(4)相対性理論と量子力学が統一される初期宇宙:物理学
②ミクロな確率理論である「量子力学」の登場
「物質波」の二重性~「粒子性」と「波動性」はあらゆる存在に共通する不可分な要素です。
不確定性原理~「認識」と「存在」も不可分な関係にあります。量子力学で記述される粒子の位置と運動量について考えてみると、ある粒子の位置を正確に測ろうとするほど対象の運動量が正確に測れなくなり、運動量を正確に測ろうとすれば逆に位置があいまいになってしまい、両者を完全に正確に測る事は絶対に出来ないのです。なぜなら、位置をより正確に観測するためにはより正確に「見る」必要がありますが、極微の世界でより正確に見るためには波長の短い光が必要であり、波長の短い光はエネルギーが大きいので観測対象へ与える影響が大きくなり、観測対象の運動量へ影響を与えてしまうからです。
古典力学では物の状態は客観的に定まっていることが想定されており、「在る」か「無い」かの二値論理に従います。ところが、量子力学の枠組みにおいては物の状態は客観的に定まっているものではなく、観測して初めて定まるというのです。従って物の状態は、「在る」か「無い」か「どちらとも決まっていない」(まだ観測していない)かの三つの状態に区分できるわけです。このような状態を三値で記述する論理(三値論理)を採用することによって、ハンス・ライヘンバッハは量子力学の枠組みの論理的基礎付けを行いました。
大数の法則~ある試行を何回も行えば、確率は一定値に近づくという法則です。例えば、サイコロを振ったときに出る目は回数が少ない時にはどれかの目に偏る可能性がありますが、数多く振ればどの目が出る確率も6分の1に近づきます。ミクロ的には「確率論」だが、マクロ的には「法則性」を持つというこの現象は、経済学や保険の分野にも適用されています。、保険のように契約者数が多数の場合には、何歳で死亡する割合は何%かとか、何歳でガンにかかる可能性は何%かなどはほぼ一定の水準に収斂するので、それに基づい、保険料などを計算することができ、保険会社の経営を安定して成り立たせることができるわけです。
ビレンキンの量子宇宙論(1982年)~
①「無」~時間も空間も無い状態です。
②「量子的なゆらぎ」~エネルギーが絶えず生成消滅する状態です。量子論と特殊相対性理論を結び付けようとした「ディラックの方程式」により、反物質の存在が導き出されましたたが、粒子と反粒子のペアが出現することを「対生成」と言い、粒子と反粒子が出会って消滅することを「対消滅」と言います。
③「トンネル効果」~そのうちの1つがたまたまエネルギーの壁を乗り越えることによって、宇宙が発生しました。
④「インフレーション」~一度発生した宇宙は光速をはるかに超える急激な膨張(インフレーション)を行いながら、ポテンシャル・エネルギーの安定な状態へ向かいます。
⑤「相転移」~十分に大きくなった宇宙の内部では、高いエネルギーを持った真空の状態が、低いエネルギーの真空へと変わります。「対称性の自発的破れ」と言います。
⑥「ビッグバン」~相転移によるエネルギーの差が一挙に開放されます。
物理学の統一理論~あらゆる物理現象をたった1つの理論体系で記述できる「究極理論」(TOE=Theory of Everything)で、「天地創造の物理学」とも言います。自然界の「4つの力」を統一すること、現代物理学の2大柱である「相対性理論」と「量子論」を包括した「量子重力理論」であることなどが要請されます。
4つの力~重力、電磁力、強い力(核力)、弱い力。重力と電磁力は日常生活にも直接関係していますが、強い力と弱い力は原子核の内部など、ミクロの世界でしか働きません。
素粒子~物質を構成する基本単位であり、レプトン、クォーク、ゲージ粒子などの基本粒子があります。
レプトン(軽粒子)~クォークと共に物質そのものを形作る、物質の素材となる素粒子です。電子、各種ニュートリノなどがあります。
①第一世代~電子(電荷量-1)、電子ニュートリノ(電荷量0)
②第二世代~ミュー粒子(電荷量-1)、ミュー・ニュートリノ(電荷量0)
③第三世代~タウ粒子(電荷量-1)、タウ・ニュートリノ(電荷量0)
クォーク~単独では存在できず、複数のクォークが結合してハドロン(重粒子)を形成します。ハドロンには、3個のクォークによって構成される陽子や中性子などのバリオンや、クォークと反クォークによって構成されるメソン(中間子)があります。クォークとレプトンはそれぞれ6種類の「フレーバー」(香り)に分かれ、さらに各々のクォークには3種類の「カラー」(色)が存在します。
①第一世代~アップ・クォーク(電荷量+2/3)、ダウン・クォーク(電荷量-1/3)
②第二世代~チャーム・クォーク(電荷量+2/3)、ストレンジ・クォーク(電荷量-1/3)
③第三世代~トップ・クォーク(電荷量+2/3)、ボトム・クォーク(電荷量-1/3)
ゲージ粒子~光子、ウィークボソン、グルーオン、重力子の4種類あって、それぞれが「4つの力」に対応しています。したがって、「4つの力」とは物質がゲージ粒子をあたかもキャッチボールのようにやり取りすることによって発生すると考えられ、その場を扱うものが「場の量子論」なのですが、「4つの力の統一」とは「4種類のゲージ粒子が本質的に同じであること」を示せばよいことが分かります。
電磁力~電気力と磁力の総称で、この2つは本質的に同じものです。荷電粒子が光子(フォトン)を出し入れすることによって発生します。
弱い力~原子核崩壊の1つであるベータ崩壊などを引き起こす力です。クォークやレプトンがウィークボソンを出し入れすることによって発生します。電磁力と弱い力の統一は「電弱統一理論」(ワインバーグ=サラム理論、1967年)によって達成されました。
強い力(核力)~クォークを結合させて陽子や中性子を作り、さらにそれらを結び付けて原子核を形成する力です。電磁力、弱い力に強い力も加えた3つの力を統一する理論としては「大統一理論」(GUT=Grand Unification Theory、1974年)が提唱されていますが、まだ実験的に検証されるに至っていません。この理論の予言として、「モノポール(磁気単極子)の存在」と「陽子崩壊」が挙げられており、スーパー・カミオカンデはこの陽子崩壊を検証するための検知器です。
重力(万有引力)~質量を持った粒子が重力子(グラビトン)をやり取りすることで生まれますが、この重力子だけはまだ実際に検出されていません。この重力まで統一する理論を「超大統一理論」と言います。つまり、「究極理論」とは「超大統一理論」と「量子重力理論」の統合理論であるということになります。
宇宙誕生後の宇宙創成のプロセス~
①10の-44乗秒後~「重力」が他の力から分かれました。これ以前が「超大統一理論」の世界で、「プランク期」と言います。「超弦理論」はこの時期を扱います。
②10の-36乗秒後~「強い力」が分かれました。ここまでが「大統一理論」の世界で、「GUT期」と言います。「インフレーション・モデル」がこの時期を扱います。GUT期が終わる10の-33乗秒後あたりを「ビッグバン」と呼びます。
③10の-11乗秒後~「弱い力」と「電磁力」が分かれました。ここまでが「電弱統一理論」の世界です。
④10のマイナス4乗秒後~クォークが結合して陽子と中性子ができました。
⑤3分後~軽い原子の原子核ができました。
⑥30万年後~原子ができました。
【参考文献】
『物質をめぐる冒険 万有引力からホーキングまで』(竹内薫、NHKブックス)
『アインシュタイン・ロマン4 悪魔の方程式 宇宙創成への問い』(NHKアインシュタイン・プロジェクト、日本法放送出版協会)
『図形雑学 相対性理論』(佐藤健二監修、ナツメ社)
『図形雑学 量子力学』(佐藤健二監修、ナツメ社)
『ハイゼンベルク 二十世紀の物理学革命』(村上陽一郎)
『量子力学の世界 はじめて学ぶ人のために』(片山泰久、講談社BLUE BACKS)
『10歳からの量子論 現代物理をつくった巨人たち』(都筑卓司、講談社BLUE BACKS)
『量子の謎をとく アインシュタインも悩んだ・・・』(F.A.ウルフ、講談社BLUE BACKS)
『量子力学が語る世界像 重なり合う複数の過去と未来』(和田純夫、講談社BLUE BACKS)
『超ひも理論と「影の世界」 見えない!さわれない!謎の世界』(広瀬立成、講談社BLUE BACKS)
『超ひも理論とは何か 究極の理論が描く物質・重力・宇宙』(竹内薫、講談社BLUE BACKS)
『はじめての<超ひも理論> 宇宙・力・時間の謎を解く』(川合光、講談社現代新書)
『イラスト「超ひも」理論 図解でいっきにわかる!宇宙論の最先端』(白石拓解説、宝島社)
『入門超ひも理論』(広瀬立成、PHP)
『エレガントな宇宙 趙ひも理論がすべてを解明する』(ブライアン・グリーン、草思社)
『ゼロから学ぶ物理の1、2、3』(竹内薫、講談社)
『現代物理の世界がわかる アリストテレスの自然哲学から超弦理論まで』(和田純夫、ベレ出版)