自己決定権:人は自分の生命や身体の扱いについて、自分で決定することができるという原則。この原則に基づいて、医療の現場では患者の同意を得た上で、治療を行うことが重視されるようになりました。
インフォームド・コンセント:医師が患者に対して、治療の利点だけでなく、予期される合併症や代替方法なども十分説明した上で、治療方針の同意を得ること。
パターナリズム(家父長主義):本来は、子どもの利益を考えて保護・干渉する父親のような行動様式、家父長的な権威によって他人に干渉すること。医療の現場では、医師などの専門家が患者の自己決定権を侵害することを言います。
代理出産:日本では日本産科婦人科学会の指針により、代理出産は自主規制されている。代理出産が認められた場合、代理出産をした夫婦と代理母との間で引き渡しや親権をめぐる争いが生じることが、海外の実例から懸念されています。
非配偶者間人工授精:日本産科婦人科学会の指針では、夫以外の精子を使う非配偶者間人工授精を行う場合、精子提供者は匿名とすることが定められているが、子どもが自分の出自を知る権利を尊重すべきだという意見もあります。
遺伝子診断:発症可能性を予測し、病気の予防や治療を行うことができるが、遺伝情報は究極のプライバシーと言われ、就職や保険加入や結婚の場面での差別を生み出す危険性があります。
着床前診断・出生前診断:受精卵や胎児の遺伝子を調べることにより、障害や遺伝病の有無などを診断する技術。発症の確率などを事前に予測できるという利点がある反面、胎児の異常を理由とする人工妊娠中絶が広がり、命の選別が行わる可能性や病気や障害を持つ人々への差別を助長しかねないという懸念など、優生思想につながる危険性が指摘されています。また、男女の判別や産み分けも可能です。
遺伝子組み換え技術:植物などの遺伝子を操作することにより、除草剤や害虫に強い遺伝子組み換え作物を作り出すという利点がある反面、安全性の問題や生態系のバランスに与える影響が指摘されています。
クローン技術:クローン技術で生命を誕生させることについては倫理的な問題があり、日本ではクローン技術規制法(2001年施行)でクローン人間作製は禁止されています。また、クローン人間を作り出しても、完全に同じ性格の個人になるわけではありません。
体細胞クローン:親と全く同じ遺伝子を持っているので、これを用いて臓器を作成すれば、移植の際の拒絶反応が少ないと見られています。
ホスピス:末期患者に対する身体的・精神的サポート。延命治療技術が進歩する中で、人が人生の最期まで人間らしい尊厳を持って生きることを保障するために、ホスピスの充実が求められています。
リヴィング・ウィル(生前の意思):。延命装置などの治療や死のあり方について、自分の意思を明らかにしておくこと。
脳死:全脳が不可逆的に機能を停止した状態。臓器提供をする場合には脳死判定が行われます。
臓器移植法:2009年改正。患者本人の意思が確認できない場合は、家族の同意によって法的に脳死と判定され、臓器提供が可能になりました。改正後のドナーカード(臓器提供意思カード)では、「1、脳死後の臓器提供」「2、心臓死後の臓器提供」「3、臓器提供をしない」(1・2については、提供したくない臓器の選択が可能)の意思表示ができます。
(改正前)臓器を提供する場合に限って脳死を人の死とする。→(改正後)脳死を一律に人の死とする。
(改正前)15歳未満からの臓器摘出は不可。→(改正後)臓器提供者の年齢制限を撤廃。
(改正前)書面での本人の臓器提供意思表示と家族の同意が必要。→(改正後)本人の意思が不明でも家族の同意があれば臓器摘出可能。
ヒトゲノム:ゲノムは遺伝情報の1セットであり、ヒトゲノムは核ゲノムとミトコンドリアゲノムから成ります。核ゲノムは約31億塩基対あり、ミトコンドリアゲノムは16569塩基対で、ヒトゲノムの塩基配列の解読を目的とするヒトゲノム計画は2003年に解読完了しましたが、どの遺伝子配列がどのような役割を果たすかという各遺伝子の機能については、まだ解明されていません。また、ヒトの染色体は22種類の常染色体とXとYの2種類の性染色体に分類され、遺伝子数の推定値は2万2287個であると発表されていますが、このように少ない遺伝子からヒトの複雑な体や脳が構築されているという事実は科学者にさえ驚きを与えました。その後、イネ科の植物の遺伝子がヒトよりずっと多いことや、下等生物と考えられていたウニの遺伝子の数がヒトとほとんど同じであり、しかも70%がヒトと共通していることなどが判明すると、人間が遺伝子の数で他の生物より優位にあるはずだという予想は間違いであることが確定的となりました。
こうしたゲノム解析の結果を病菌の原因解明や新薬開発につなげることを「ゲノム医療」と言い、個人ごとの違いに合わせて最適な治療法を探るオーダーメイド医療も研究されています。