ダンテ『神曲』地獄篇第1歌でボキャブラ・アップ:第20連句

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【C.H.Sisson英訳】
So I was transformed by that restless animal
Who came against me, and gradually drove me down,
Back to the region where the sun is silent.
【Mark Musa英訳】
so she made me do, that relentless beast;
 coming toward me, slowly, step by step,
 she forced me back to where the sun is mute.
【野上素一和訳】
安息を人に与えない
この獣に会った時の私の気持ちも同様であった。
牝狼はだんだん私に迫ってきて
私を太陽の沈黙するところのほうへおし戻した。
【平川祐弘和訳】
仮借ない獣が私の望みを断ったさまもそれと似ていた。
 獣は私をさして歩一歩と迫ってくる、
 私はじりじりと退いた、太陽の黙する方へと退いた。

【語句】
transform=(外見・様子)を一変させる、変形(変容、変態)させる。(性質・機能・用途などを)すっかり変える。外形と同時にしばしば性格や機能もすっかり変える。
 change=一部分、または全体を本質的に変える。
 vary=同じものからの離脱を意味し、徐々に、または断続的に変化させる。
 alter=部分的・外面的に変化を加える。
 modify=修正のための変更をする。
restless=落ち着かない、そわそわした、せかせかした。
gradually=徐々に、次第に。
relentless=冷酷な、残忍な、情け容赦のない。
relent=(怒り・興奮などが少しやわらいで)穏やかな気持ちになる、ふびんに思うようになる。
step by step=一歩一歩、着実に。
mute=無言の、沈黙した。
太陽の沈黙するところ=「暗闇の森」のこと。

【解説】
 ダンテの「光」や「太陽」に対するイメージに関して、ダンテが影響を受けた中世の哲学者バルトロメオ・ダ・ボローニャの代表的著作『光に関する論考』の中には、「神すなわち光」「神は精神的太陽」といった新プラトン主義的な言葉がたくさん出てきています。この影響の下に書かれた『饗宴』には次のような文章が出て来ます。
「キリストの教理は光であり、道であり、真理であることを私は確認した。それは妨げられることなく、幸福に達する光である。また、それによるなら誤ることがないから、道である。また、それは世俗的無知と言われる暗闇の中にいる我々を照らすから、真理である。この教理は他の全ての条理に優るが、それはまた我々の不滅性を眺めつつ評価する。」(ダンテ『饗宴』)
 ちなみに、この『饗宴』は単なる「宴会」を歌ったものではなく、知識の食物を味わったことのない人に対して、ダンテが提供する知識の食物を賞味するという「特別の精神的宴会」を歌ったもので、プラトンの『饗宴』(シンポジオン)を意識していると思われます。したがって、政治、倫理、文学、神学、天文学など広い領域にわたる古今東西の知識が盛り込まれていて、百科全書的な内容となっています。
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