教養としての仏教➀:ゴータマ・シッダッタと初期仏教

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ゴータマ・シッダッタ(パーリ語表記。サンスクリット語表記ではガウタマ・シッダールタ):釈迦、釈尊、釈迦牟尼。釈迦族の王子として生まれるも、四門出遊を経て出家。バラモン教の祭祀主義を批判し、この世の真理である法(ダルマ)を悟ることで解脱を目指し、6年間の苦行を経て中道に至り、ブッダ(仏陀、覚者)となりました。すなわち、諸々の煩悩は苦しみや悲しみを引き起こしますが、その根本原因は無常・無我に関する無知(無明)にあると考え、この世を貫く理法(縁起の法)を正しく悟ることで執着心から解放され、心安らかな境地(涅槃寂静)へ至ることができると説きました。

四門出遊:ガウタマが城の東門から出ようとすると老人に出会い、南門から出ようとすると病人に出会い、西門から出ようとすると死者に会って、人生の無常に直面しますが、最後に北門から出ようとすると托鉢の沙門(出家の修行者)に出会い、出家を決意したとされます。

縁起の法:ガウタマの悟りの根本となった存在の理法。全ては関係性から成り立っており、因(直接的原因)+縁(周辺的条件)→生起→果(結果)・報(次の現象の原因)という因縁生起・因縁果報の理論で、これを「苦」の認識・克服に当てはめることで四諦説や四法印が生まれました。

四諦(したい):解脱に至るための4つの真理。苦諦・集諦(じったい)・滅諦・道諦の4つからなります。
(1)苦諦:人生は苦しみに満ちているという真理。四門出遊→一切皆苦、四苦八苦。
(2)集諦:苦の原因は煩悩にあるという真理。十二因縁→無明、我執、執着、渇愛、煩悩。
(3)滅諦:煩悩を滅することにより、安らぎの境地である涅槃に至るという真理。諸法無我・諸行無常→涅槃寂静。
(4)道諦:涅槃に至るための具体的な修行方法が八正道であるという真理。

四法印:一切皆苦・諸行無常・諸法無我・涅槃寂静。なお、一切皆苦以外を三法印とも言います。

一切皆苦:一見楽しそうなことも含め、この世の現実の全ては苦しみに他ならないという真理。

四苦:生、病、老、死。

八苦:四苦+愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五蘊盛苦。
(1)愛別離苦(あいべつりく):愛する者といつか必ず別れねばならないという苦しみ。
(2)怨憎会苦(おんぞうえく):憎い者と出会う苦しみ。
(3)求不得苦(ぐふとくく):求めるものが得られない苦しみ。
(4)五蘊盛苦(ごうんじょうく):存在するものを構成する5つの要素(五蘊)が苦悩の源になっていること。

五蘊:色(物質的要素)、受(感受作用)、想(表象作用)、行(意志作用)、識(認識作用)の5つ。

無明(むみょう):この世の真理について無知であること。

諸行無常:全てのものは常に変転し続け、とどまることはないということ。「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、紗羅双樹の花の色、盛者必衰の理(ことわり)をあらわす」(『平家物語』冒頭文)のごとく、末法思想と共に日本に浸透して「無常観」を生みましたが、平安王朝文化をしのぶ鎌倉時代前期の『方丈記』(鴨長明)のような消極的無常観(いつまでも栄耀栄華が続くことはない)と室町時代を目前にした鎌倉時代後期の『徒然草』(吉田兼好)のような積極的無常観(今が不遇であってもこの状態がいつまでも続くわけではない)という2種類があることに注意しなければなりません。

諸法無我:変わらない自己の本質というものはないということ。それ自体で存在するような恒常不変の実体は何も無く、存在するものを固定的に捉えてはならないとすること。

常見:絶対的な我が生まれ変わり、死に変わりして輪廻転生するという考え。元々バラモン教の思想であり、ガウタマはこれを否定しましたが、仏教説話が量産される中で、いつの間にか仏教思想の中に取り込まれていきました。

断見:死ねば肉身は土に帰って、存在は無に帰すという考え。ガウタマ当時の自由思想家(六師外道)の中にも見られる唯物論的な思想でありますが、ガウタマはこれを否定しました。

三毒:根本煩悩である貪(とん、貪欲、貪り)、瞋(じん、瞋恚[しんに]、怒り)、癡(ち、愚痴、愚か)の3つ。こうした煩悩から逃れるために、戒めや修行徳目が定められました。
(1)貪(とん):煩悩の情的側面=渇愛。
(2)瞋(じん):煩悩の意的側面=我執。
(3)癡(ち):煩悩の知的側面=無明。

涅槃寂静(ねはんじゃくじょう、ニルヴァーナ): 悟りによって因縁解脱し、煩悩の火が燃え尽きた寂静の境地。

中道:快楽と苦行の両極端を避ける立場。そのための具体的実践方法が八正道です。

八正道:正見・正思・正語・正業・正命・正精進・正念・正定の8つからなる修行法。
(1)正見(しょうけん):正しく現実を認識すること。正しい見解。
(2)正思(しょうし):正しい思惟。
(3)正語(しょうご):正しい言葉を使い、嘘や悪口を言わないこと。
(4)正業(しょうごう):正しい行い。
(5)正命(しょうみょう):正しい生活。
(6)正精進(しょうしょうじん):正しく努力すること。
(7)正念(しょうねん):正しい自覚・気づき。自覚を取り戻し、意識を「今、ここ」に集中することで、「マインドフルネス」と訳され、グーグルやアップルなど欧米の多くの企業で福利厚生として社員研修に取り入れられています。2000年代以降のアメリカで、正念+瞑想=マインドフルネス瞑想が普及しています。
(8)正定(しょうじょう):正しい瞑想を行い、精神を統一すること。

在家信者:三宝に帰依し、遵守すべき五戒を受けた在俗の信者のこと。

三宝:仏(仏陀)、法(仏法)、僧(僧侶)。

三帰:仏、法、僧に帰依すること。

五戒:仏教の在家信者が守るべき5つの戒め。不殺生戒・不偸盗戒・不邪淫戒・不妄語戒・不飲酒戒からなります。
(1)不殺生戒(ふせっしょうかい):生き物を殺さないという戒め。
(2)不偸盗戒(ふちゅうとうかい):人のものを盗んではならないという戒め。
(3)不邪婬戒(ふじゃいんかい):淫らなことをしないという戒め。
(4)不妄語戒(ふもうごかい):人に 嘘をついてはならないという戒め。
(5)不飲酒戒(ふおんじゅかい):酒を飲んではならないという戒め。

十大弟子:釈迦(釈尊)の弟子達の中で主要な10人の弟子。興福寺などにも十大弟子像があります。

サーリプッタ (パーリ語)、シャーリプトラ(サンスクリット語):舎利弗(しゃりほつ)、舎利子。智慧第一。『般若心経』では仏の力を承けた観音菩薩の説法相手として、『阿弥陀経』では仏の説法相手として登場するなど、多くの経典に登場します。

マハーモッガラーナ (パーリ語)、マハーマゥドガリヤーヤナ (サンスクリット語):摩訶目犍連(まかもっけんれん)、目連(もくれん)。神通第一。サーリプッタ(シャーリプトラ)と共に懐疑論者サンジャヤ・ベーラッティプッタの弟子でしたが、共に仏弟子となりました。中国仏教では目連が餓鬼道に落ちた母を救うために行った供養が「盂蘭盆会(うらぼんえ)」の起源だとしています。

マハーカッサパ(パーリ語)、マハーカーシャパ(サンスクリット語):摩訶迦葉(まかかしょう)、大迦葉。頭陀(ずだ) 第一。釈迦の死後、その教団を統率し、第一結集では500 人の仲間と共に釈迦の教法を編集する座長を務めました。禅宗は付法蔵 (教えの奥義を直伝すること) の第2祖としています。

スブーティ(パーリ語、サンスクリット語):須菩提(しゅぼだい)。解空(げくう)第一。『金剛般若経』等、「空」を説く大乗経典にしばしば登場します。

プンナ・マンターニープッタ(パーリ語)、プールナ・マイトラーヤニープトラ(サンスクリット語):富楼那弥多羅尼子(ふるなみたらにし)、富楼那。説法第一。

マハーカッチャーナ(パーリ語)、マハーカートゥヤーヤナ(サンスクリット語):摩訶迦旃延(まかかせんねん)。論議第一。辺地では5人の師しかいなくても授戒する許可を仏から得たとされます。

アヌルッダ(パーリ語)、アニルッダ(サンスクリット語):阿那律(あなりつ)。天眼(てんげん)第一。釈迦の従弟。阿難と共に出家しました。仏の前で居眠りして叱責を受けたため、眠らぬ誓いを立て、視力を失いましたが、そのためかえって真理を見る眼を得たとされます。

ウパーリ(パーリ語、サンスクリット語):優波離(うぱり)。持律第一。

ラーフラ(パーリ語、サンスクリット語):羅睺羅(らごら)、羅雲。密行第一。密行とは緻密、厳密、手抜かりのないことです。釈迦の長男。釈迦の帰郷に際し、12歳で出家して最初の沙弥(少年僧) となったことから、日本では寺院の子弟のことを羅子(らご)と言います。十六羅漢の1人でもあります。

アーナンダ(パーリ語、サンスクリット語):阿難陀(あなんだ)、阿難。多聞(たもん)第一。釈迦の従弟。出家して以来、釈迦が死ぬまで25年間、釈迦の付き人をしたため、第一結集の時、アーナンダの記憶に基づいて経が編纂されました。『無量寿経』等に仏の説法相手として登場します。

十六羅漢:仏弟子の中で特に優れた16人。羅漢(らかん)は阿羅漢(あらかん)の略称。十六羅漢像は各地の寺に多く見られます。

五百羅漢:第1回の仏典結集に集まった500人の仏弟子達。五百羅漢像も各地に見られます。

初期仏教(釈迦仏教、原始仏教、根本仏教):釈迦の死後、経・律・論の「三蔵」をまとめる仏典結集が行われ、『阿含経』(アーガマ)や『経集』(スッタニパータ)、『法句経』(ダンマパダ)、『本生(ほんじょう)経』(ジャータカ)などが編集されました。その後、根本分裂が生じて上座部・大衆部に分裂しました(部派仏教、アビダルマ仏教)。これらが後に上座部仏教・大乗仏教となります。なお、大乗仏教は上座部仏教を小乗仏教と呼び、『阿含経』など初期仏教経典を小乗経典と呼んで差別しましたが、サンスクリット語・パーリ語の原典研究を進めた近代仏教学によって再評価されることとなりました。
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