9、環境教育(Environmental Education)
(1)環境教育の現状(Current State of Environmental Education)
地球温暖化、オゾン層破壊、砂漠化など地球環境は刻一刻と悪化していますが、地球を守り、環境に配慮した行動ができる次の世代を育てようと、環境教育の重要性が各国で叫ばれ始めています。環境教育の先進国としてはドイツ・イギリスが挙げられ、環境科という独自の授業時間を設けた韓国も注目されています。
例えばドイツでは、日常生活のあり方を重視した「実践重視」の取り組みが特徴であり、連邦政府や各州の環境政策も大きな支えとなっています。教科で環境をどう教えるかという位置づけも明確であり、1980年に連邦の文部大臣会議が「環境教育は教科にまたがる包括的な授業目標となるべきだ」と宣言し、これを受けて各州は環境の視点を科目計画に入れることを指導計画に明示するようになっています。教科書にも環境のテーマが積極的に取り入れられるようになったのです。また、韓国では『環境』の国定教科書と教科用指導書も作られ、高校の選択科目にも「環境科学」が導入されています。日本でも少しずつ取り組みは広がっていますが、まだ先生個人の努力に頼っている部分が少なくないのが現状です。中央教育審議会も「二十一世紀を展望した教育のあり方」の第一次方針で、環境教育を人類共通の課題として位置付けていますが、現場はまだとまどっているという声も聞かれています。幼児期からの体系的な環境教育を構築するための研究期間が必要であり、教員養成課程を見直して、環境への視点を身につけた教師をどの教科でも育てる必要があると指摘されています。
環境専門家達によるベオグラード憲章(Belgrade Charter)は、環境教育の目的を「人間同士や、人間と自然の関係を改善すること」と確認し、生き方の転換を促しています。それは「この地球に生きる他の人々と、利用したり競ったりの関係ではなく、共にあることを楽しむ関係に変えること」であり、「自然に対しても、利用し克服する対象から、多様性を受け入れ支え合う関係へと変えること」としています。環境を気遣うことは、人権や平和への配慮とも深く結びついており、自分を変え、社会を変えるきっかけを先生にも子供達にも与える環境教育が根付くならば、地球環境保全は身近な問題になると期待されているのです。これは「宇宙船地球号」の一員として、避けることのできない問題の一つでしょう。
(2)エコ・リテラシー(Eco-literacy)
「リテラシー」とは基本的読み書き能力のことで、転じて基本的理解・知識の意味で、例えば「情報リテラシー」といった造語が生まれています。これが環境問題に適用されたのが、「エコ・リテラシー」という概念で、多様な生物がバランスよく共生する自然界の仕組みを理解し、資源を無駄遣いする生活を改めることができる能力、という意味で使用されています。これは『タオ自然学』で一躍ニューエイジサイエンスの旗手となった米国の物理学者フリッチョフ・カプラの造語であり、日本には福沢諭吉のひ孫に当たる木内孝・三菱電機顧問(環境団体「フューチャー500」代表)が『新・学問のすすめ』(プラネット出版)で紹介しています。
(3)環境教育プログラム「キッズISO」(Environmental Education
Program, “Kids ISO”)
身近な生活の中で環境への配慮を子供達に学ばせる「キッズISO」は、NPO「国際芸術技術協力機構」(ArTech)が国連大学の支援を受け、子供達が生活の中で環境保全を実施する手引きとして2000年に作成したものです。企業などが取得する国際的な環境マネジメント規格「ISO14001」の考え方を踏襲しており、①環境負荷の状況把握、②改善作戦の立案、③作戦効果の評価、の3ステップの作業を繰り返す仕組みになっています。同機構によると、入門編に参加した子供の8割、保護者の6割が「環境問題への意識が向上した」と回答しており、電気・ガス・水道使用量などの変化を二酸化炭素排出量に換算すると8~15%の削減効果があったと言います。このため各国の環境団体などから問い合わせが相次ぎ、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)と国連環境計画(UNEP)の推薦プログラムとして国際的に展開されています。温室効果ガス削減の民生部門での対策の手がかりとしても注目されているとも言われています。ちなみにキッズISOの内容は次のようなレベルからなっています。
(1)入門編
活動範囲・対象:自分の家。
主な特徴:環境マネジメントの体験。データ収集、改善計画立案などの流れをつかむ。
期間:2週間。
(2)初級編
活動範囲・対象:自分の家。
主な特徴:家庭での環境マネジメント。2週間ごとに目標設定、到達度を評価する。
期間:2ヵ月。
(3)中級編
活動範囲・対象:学校や地域。
主な特徴:グループ・マネジメントに取り組む。大気汚染、騒音などにも対象拡大。
期間:1年間。
(4)上級編
活動範囲・対象:国、地球規模。
主な特徴:国際的な連携。海外グループとデータ交換し、世界の環境を分析。
期間:2年間。
(4)環境倫理(Environmental Ethics)
アルド・レオポルド:土地倫理~個人間で成り立つ倫理の範囲を「土地」にまで拡張しました。
ハンス・ヨナス:世代間倫理の先駆者。人間は未来世代と自然の存続に責任を持ち、環境破壊を止めなければならないとしました。
世代間倫理:現在、生きている世代はまだ生まれていない未来の世代の生存に対して責任を持つという考え方です。
ケネス・ボールディング:アメリカの経済学者。地球が閉鎖的システムであることを指摘し、「宇宙船地球号」と表現しました。
ピーター・シンガー:動物解放論~動物の苦痛を考慮しないのは種差別であるとしました。
ギャレット・ハーディン:共有地の悲劇~個人の利益追求が最終的に全ての破滅をもたらすとしました。