7、現代社会論に関する本②
⑪『極上の孤独』(下重暁子、幻冬舎新書)
下重暁子は『家族という病』がベストセラーになった作家・評論家で、現代は「孤独=悪」というイメージが強いのに対し、そもそも孤独でいるのは周りに自分を合わせるくらいなら一人でいる方が何倍も愉しく充実しているからで、成熟した人間だけが到達できる境地でもあるとしています。
⑫『絆の構造 依存と自立の心理学』(高橋惠子、講談社現代新書)
人生90年時代を迎えた日本の「人間関係」の現在を、「絆」というキーワードを軸に生涯発達心理学から読み解いたものです。
⑬『コミュニケーション力』(齋藤孝、岩波新書)
今、若い人達のコミュニケーション能力が低下していることをふまえ、豊かな会話、クリエイティブな議論はどのようにして成り立つのかを明らかにしています。
⑭『つながり進化論 ネット世代はなぜリア充を求めるのか』(小川克彦、中公新書)
物心つく頃からネットが日常にある「ネット世代」の心情や行動は、前の世代と比べて大きく変わったが、時に賢く、時に理解不能なネット世代のつながりを求める心情とは、どのようなものかを通信技術の進歩と心情の変化の両面から解読したものです。
⑮『世界の社会福祉』(仲村優一・一番ケ瀬康子、旬報社)
世界45カ国の社会福祉の歴史・現状・将来展望を網羅し、欧米ばかりでなく、アフリカ、中南米、アジアの実情も紹介しています。本書では欧米先進福祉国に偏りがちだった従来の研究とは一線を画しており、知られることの少なかったアフリカの福祉や、社会主義が崩壊した後のロシア、ポーランドの実態などにも言及しているところに意義があります。
⑯『学びへの挑戦 学習困難児の教育を原点にして』(小笠毅、新評論)
心身にハンディがある子供のための「遠山真学宿」(東京都武蔵野市)の主宰者と講師が、日本の社会と教育制度のあり方を問い直し、スウェーデンの教育制度や「子供の権利条約」を丁寧に読み解いています。障害の有無に関係なく、誰もが地域の学校に通う「統合教育」へ、さらに不登校児やストレート・チルドレンなども含め、全ての子供達の学ぶ権利を保障する「インクルージョン(混在)」教育へという世界的な流れを紹介し、それらをふまえての「20人学級」の実現、教育内容と授業時間を削減する新しい学習指導要領に対する批判などの提言を行っています。
ちなみに、障害を持つ子供が健常児と一緒に学校教育を受けるインクルージョン(包括教育)は、多くの国で重要な政策目標となっており、OECD(経済協力開発機構)もインクルージョンが教育を受ける子供達全体に等しく利益をもたらすと結論づけています。
⑰『学習まんがスペシャル レーナ・マリア 障害をこえて愛と希望を歌い続ける女性シンガー』(あべさより漫画、菅谷淳夫シナリオ、小学館)
1998年の長野オリンピック開会式で熱唱したスウェーデンのゴスペル歌手・レーナ・マリアは生まれつき両腕が無く、左足の長さも右足の半分ですが、1988年のパラリンピックに水泳で出場したこともあります。
⑱『どんぐりの家』全7巻(山本おさむ、小学館)
『ビッグコミック』連載の漫画で、大宮市と入間郡毛呂山町に実在する聴覚障害者や知的障害者のための共同作業所がモデルとなっていて、障害のある少女がコミュニケ-ションに苦しみながら、障害を乗り越え、家族と共に成長していくという実話に基づいた作品です。全国の福祉団体などからの寄付でアニメ映画が制作され、手話サ-クルなどが主体となって全国で上映されていますが、自主上映でありながら観客動員100万人を超えています。
⑲『五体不満足』(乙武洋匡<おとたけひろただ>、講談社)
乙武洋匡は1976年に先天性四肢切断という状態で生まれ、小学校から普通学級に通い、中学校ではバスケットボール部に入って、手のない腕でドリブルの練習を重ねて試合に出ました。都立高校ではアメリカン・フットボール部に入り、戦略担当としてパソコンを使って対戦相手の分析で活躍しています。受験では予想以上の寒さにトイレに行きたくなって失敗し、一浪後、早稲田大学政治経済学部に入学しました。本書はこうした家族や友達との交流を中心に述べられており、1年間で420万部を越える大ベストセラーとなり、予想を超えた反響を呼びました。
⑳『チャレンジ 身体的障害のある米国青年の物語』(デビッド・ホランド著、遠藤恵美子・野村かず訳、ブレーン出版)
本書は、脳性小児まひに似た難病で、話すこともできない車いす生活のアメリカ人大学院生の著者が、同じ大学院の留学生だった遠藤恵美子・北里大学看護学部教授らの協力により、日本で出版したものです。2人はミネソタ大学の食堂で出会い、筆談などで始まった交流はユーモアにあふれています。好奇心の強い著者が日本旅行をすることになりますが、成田空港の身障者に対する配慮の無さに苛立ち、鎌倉で大仏の像を買い、長崎、広島で被爆の実像に感銘を受けています。アメリカの大学での「生き残るための苦闘」も詳しく語られており、打ち込んだ内容を電子音に変換するコンピュータを使って、修士終了の口頭試問を受けたり、次の大学院では入学を断られても再挑戦するなど、障害をハンディとしてではなく、チャレジととらえる姿が題名にも反映されているのです。