【C.H.Sisson英訳】
Half way along the road we have to go,
I found myself obscured in a great forest,
Bewildered, and I knew I had lost the way.
【Mark Musa英訳】
Midway along the journey of our life
I woke to find myself in a dark wood,
for I had wandered off from the straight path.
【野上素一和訳】
私たちの人生行路のなかば頃
正しい道をふみはずした私は
一つの暗闇の森のなかにいた。
【平川祐弘和訳】
人生の道半ばで
正道を踏みはずした私が
目をさました時は暗い森の中にいた。
【語句】
obscure=~を覆い隠す、暗くする、曇らせる。(人の)光輝を奪う、(人を)顔色なからしめる。
vague=(言葉・観念・感情など)漠然とした、あいまいな、はっきりしない(⇔distinct)
ambiguous=不適切な表現のために2つ以上の解釈が成り立ち、あいまいである。
obscure=表現が不的確で、またはあるものが隠されていて不明瞭な。
bewilder=当惑させる、うろたえさせる。通例受身で用い、「当惑する」「まごつく」の意になります。
be embarrassed=恥ずかしさ・不安な気持ちで当惑する。
be baffled=まごついたために適切な行動が取れない。
wander=迷う、迷い込む。本道からそれる、横道にそれる、邪道に踏み迷う。あてもなく歩き回る、さまよう、放浪・流浪する、ふらつく。
wander=目的・道順なしにぶらぶら歩く。
ramble=一定のコース・目的などを定めずに歩き回る。
roam=自由気ままに、またしばしば広い地域を歩き回る。
人生行路のなかば頃=35歳。『旧約聖書』詩篇第90章10節に「我らが年を経るは70歳に過ぎず」とあり、プラトンの『饗宴』第4章23~24節にも、人間の最盛期は35歳と出て来ます。したがって、ダンテ(1265年生)が彼岸旅行に出発した年は、1300年の復活祭の聖金曜日(3月25日か4月5日)と推定されます。
暗闇の森=「暗闇の森」が恐ろしいのはそこに「地獄の入り口」があるからです。
【解説】
「開巻第一の長詩の一聯、『われ正路を失ひ、人生の覊旅(きりょ)半ばにありて、とある暗き林のなかにありき』云云は、ファウスト開巻の独白と同様に、続いて起る物語の意味の深さを予想させて、先づ私の心を緊張させた。」(正宗白鳥「ダンテについて」)
この最初の句は、神戸事件を引き起こした酒鬼薔薇聖斗(少年A)が書いた「懲役十三年」と題した作文でも、「人の世の旅路の半ば、ふと気がつくと、俺は真っ直ぐな道を見失い、暗い森に迷い込んでいた。」と引用して最後を結んでおり、その広汎な浸透ぶりが窺えます。