【C.H.Sisson英訳】
When he came, he made his way towards me
With head high, and seemed ravenously hungry,
So that the air itself was frightened of him:
【Mark Musa英訳】
and he was coming straight toward me, it seemed,
with head raised high, and furious with hunger―
the air around him seemed to fear his presence.
【野上素一和訳】
獅子は私に向かってくるように見えた。
そして頭を高くあげ、猛々しい飢餓のため
大気まで恐れさせているように見えた。
【平川祐弘和訳】
獅子は私をさして進んでくるらしい。
頭をもたげ餓えに怒りたけるから
大気まで恐れにおののいている。
【語句】
make one’s way=進む、行く。
ravenously=がつがつしたように、貪欲に。
frightened=~におびえた、ぎょっとした、怖がった(at, of)。
afraid=~を怖れて、怖がって。気の弱さ・臆病を暗示し、一般に行動・発言などが出来なくなることを示します。
fearful=性質的に臆病で、不安の心が強いことを示します。
furious=怒り狂った。
presence=存在。
【解説】
「獅子」は例えば、旧約時代の4大預言者(イザヤ、エレミヤ、エゼキエル、ダニエル。『旧約聖書』にはさらに12小預言者の書が含まれています)の1人によるエレミヤ書では、次のように出て来ます。
「獅子はその茂みから上って来(き)、国々を滅ぼす者は彼らの国から進み出た。あなたの国を荒れ果てさせるために。あなたの町々は滅び、住む者もいなくなろう。」(エレミヤ書第4章7節)
「それ故、森の獅子が彼らを殺し、荒れた地の狼が彼らを荒らす。豹が彼らの町々を窺う。町から出る者を皆引き裂こう。彼らが多くの罪を犯し、その背信が甚だしかったからだ。」(エレミヤ書第5章6節)
「イスラエルは雄獅子に散らされた羊。先にはアッシリアの王がこれを食らったが、今度はついにバビロンの王ネブカデレザルがその骨まで食らった。」(エレミヤ書第50章17節)
さらに権勢欲・傲慢としては、「創世記」の「バベルの塔」説話や、ミルトンの『失楽園』(「プロテスタントの『神曲』」と呼ばれます)に堕天使の情念として凄まじく描かれていることが想起されますね。
「そのうちに彼らは言うようになった。『さあ、我々は町を建て、頂が天に届く塔を建て、名を挙げよう。我々が全地に散らされるといけないから。』」(創世記第10章11節)
「そうだ、あの蛇、まさしくあの地獄の蛇であった。嫉妬と復讐の念に燃え、狡猾な陰謀をもって人類の母をたぶらかしたのは!彼はこれより先、傲慢に禍されて、叛逆の天使の軍勢と共に天を追われていた。これらの天使の援助を得て、仲間を尻目に自らを栄光の地位に置き、あわよくば、一戦を交えて至高者と対等たらんことを窺った彼であった。そして、野心満々、神の御座と御威光に向かって、不敬かつ傲慢不遜な戦いを、場所もあろうに天において挑んだのだ。全能の力を持ち給う神は、大胆不敵にも、あえて全能者に向かって武器を取って刃向かってきたこの者を、いと高く浄き空から真っ逆様に落とし給うたのであった。」(ミルトン『失楽園』第1巻)