳は紫のクロスをたたんで、お茶を飲んでいる。
先生の顔も、しまったあとだ。
「なあ。これ、どういう人に向いてるんだ。今日のやつ」
「これからタロット始めたい人、ぜんぶ」
瞳はカップを包んだ。
「でもね、その中でも、効き方がちょっとずつ違うの」
「違う?」
「うん。たとえば、前に一回、始めようとして、やめちゃった人」
「やめた人?」
「いるんだよ、けっこう。本買って、78枚覚えようとして、しんどくて閉じちゃった人。…その人に、いちばん効くの」
僕は、さっき自分が「しんどい」と言ったのを思い出した。
あれを胸を張って言ったのは、本当は、ちょっと逃げ腰だったのかもしれない。
「その人たちはね、タロットが嫌いになったわけじゃないの。入口を、暗記から入っちゃっただけ。絵から入れば、折れなかったのに」
「もう一回、絵から始めれば、と」
「そう。今度は折れないよ、って言いたいの」
瞳はちょっと笑った。
「あとね、これから本当にゼロから始める人。その人には、最初の癖が大事なの」
「癖?」
「引いたら、すぐ意味を調べる癖。あれがつくと、絵を見なくなるの。最初に『まず絵を見る』をやっておくと、その癖が、つかないの」
最初に置いた癖が、その先ぜんぶを決める。
妹が今日、何度も「まず絵を見て」と言っていた理由が、ここにあった。
「じゃあ、もうちょっと進んでる人は?」
「ちょっと読める人ね。その人は、序編が終わったら、本編のほう。逆算的に読む、ちょっと変わった稽古があるの。そっちが効くようになってる」
進み具合で、行く先が変わる。
妹は、今いる場所の次を、いつもちゃんと指しておく。
「お兄ちゃんは、ゼロから始める人、だな」
「ゼロどころか、マイナスかもしれん」
「だいじょうぶ。今日、二枚は読めたでしょ。もう、ゼロじゃないよ」
妹は、お茶を飲み干した。
※ この『序編』で基礎の土台ができたら、本編『瞳のタロット逆算リーディング学習』へ。
そこで、カードが示す意味を限界まで読み切る稽古に入ります。