まだ起きていないことで、人は傷つく

まだ起きていないことで、人は傷つく

記事
コラム
連絡したい相手がいる。
でも、なかなかメッセージが送れない。

「今、忙しいかもしれない」
「迷惑だと思われたらどうしよう」
「急に連絡したら警戒されるかもしれない」

そんなことを考えているうちに、
指が止まる。

送るのは数秒で終わるはずなのに、
その数秒が、とても長く感じることがあります。

よく考えてみると、
その時点では、
実際にはまだ何も起きていないのだ。

相手はメッセージを読んでいない。
返事が来たわけでもない。
怒っているかどうかも、
迷惑だったかどうかも、まだわからない。

現実にはまだ何も起きていないのに、
自分の心だけが先に傷ついている。

人間は未来を想像する生き物です。
危険を予測したり、
準備をしたり、
希望を描いたりする。

それは間違いなく、
人間の大きな能力の一つでしょう。

けれど、その能力には、
少し厄介なところもあります。

想像する未来の中には、
こんなことが含まれることがあるからです。

まだ起きていない失敗。
まだ起きていない拒絶。
まだ起きていない別れ。

そして私たちは、その起きてもいない想像に
本気で傷つくことがあります。

胸が苦しくなる。
眠れなくなる。
気持ちが沈む。

でも実際には、
まだ何も起きていない。

存在しているのは、
自分の頭の中で作られた未来だけ。

人は、現実と同じくらい、
あるいはそれ以上に、
自分が作った物語の中を
生きている。

例えば、送ったメッセージの返事が来ない。

それ自体は一つの出来事です。

けれど、

「忙しいのかな」
と思う人もいれば、

「嫌われたかもしれない」
と思う人もいる。

現実は同じなのに、
気持ちはまったく違う。

その差は、出来事ではなく、
そこに自分が作った物語から
生まれているのかもしれません。

もちろん、だから考えることをやめましょう、
という話ではありません。

人間は物語を作る生き物です。

未来を想像し、
意味を見つけ、
まだ見ぬ出来事について考える。

それは人間らしさでもあります。

だから、物語を作ってしまうこと自体は、
悪いことではありません。

ただ、
苦しくなったり、
傷ついたり、
不安になったりした時、

もしかすると、
現実ではなく、
自分で作った未来の物語と
向き合っているのかもしれない。

そう考えると、
あの気持ちの正体が、
少し違って見えてくる気がします。

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