昨日の米国株式市場は下落しました。
S&P500は33ポイント安、ナスダックは302ポイント安となり、株式市場ではリスク回避の動きが強まりました。
背景にあるのは、再び緊迫している中東情勢です。
ホルムズ海峡周辺で複数の船舶が攻撃されたことを受け、米国はイラン産原油に対する金融制裁措置を再開しました。
さらに、米中央軍が強力な攻撃を開始したと発表したことで、原油価格は急上昇。
WTI原油先物価格は1バレル=72ドル台まで上昇し、それに連れる形で米国金利とドルも上昇しました。
米10年債利回りは4.55%付近まで上昇し、ドルインデックスも101ポイント台へ上昇しています。
市場では、地政学リスクを背景にした原油高、インフレ懸念、米金利上昇、ドル高という流れが同時に進んでいます。
中東情勢悪化で再びドル高へ
ドル円は一時的に下落する場面がありました。
東京時間からロンドン時間にかけては、利益確定売りなどからドル円が下押ししていましたが、その後、中東情勢の悪化を受けて再びドル買いが強まりました。
原油価格が上昇すると、米国ではインフレが再加速するとの警戒感が強まります。
インフレ懸念が強くなれば、米連邦準備制度理事会が簡単には利下げできないとの見方が広がります。
その結果、米国債が売られ、米長期金利が上昇し、ドルが買われやすくなります。
つまり、現在の相場では、
中東情勢悪化
↓
原油価格上昇
↓
インフレ懸念
↓
米金利上昇
↓
ドル高・円安
という流れが形成されています。
地政学リスクが高まると、通常は安全資産とされる円が買われる場面もあります。
しかし、現在は日本の財政不安や日米金利差の拡大が強く意識されており、円が安全資産として買われにくい状況です。
むしろ、リスク回避局面でもドルが買われ、円が売られるという非常に厳しい相場環境になっています。
円と日本国債が同時に売られる異常事態
国内市場では、政府の「骨太の方針」の原案を受け、円と日本国債が大きく売られています。
財政支出の拡大が意識される一方で、財政再建への具体的な道筋が見えにくいことから、日本の財政に対する警戒感が強まっています。
その結果、円安と日本国債安が同時に進行しています。
日本国債が売られると、国債価格は下落し、長期金利は上昇します。
現在、ドル円は約40年ぶり、国内の長期金利も約30年ぶりとなる歴史的な水準まで上昇しています。
円が売られ、国債が売られるだけでも厳しい状況ですが、ここに株安まで加わると、日本市場は「トリプル安」となります。
トリプル安とは、
・円安
・債券安
・株安
が同時に進行する状態です。
これは、海外投資家から日本そのものに対する信認が低下していると受け取られかねない、非常に危険な状況です。
日経平均が崩れると政策修正の可能性も
現時点では、日経平均株価は比較的高値圏を維持しています。
株価が高値を維持している間は、政府も金融市場への影響を深刻に受け止めず、財政拡張的な政策を進める可能性があります。
しかし、円安と金利上昇に加えて日経平均まで大きく下落する場合、状況は変わります。
仮に日経平均が5万円台を大きく割り込むような下落となれば、市場の混乱を抑えるために、政府が財政政策の一部修正を迫られる可能性もあります。
日本市場にとって重要なのは、円安や金利上昇だけではありません。
株価がどこまで耐えられるかが、今後の政策判断を左右する大きなポイントになります。
為替介入は絶好のタイミングを逃した可能性
ドル円の上昇が続くなか、市場では為替介入への警戒感も高まっています。
ただし、介入のタイミングという点では、先週後半のほうが実施しやすい環境だったと考えられます。
先週は、米雇用統計が弱い内容となったことに加え、米国の独立記念日に伴う連休を控え、市場参加者が少なくなっていました。
ドル円も大きく下落する場面があり、このタイミングで介入を行っていれば、比較的少ない金額でも大きな効果を出せた可能性があります。
市場の流動性が低い場面であれば、3兆円規模の介入でも、ドル円を157円付近まで押し下げる展開も考えられました。
しかし、その機会を見送った間に、中東情勢が悪化し、原油価格と米国金利が上昇しました。
現在は米10年債利回りが4.5%を大きく上回っており、ドル高の背景に明確な金利上昇があります。
このような状況で為替介入を行っても、ドル買いの流れを一時的に止めることはできても、持続的に円高へ転換させるのは難しくなります。
介入は実施する金額だけでなく、市場環境とタイミングが重要です。
現在は、先週よりも介入の難易度が上がっていると言えるでしょう。
注目はドル円162円の週足終値
今後のドル円相場で重要になるのが、162円という水準です。
特に注目したいのは、日中に162円を超えるかどうかではありません。
週末の終値で162円を上回るか、それとも下回るかです。
ドル円が週足で162円を明確に上回って引けた場合、2024年7月の高値を初めて終値ベースで上抜ける形となります。
そうなると、チャート上では円安の上限が外れたように見え、円が底抜けした印象が強まります。
テクニカル的にも、長期間意識されてきた高値を突破すると、損切りや新規のドル買いが入りやすくなります。
そのため、週足終値での162円突破は、単なる数値以上の意味を持ちます。
反対に、中東情勢が早期に落ち着き、原油価格と米国金利が下落すれば、ドル円が162円を下回って週末を迎える可能性もあります。
今週は、
・中東情勢がさらに悪化するか
・原油価格が下落に転じるか
・米10年債利回りが4.5%台を維持するか
・ドル円が162円を超えて週足を終えるか
・日経平均が高値を維持できるか
この5点が重要になります。
今後の相場で気をつけたいこと
現在のドル円相場は、単純な日米金利差だけで動いているわけではありません。
中東情勢、原油価格、米国金利、日本の財政不安、政府の政策姿勢など、複数の材料が絡み合っています。
そのため、「上がりすぎたから売る」という逆張りは非常に危険です。
歴史的な高値圏では、過去の値動きだけを根拠に天井を決めることはできません。
ドル円が上昇している間は、まず上昇の背景が崩れたかどうかを確認する必要があります。
具体的には、
原油価格が下落しているか
米長期金利が低下しているか
中東情勢が落ち着いているか
日本政府が具体的な円安対策を示したか
こうした変化を確認してから、相場の転換を判断することが重要です。
まとめ
昨日の相場は、中東情勢の悪化をきっかけに、原油高、米金利上昇、ドル高が進行しました。
一方、日本では財政不安から円と日本国債が売られており、日経平均まで崩れればトリプル安となる危険があります。
為替介入についても、先週より実施環境が厳しくなっており、介入だけでドル円の流れを変えるのは難しくなっています。
今後、最も重要になるのはドル円162円の週足終値です。
162円を上回って引ければ、円安が新たな段階に入る可能性があります。
一方、中東情勢が収束し、原油価格と米国金利が低下すれば、ドル円の上昇が一服する可能性もあります。
歴史的な相場では、値ごろ感よりも、相場を動かしている材料の変化を確認することが重要です。
焦って天井を決めつけず、原油、金利、ドル円、日経平均の連動を冷静に見ていきましょう。