教養としての仏教④:中期大乗

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中期大乗:『維摩経』『勝鬘経』『涅槃経』などの如来蔵経典、『解深密経』『大乗阿毘達磨経』などの阿頼耶(アーラヤ)識経典が代表経典。これらを基に法相宗などが生まれました。般若の空思想を根底にヨーガの修行 (瑜伽行) を基礎とし、全ての事象は心の作用が作ったものとする「唯識」仏教。認識論が中心です。

仏性思想(如来蔵思想):『涅槃経』などでは、全ての衆生は仏になる可能性(仏性)を備えている(一切衆生悉有仏性)ので、成仏(成仏陀)できるという教えが説かれました。

阿頼耶(アーラヤ)識:フロイトよりも千五百年以上も前に仏教修行の中で把握された無意識。眼識・耳識・鼻識・舌識・身識・意識・末那(マナ)識(自我・自己意識、表層意識)・阿頼耶識(無意識、潜在意識)の八識のうち第八に位置し、人間存在の根本にある識。あらゆる業力を蔵するとされます。後には第八阿頼耶識が浄化されると第九阿摩羅(アマラ)識になるとされたり、阿頼耶識の中にある仏性を第九阿摩羅識ととらえる考え方も出てきました。あるいは第八阿頼耶識をフロイト的潜在意識(個人的無意識)ととらえ、第九阿摩羅識をユング的深層意識(集合的無意識)ととらえる考え方もあります。さらに第十紇哩陀耶(フリダヤ)識(宇宙意識、トランスパーソナル心理学の領域)を置く考え方もあります。

マイトレーヤ(弥勒):釈迦牟尼仏の次に現われる未来仏(再臨の仏陀)であり、大乗仏教では菩薩の一尊です。唯識思想の伝説的創始者(実在の僧マイトレーヤ・ナータが弥勒菩薩に仮託されたとも言われます)とされ、阿弥陀如来の住む極楽浄土に往生したいと願う極楽往生信仰のように、弥勒菩薩の住む兜率天(とそつてん)に往生したいと願う弥勒上生信仰と、弥勒菩薩の降臨に馳せ参じて共に理想世界(仏国土)を作っていこうとする弥勒下生信仰が生まれました。韓国・新羅において三国統一の原動力となった花郎道や中国の元代以降に何度も農民反乱を引き起こした白蓮教は、この弥勒下生信仰によるものです。

アサンガ(無著・無着):『瑜伽師地(ゆがしじ)論』『摂(しょう)大乗論』、全ての事物は心によって生み出された仮の存在、表象にすぎないとする唯識思想を展開しました。ヨーガを仏教に取り込んだ瑜伽行(ゆがぎょう)派で、神通力によって兜率天に昇り、マイトレーヤ(弥勒)から後に「弥勒の五部論」と言われる五法(『瑜伽師地論』など)を授かり、さらには自らマイトレーヤと化してその現身説法を行ったとされます。ここに見られるような止(シャマタ)の集中であらゆる「識」作用を止滅させ、観(ヴィパシャナ)の瞑想で仏陀の想念を現出させるという「速疾成仏論」は、後期大乗密教の「即身成仏論」の原型となりました。

ヴァスパンドゥ(世親):『唯識三十頌』、中期大乗唯識思想の理論的中心。アサンガの弟で、『倶舎(くしゃ)論』で上座部仏教を理論的に確立した後、アサンガに導かれて大乗仏教に転じて瑜伽行派となり、唯識思想を体系化しました。

法相(ほっそう)宗:インドのナーランダー学院で学んだ玄奘が、当時の最先端仏教であった瑜伽行派(唯識派)の経典群を中国に持ち帰って成立。『解深密経』『瑜伽師地論』やダルマパーラ(護法)がヴァスパンドゥ(世親)の『唯識三十頌』を注釈した『成唯識論』などが中心経典・論書。日本では薬師寺、興福寺が中心。
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