【C.H.Sisson英訳】
It is hard to say just what the forest was like,
How wild and rough it was, how overpowering;
Even to remember it makes me afraid.
【Mark Musa英訳】
How hard it is to tell what it was like,
this wood of wilderness, savage and stubborn
(the thought of it brings back all my old fears),
【野上素一和訳】
ああ、それを話すのはなんとむずかしいことか
人手が入ったことのないひどく荒れた森のさまは
思い出すだに恐怖が胸に蘇えってくるようだ。
【平川祐弘和訳】
その苛烈で荒涼とした峻厳な森が
いかなるものであったか、口にするのも辛い、
思いかえしただけでもぞっとする、
【語句】
rough=(海・空・天候など)荒れた、荒天の。
overpowering=(感情など)圧倒的な、抵抗しがたい、強烈な。
afraid=~を恐れて、恐がって。
afraid=気の弱さ・臆病を暗示。
fearful=性質的に臆病で、不安の心が強いことを示します。
savage=(米)(土地・場所など)(自然のままに)荒れた、荒涼とした。
stubborn=(問題など)扱いにくい、手に負えない。(石・木材など)硬い。
stubborn=頑固な、強情な。強情で自分の考え方を変えない。
obstinate=人の忠告に耳を貸さず、たとえ間違っていてもかたくなに自分の考え方を変えない。
fear=(差し迫る危険・苦痛などに対する)恐れ、恐怖。
fear=「恐怖」を表わす最も一般的な語で、懸念や通例勇気の無さを暗示します。
dread=懸念と嫌悪の感情を示すほかに、「人・事に直面することに対する極度の恐怖」を表わします。
fright=突然、ぎょっとするような恐怖。
terror=極度の恐怖。
horror=嫌悪感や反感などを伴った恐怖。
【解説】
「ダンテの神曲は中世紀千年間の沈黙の声なり。」(カーライル)
「中世が沈黙していたわけではないのは上に見てきた通りだが、それにしてもダンテの声は他のすべての声をぬいて力強く立派だった。中世の文学からただ一篇をえらぶとすれば、彼の『神曲』をおいて他にはない。単に中世を代表するといわず、ヨーロッパ文学全体を見廻しても、この作に肩をならべるものは、ホーマーの叙事詩、ゲーテの『ファウスト』等、寥々たるものだろう。」(山室静『世界文学小史』)
「彫塑の姿を具えたる地獄の巻、丹青の彩を泛べたる浄罪の巻、はたまた楽声の趣を含みたる天堂の巻、合わせて百章、一万四千二百三十三行、文辞の瑰麗にして、声調婉美を極めたるはいうもさらなり、宏大雄渾なる全篇の建築的壮観に至っては、ロマネスコ精舎の幽鬱にゴテイコ大伽藍の高遠を加えたる如く、南欧の大詩人ダンテの『神曲』ばかり後代の驚嘆たるものは稀なり。地獄界に九圏あり、浄罪界に山麓、七台、楽園あり、天堂界には十天あり、ダンテ初の二界を巡ぐる時は、中世の民が人知の頂に達せりと為しし羅馬の詩聖エルギリウスに伴われ、終の天堂を行くに当っては、九歳の春に垣間見し恋人ベアトリチェに導かれて終に幽明の域に亘り、天智のはてを極めたる大知識を得るに至りし路の委曲は、収めてこの珍しき大作の裡に籠れり。」(上田敏「詩聖ダンテ」)