「聴き方診断」をつくりながら見えてきたこと
「聴き方診断」というサービスの準備をしています。
その中で最近、以前つくった傾聴専用GPT Dr. ECHO を使って、いろいろなロープレをしています。
Dr. ECHOは、傾聴や対話の練習をするためにつくったGPTです。
相手の話のどこを拾うのか。
どんな問いを返すのか。
どんな言葉を返すと、対話が深まるのか。
そんな「聴くこと」を、一緒に練習したり振り返ったりするために育ててきました。
ちなみに最近、個人向けChatGPTでは、新しくカスタムGPTを作れなくなってきています。
ということで、Dr. ECHOは今や、ちょっとした絶滅危惧種です(笑)。
そんなDr. ECHOとロープレを重ねていて、改めて面白いと思ったことがあります。
それは、
同じ話を聴いても、人によって拾う場所も、返す言葉も、問いの方向も、本当に違う。
ということです。
しかも、それは単純に、
「聴くのが上手い」
「聴くのが下手」
という話ではないようなのです。
たとえば、こんなことを言われたら
こんな相談があったとします。
> 「最近、仕事でミスが続いてて。前はもう少しできてた気がするんだけど、なんか自信なくしてるんだよね。向いてないのかなって、ちょっと思ってる」
あなたなら、最初になんと返すでしょう。
「そんなことないよ」
「大丈夫?」
「何があったの?」
「なんでミスが増えたんだろうね?」
「チェックリスト作ったら?」
「私もそういうことあったよ」
「それはしんどいね」
いろいろありそうです。
どれも、日常では自然に出てくる言葉です。
でも私は、ここにもう、その人の**「聴き方」**が表れているんじゃないかと思っています。
人は話を聴いた瞬間、何かをしようとしている
「そんなことないよ」と励ます人は、相手を元気にしたいのかもしれません。
「どうしたらミスを減らせるかな?」と考える人は、困っているなら解決してあげたいのかもしれない。
「いつから?」「何か変わった?」と聞く人は、状況や原因を整理したいのかもしれません。
「私もそういうことあったよ」と返す人は、「あなた一人じゃないよ」と伝えたいのかもしれない。
「それはつらかったね」と返す人は、まずその人の気持ちのそばにいようとしている。
どれも、その人なりの関わり方です。
だから大事なのは、
この返しは正しい、これは間違っている
と決めることではありません。
むしろ、
この人は、人の話を聴いたとき、何をしたくなる人なんだろう?
そこを見ることなのだと思います。
実は「返し方」より前に、聴き方の違いは始まっている
さらに面白いのは、違いは返事だけではないということです。
もっと前。
相手の話の、どこを拾ったか。
さっきの話には、
「ミスが続いている」
「前はできていた」
「自信がなくなっている」
「向いていない気がする」
という複数の要素があります。
ある人は「ミスが続いている」を拾う。
すると、
「なんでミスが増えたの?」
という質問になるかもしれません。
ある人は「自信がなくなっている」を拾う。
すると、
「それはつらいね」
となるかもしれない。
ある人は「前はできていた」を拾う。
すると、
「前と今で何が変わったんだろう?」
になる。
つまり、
質問をする前に、もう聴き方の違いは始まっている。
ここが、私はすごく面白いと思っています。
自分でやったら、思いきり「コーチ」が出ていた(笑)
私自身も、聴き手としてロープレをしてみました。
さきほどの、
「ミスが続いていて、向いてないのかな」
という話に対して、私は最初に、
「最近ミスが続いているの? 前はできていたんだよね。向いているか、向いていないかの違いなの?」
と返していました。
あとから見返して、ちょっと笑いました。
コーチは、コーチを辞められない(笑)。
「向いていない」という結論を、そのまま受け取っていないんですよね。
その後も、
「前はできていたことができないって、どんなとき?」
「急いでいるっていうのは? 何か環境変わった?」
と聞いていました。
話を聴きながら、
変化を探す。
構造を見つける。
前提を疑う。
別の見方を返す。
そして、本人にもう一度考えてもらう。
ということを、かなり自然にやっています。
20年以上対話に関わってきたので、もう半分クセなのだと思います。
でも、経験がある人にもクセはある
今回、Dr. ECHOに私の聴き方を見てもらうと、
「相手の話から構造を見つけて、視点を変える聴き方が強い」
という特徴が出ました。
確かに、その通りです。
一方で、
構造が見えたとき、その仮説を少し早く相手に渡すことがある
という指摘もありました。
これも、なるほどと思いました。
たとえば、
「つまり、先読みしすぎて集中できていないってこと?」
と聞けば、相手は「そうかもしれない」と答えやすい。
でも、
「あなた自身では、何が一番変わったと思う?」
と聞いたら、こちらが予想していなかった答えが出てくるかもしれません。
聴くことを長くやっていても、自分なりの得意な方向や無意識のクセはある。
むしろ経験を積んだからこそ、クセまで上達していることがある(笑)。
ここも面白いところです。
「良かれと思って」が、会話を閉じることもある
聴き方を考えるとき、難しいのは、
ほとんどの返しに善意があることです。
励ますのも、元気になってほしいから。
アドバイスするのも、助けたいから。
原因を聞くのも、一緒に整理したいから。
自分の体験を話すのも、「あなた一人じゃないよ」と伝えたいから。
でも。
まだ落ち込んでいる途中なのに、
「大丈夫だよ!」
と言われたら、それ以上話せなくなることもあります。
ただ聴いてほしいのに、
「じゃあこうしたら?」
と言われると、急に問題解決の時間になることもある。
質問をたくさんされて、
「なんか尋問みたい……」
と感じる人もいる。
つまり、
善意と、相手に届くことは、必ずしも同じではない。
ここに「聴く」ということの奥深さがあります。
だから「聴き方診断」をやってみたい
今回準備している「聴き方診断」では、
実際の対話やロープレをしながら、
相手の話のどこを拾うのか。
何に反応するのか。
どんな質問が自然に出るのか。
感情を拾うのか、事実を拾うのか。
違和感や矛盾を拾うのか。
すぐ整理するのか。
励ますのか。
解決へ向かうのか。
フィードバックを返すのか。
そして、
どんな返しをしたときに相手がさらに話し始め、
どんな返しをしたときに少し会話が閉じるのか。
そんなところを一緒に見ていきます。
でもこれは、
「正しい聴き方を教える」
ための診断ではありません。
「あなたの聴き方は70点です」
みたいなことをやりたいわけでもありません。
知りたいのは、
あなたは相手の何を聴き、
どこを拾い、
どう問い、
どう返しているのか。
です。
自分の聴き方は、自分では案外見えない
話し方は、自分でも多少わかります。
「私はよくしゃべるな」
「説明が長いな」
「結論から言うタイプだな」
など。
でも、聴き方って意外と自分では見えません。
聴いている瞬間に、
「今、私は相手の感情ではなく事実を拾いました」
なんて考えていませんから(笑)。
自然に聴いて、
自然に何かが気になって、
自然に言葉が出てくる。
だからこそ、その「自然に」の中に、その人らしさがあります。
あなたは、人の話を聴くとき、何をしたくなりますか?
相手が困っていたら、
励ましたくなるでしょうか。
解決したくなるでしょうか。
詳しく知りたくなるでしょうか。
整理してあげたくなるでしょうか。
自分の経験を伝えたくなるでしょうか。
可能性を見せたくなるでしょうか。
それとも、
ただ、その人のそばにいたくなるでしょうか。
同じ話を聴いても、
ある人は励まし、
ある人は分析し、
ある人は解決し、
ある人は問い、
ある人は一緒に感じ、
ある人は黙って待つ。
その違いの中に、
その人らしい「聴き方」がある。
「聴き方診断」が、
上手い・下手を決める時間ではなく、
自分ではなかなか見えない
“聴き方の無意識”に出会う時間
になったらいいなと思っています。
そして私自身も、これからいろいろな人の聴き方に出会いながら、
「そこを聴くんだ」
「そこからその質問が生まれるんだ」
という発見をしてみたい。
その隣には、絶滅危惧種のDr. ECHOにも、もうしばらくいてもらおうと思います(笑)。
「聴き方診断」が気になる方へ
自分の聴き方を、一度外から見てみたい方へ。
実際の対話を通して、
どこを拾い、どう問い、どう返しているのかを一緒に見ていきます。
「もっと上手に聴かなければ」というためではなく、
まずは今の自分の聴き方を知る時間です。