お菓子作りは科学だ、とよく言われます。
「お菓子 コツの科学」
という有名な本(料理verもあります)があるように、
本当に科学の世界だと思います。
材料をきちんと計量して、温度を測って、手順の通りに混ぜ合わせて、
決められた温度で決められた時間、焼く。
料理に比べると数字が多く、少しの配合の違いで仕上がりが変わるので、
「製菓は理系」というイメージは強いかもしれません。
実際、パティシエの仕事にも理屈や材料の知識はかなり必要です。
卵にはどんな役割があるのか。
砂糖を減らすと、甘さ以外に何が変わるのか。
バターの温度が違うと、なぜ生地の状態が変わるのか。
薄力粉の役割は?
などなど。
材料にはそれぞれ役割があって、温度や水分量、混ぜ方によって反応も変わります。
だから、失敗したときに
「なんとなくダメだった」
で終わらせず、
「なぜこうなったんだろう?」
と原因を考えるには、理屈を知っている方が強いです。
でも、実際に現場でお菓子を作っていると、
理屈だけでは作れない、とも思います。
たとえば「卵を少しずつ加える」と書いてあっても、どのくらいのスピードで加えるのか。
「粉気がなくなるまで混ぜる」と言われても、どこで止めるのか。
生地の硬さ、艶、温度、香り、焼き色。
毎日作っていると、
「今日はちょっと生地が硬い」
「もう少し混ぜた方がよさそう」
「いつもより火の入りが早い」
そんな小さな違いを、目や手で感じるようになります。
これを全部数字で説明するのは、なかなか難しい。
同じレシピ、同じオーブンを使っていても、
室温や材料の状態は毎日まったく同じではありません。
だから最後の微調整には、どうしても感覚や経験値が入ってきます。
ただ、この「感覚」は勘とは少し違います。
何度も作って、失敗して、状態を見てきたことで蓄積された情報を、経験値を、無意識に判断している。
つまり、
理屈を知ることで失敗の原因が分かり、
経験を重ねることで、その変化に気づけるようになる。
お菓子作りは「理系か、感覚か」のどちらかではなく、両方です。
レシピの数字を守ることは大切。
でも、数字ばかりを見ずに、
目の前の生地の状態を見ることも同じくらい大切。
「レシピ通りに作ったのに、なぜかうまくいかなかった」
そんなときは、自分にセンスがないと思うより、
レシピには書ききれない小さな違いがあったのかもしれない、と考えてみましょう。
その違いが少しずつ分かるようになっていくことも、
お菓子作りの面白さのひとつだと思います。