【C.H.Sisson英訳】
When I had rested my weary body a little,
I took up my journey again on that stretch of desert,
Walking so that my firm foot was always the lower.
【Mark Musa英訳】
I rested my tired body there awhile
and then began to climb the barren slope
(I dragged my stronger foot and limped along).
【野上素一和訳】
疲れたからだをしばらく休めたあとで
私は人気のない丘の斜面を歩きだしたが、
確かな足は常に低いほうの足であった。
【平川祐弘和訳】
疲れた体を少し休めた後、
私は人気のない浜辺を歩きだした、
前へ踏みだす足取りは確かではなかったが。
【語句】
rest=休養させる、休ませる、安らかにさせる。
weary=疲れた、疲労した。
take up=(仕事・趣味などを)始める、従事する。
stretch=(距離・時間の)長さ、一続き。(陸地・海などの)広がり。
desert=砂漠(wasteと違って、水が無く、不毛であることを強調)。(何か好ましい性質が)欠けた(不在の)場所(主題・時代など)。
firm=ぐらつかない、しっかりした。
awhile=しばらく。
barren=(土地が)不毛の、作物の出来ない。
slope=坂、斜面。
drag=(重いものを)引く、引っ張る。(足・尾などを)引きずる。
pull=上下・前後の方向に引く、引っ張るの一般語。
draw=軽く、なめらかに引く。
tug=力を込めて急に引く。
limp=(歩行が不自由で)片足を引きずる。(故障などで、船・飛行機などが)のろのろ進む(along)。
【解説】
1290年にベアトリーチェが没した時、ダンテは精神的に大きな打撃を受け、その悲哀に打ち勝とうとしてボエティウスの『哲学の慰め』、キケロの『友情論』といった哲学書を耽読しました。その結果、ダンテは哲学に対する興味がかき立てられ、その影響は『神曲』に次ぐ作品とも言うべき『饗宴』にはっきりと現われていますが、さらに古典作品の読書に浸り、ウェルギリウスの『アエネイス』、ホラティウスの『詩論』、オウィディウスの『変身譜』をはじめとして、キケロ、プリニウス、セネカなどの道徳哲学などをことごとく読破しています。やがて、ダンテは『新生』を著しますが、その最後の章にベアトリーチェを1つの主題として持つ『神曲』を書くことを予告したような言葉が出てくることは注目されます。
「このソネットが書いた後で、ある一つの不思議な幻影が私に現われ、その中で私が見たことによって、かの淑女、すなわちベアトリーチェのことをもっと適切な方法で述べることが出来るまで、これ以上、かの恩寵に満ちた淑女のことを歌った詩は書くまいと決心した。」(『新生』第42章)