集める作業自体は、ほぼ機械に任せられます。ただし、公開されているからといって何をしてもいいわけではありません。実務で使える判断基準まで書きます。
営業リストを手で作ると、驚くほど時間が溶けます。
検索して、1件ずつサイトを開いて、社名と電話番号をコピーして、表に貼る。これを100回。しかも終わったあとに、同じ会社が3回入っていることに気づきます。
いま、リスト作りに何時間かけているか
内訳を分けると、探す作業、転記する作業、重複を消す作業の3つになります。
ここで注目してほしいのは、3つとも人の判断がほとんど要らないということです。条件さえ決まっていれば、あとは手を動かしているだけです。
逆に言えば、判断が要る部分は別のところにあります。
営業リストは、3つの要素でできている
条件、情報、鮮度。この3つです。
そして、いちばん弱いのはたいてい1番目の条件です。ここが曖昧なまま集めると、件数だけが増えていきます。
集める前に、条件を決める
「東京の会社」では広すぎます。機械が判定できるところまで下ろす必要があります。
「Webに詳しくなさそうな会社」は、人間なら何となく分かりますが、機械には判定できません。「自社サイトに問合せフォームがない」であれば判定できます。
条件がまとまらないときは
すでに取引のある会社を5社ならべて、共通点を探すのが早いです。
業種、規模、エリア、どういうきっかけで来たか。並べてみると、自分でも意識していなかった共通点が出てきます。だいたいの場合、そこが条件になります。
このとき見つかりやすいのが、業種以外の共通点です。たとえば「社長が現場に出ている会社」「創業から10年以上経っている」「求人を出している」。こうした特徴は、業種よりも当たり率に効くことがあります。
そして、これらは意外と外から判定できます。求人を出しているかどうかは公開情報ですし、創業年はサイトの会社概要に書かれています。
どこから集めるか
情報源はいくつかありますが、共通するのは相手が自分の意思で公開しているかどうかです。
会社が自社サイトに載せている連絡先は、問い合わせてほしくて載せています。一方、会員向けに配布されている名簿は、外に出す前提で作られていません。同じ「文字として存在する情報」でも、性質がまったく違います。
【重要】やっていいことと、やってはいけないこと
ここは飛ばさずに読んでいただきたい部分です。
公開されている情報を閲覧して書き写すこと自体は、一般に問題になりにくい行為です。相手が公開している連絡窓口を控えることも同様です。
問題になるのは、次のような場合です。
・会員限定やログインの内側にある情報を持ち出す
・規約で機械的な取得を禁じているサイトから、機械で集める
・短時間に大量のアクセスをして、相手のサーバーに負担をかける
・購入したリストの出所を確認せずに使う
特に3つ目は見落とされがちです。取得のしかたが乱暴だと、それ自体が相手の業務を妨げる行為になり得ます。技術的に可能かどうかと、やっていいかどうかは別の話です。
「公開されている」と「使っていい」は別
画面に表示されているからといって、機械で集めていいとは限りません。サービスによっては、規約で明確に禁じています。
先に見るべきなのは、利用規約の禁止事項です。あわせて、公式が提供しているAPIがあるかどうかも確認します。APIがあるなら、そちらを使うのがいちばん安全です。提供側が用意した窓口なので、使ってよい範囲がはっきりしています。
ここは正直、面倒な作業です。規約を読むのは楽しくありません。ただ、後から問題になったときのコストと比べれば、10分読むほうが圧倒的に安く済みます。実際、相談を受けて「その情報源は規約上むずかしいので、別の方法を考えましょう」とお伝えすることもあります。
集めたあとの「使い方」にも、ルールがある
リストができたら次は送る番ですが、ここにも規制があります。
広告や宣伝を含むメールの送信は、特定電子メール法の対象です。原則として、あらかじめ同意を得た相手にしか送れません。
ただし例外があります。名刺などでこちらにアドレスを通知してきた相手、そして自分のアドレスを公表している団体や、営業を営む個人。この場合は、事前の同意がなくても送信が認められています。ただし「広告メールは送らないでほしい」と表示している場合は除きます。
法人向けの営業でリストを使う場合、多くはこの例外に当てはまります。とはいえ、当てはまるかどうかは相手の公表のしかたによります。
そして、送るときには入れなければならない情報があります。送信者の氏名または名称、受信拒否の連絡先、住所や問い合わせ先。これらは忘れずに入れてください。
FAXや電話には、また別のルールがあります。特にFAX広告は規制が厳しめです。手段を変えるときは、その手段のルールを確認し直してください。判断に迷う場合は、所轄官庁の公表内容を確認するか、専門家にご相談ください。
件数ではなく、当たり率で見る
3,000件のリストと、200件のリスト。どちらが価値があるかは、中身によります。
条件がゆるい3,000件には、対象外の会社が大量に混ざります。そこに送っても返信は来ませんし、そもそも3,000件に送る作業自体が大変です。
200件でも、全社が対象であれば話が変わります。数が少ないぶん、1件ずつ相手に合わせて書けます。文面が具体的になるので、返信率も上がります。
送る側の手間は、件数に比例します。増やすほど、1件あたりに割ける時間が減る。ここは見落とされやすいところです。
重複と表記ゆれの処理
「株式会社○○建設」「(株)○○建設」「○○建設㈱」。これらは同じ会社ですが、文字としては別物です。社名で突き合わせると、重複が残ります。
使うのは、電話番号やドメインなど、ゆれにくい項目です。電話番号もハイフンの有無で差が出るので、数字だけ取り出してから比べます。
ドメインで突き合わせる場合も、少し注意が要ります。同じ会社でも、コーポレートサイトとサービスサイトでドメインが違うことがあります。逆に、まったく別の会社が同じレンタルサーバーのサブドメインを使っている場合もあります。
実務的には、電話番号を第一の手がかりにして、一致しなかったものだけ目視で確認する。この形が現実的です。全部を機械で判定しようとすると、かえって手間が増えます。
よくある失敗① 「1万件集める」を目標にする
件数は数えやすいので、つい目標に置きたくなります。
ただ、集めた先で待っているのは1万件に送る作業です。目標に置くなら、条件に当てはまる会社を取りこぼさずに拾えているか、のほうです。
よくある失敗② 集めたところで止まる
リストができると、仕事が進んだ気持ちになります。実際、時間はかかっているので、達成感もあります。
ただ、リストはそれ自体では1円にもなりません。そして3か月も経てば、情報が古くなって作り直しになります。
防ぎ方は単純で、小さく集めてすぐ当てることです。50件作って、送って、反応を見る。そこで条件を直してから量を増やす。
自分でできる範囲と、頼んだほうがいい範囲
条件を言葉にする、既存客の共通点を書き出す、50件だけ手で作って試す、送る文面を用意する。ここは自分でやったほうがいいです。
理由は、この部分に事業の判断が入るからです。誰に売りたいのかは、外の人間には決められません。
一方、条件に合う先を機械で拾う、重複と表記ゆれをまとめる、定期的に情報を更新する。このあたりは、任せてしまって構いません。判断が入らない作業だからです。
費用と期間の目安
情報源の種類と、規約上どこまで取得できるかによって変わります。
もし取得が認められない情報源だった場合は、その旨をお伝えします。無理に集める方法を探すより、別の情報源を検討したほうが結果的に早いです。
進め方の順番
条件を言葉にする。手で50件だけ作る。実際に当ててみる。そこから量を増やす。
2番目を飛ばしたくなりますが、ここが検証の場です。50件で反応がゼロなら、5,000件に増やしても反応はゼロです。条件か文面のどちらかが外れているので、量を増やす前に直します。
チェックリスト
・条件が、機械で判定できる形になっている
・情報源の利用規約を確認した
・会員限定の情報を持ち出していない
・相手のサーバーに負担をかけない速度で取得している
・送る手段のルール(同意・表示義務)を確認した
・まず50件で試してから、量を増やす計画になっている
上から3つ目までが、いちばん見落とされます。
まとめ
営業リストで弱いのは、集める力ではなく条件のほうです。そして、集める前に確認すべきことがあります。情報源の規約と、送る手段のルール。この2つです。
面倒に聞こえるかもしれませんが、確認自体は数十分で終わります。あとから問題になったときのやり直しと比べれば、はるかに安いです。
「この情報源から集めていいのか分からない」という段階でのご相談も承っています。規約を確認したうえで、取得できる範囲と、別の方法を検討したほうがいい部分に分けてお伝えします。取得が認められない場合は、そのようにはっきりお答えします。
※法令の個別解釈については、必要に応じて専門家へのご確認をおすすめしています。