Q.台帳・資産管理が続かない理由と、潰れない仕組みとは?(前編)

Q.台帳・資産管理が続かない理由と、潰れない仕組みとは?(前編)

記事
ビジネス・マーケティング

正直に言うと、僕は管理が苦手です

バックオフィスで働いているくせに、恥ずかしい話ですが…、私はファイル管理が苦手、フォルダ分けも続かない、ITツールの設定も面倒。
今回は前編でどのようにして考えてルールを「構築」したか、
後編でどのようにして「実装」したかをお話したいと思います。

そんな人間が、整備されていない備品台帳やSaaS管理を「ちゃんとやろう」としました。
結果、3ヶ月で破綻しました。
最初はExcelで備品リストを作り、什器も小物も全部管理番号を振って、月次チェックのスケジュールまで組みました。
初月は完璧でした。2ヶ月目にはズレが出始め、3ヶ月目には元通りになっていました。
「自分が怠けているせいだ」と自分を見つめなおしました。
でも違ったんです。
管理が続かないのは、担当者の怠慢じゃない。設計の問題です

管理が崩壊する会社には、共通点がある

僕が失敗から学んだのは、管理が止まる会社には4つの共通点があるということです。

1.管理対象が多すぎる
2.更新頻度が多すぎる
3.入力項目が細かすぎる
4.人の善意に依存している

特に致命的なのが「毎月見直し」というルール。
これは必ず形骸化します。
なぜなら、月次チェックには「やらなくても今日は困らない」という性質があるからです。
今月サボっても、明日会社が潰れるわけじゃない。
だから優先順位が下がり、やがて誰もやらなくなる。
管理は習慣ではなく、イベントに紐づけないと回りません。

削りすぎて失敗した話

「管理対象を減らせばいい」最初にそう思った僕は、こう決めました。
【管理する】
・ノートPC
・スマホ

【管理しない】
・モニター
・キーボード・マウス
・什器
・小物備品

「モニターなんて誰も持ち帰らないだろう」
そう思っていました。
半年後、退職者がモニターを持ち帰っていたことが発覚しました。
悪意ではなかったと思います。
「自分で買ったモニターと勘違いした」と本人は言っていました。
(創業当時、私物持込で回していた経緯があります)
でも、返却されることはありませんでした。

このとき学んだのは——
「これくらい大丈夫だろう」という感覚で削ると、後で痛い目を見るということです。削るなら、明確な判断基準が必要でした

「削っていいもの」の判断基準

失敗を経て、僕はこう整理しました。
管理する = 以下のいずれかに当てはまるもの
1.紛失・盗難のリスクがあるもの(PC、スマホ、タブレット)
2.高額で買い直しが痛いもの(モニター)
3.契約が自動更新されるもの(SaaS)

管理しない = 上記に当てはまらないもの
・低額備品(マウス、ケーブル類)
・使い切り消耗品(文房具、トナー)
・誰が使っているか追う意味がないもの(共用什器)

この基準で絞った結果、管理対象は半分近くになりました。
固定資産かどうかは関係ありません。
リスクがあるかどうか——それだけです。

台帳を「厚く」して失敗した話

削る前、僕の台帳はこうでした。
管理番号/品目/メーカー/型番/購入日/購入金額/利用者/配布日/返却予定日/状態/保管場所/備考
項目が12個ありました。

何が起きたか?
誰も入力しなくなりました。
理由は単純で——
「全項目埋めないと気持ち悪い」という心理が働くからです。
でも、全部埋めるのは面倒。
だから「後でまとめてやろう」となり、結果、誰もやらない。
情報の完璧さを求めると、更新が止まります。

台帳は2つ、項目は5つだけにした

失敗を経て、僕はこうしました。
IT資産台帳
管理番号/品目/利用者/配布日/備考
これだけです。
購入日も金額も持ちません。それは会計の役割だからです。
型番も持ちません。故障したときに調べればいいからです。

SaaS台帳
サービス名/利用者数/更新月/管理者
更新月だけ必須。

「完璧な情報」より「更新され続ける情報」の方が価値がある——これが結論でした。

月次チェックをやめた理由

「毎月棚卸しましょう」
これを決めたとき、僕は真面目にやるつもりでした。
が、直ぐにやめました。
理由は単純です。

月次チェックを「やる理由」が見つからなかったから。

・今月チェックしなくても、誰も困らない
・先月と変わってなければ、時間の無駄に感じる
・チェックしても「何も問題なし」で終わる
つまり、やってもやらなくても変わらない作業だと感じたのです。

代わりに「強制イベント」に紐づけた

だから僕はこうしました。
更新タイミングは「入退職時のみ」
・端末付与・回収
・アカウント付与・停止
・台帳更新
入退職は必ず管理物の動きが発生するイベントです。
そして、やらないと実害が出る(端末紛失、アカウント乗っ取り)。
入退職時だけを強制イベントにすることで、管理が止まらなくなりました。
棚卸は年1回、PCの現物だけ確認。
これで十分です。
「習慣に頼る管理」は崩壊する。「イベント駆動の管理」だけが残る。

でも本当に壊れるのはSaaS

備品より圧倒的に壊れるのがSaaS管理です。
理由は簡単で——申請を通さず契約できるから。
多くの会社は「契約時はfreeeで契約申請をしてください」とルールを作ります。
しかし実態はこうなります。
トライアル開始 → 業務に組み込み → 有料化 → 法人カード決済(トライアル時に事前登録) → 契約申請
つまり
契約 → 利用 → 支払 → 契約申請
順序が逆なんです。

退職者のAdobe契約に気づかず、年間3万円を無駄にした

あるとき社長から「このAdobe Creative Cloud、誰が使ってるんですか?」と聞かれました。

調べたら、半年前に退職した社員の個人契約でした。
・本人がデザイン業務で使っていた
・退職時に「解約しておきます」と言っていた
・でも実際には解約されていなかった
・法人カードで年間契約していたため、自動更新されていた

年間約3万円。
台帳があれば防げたかもしれません。
でも、そもそも台帳に載っていなかった。
台帳を作っても、更新されなければ意味がない。だから必要なのは「台帳を頑張ること」ではなく、「台帳がなくても契約を把握できる仕組み」です。

解決策:情報ではなく"お金"を握る

結論として最も効いたのはこれでした。
SaaSは法人カード決済のみ
・立替禁止
・管理部がカード管理
すると
契約の発生 = 管理部へ支払登録依頼
になり、100%捕捉できます。
台帳を頑張る必要がなくなります。

削る判断で迷ったもの

実際、「これは管理すべきか?」と迷ったものがいくつかあります。

キーボード・マウス
→ 削りました。紛失しても被害が小さいから。
モニター
→ 残しました。高額で、実際に持ち帰られたことがあるから。
Wi-Fiルーター
→ 残しました。紛失するとセキュリティリスクがあるから。
什器(デスク・チェア)
→ 削りました。持ち帰れないから。
ソフトウェアライセンス(買い切り型)
→ 残しました。誰が使っているか把握しないと、退職時に回収できないから。

判断基準はシンプルです。
「管理しないことで、実害が出るか?」
実害が出ないなら、削る。
それだけです。

管理が続く設計の条件

最終的に残ったルールは4つだけです。
1.IT機器とSaaSだけ管理
2.SaaSは法人カード決済のみ
3.更新は退職時だけ
4.年1回現物確認

そしてもう一つ、最も重要な原則。
「完璧な管理」を目指さない。

管理の本質

備品管理は価値を生みません。
事故を防ぐための守りです。
だからこそ必要なのは——
完璧な管理ではなく、潰れない管理

僕が学んだのは、以下の3つです。
1.削りすぎると、後で痛い目を見る
→ でも削らないと、そもそも続かない
2.台帳を厚くすると、誰も更新しなくなる
→ 最低限の情報だけ残す
3.習慣に頼る管理は崩壊する
→ イベント駆動にしないと回らない

仕組みは、きれいさより継続性。
管理が止まっているなら、足すより削る方がうまくいくことも多いと思います。

次回は「実装編」で、具体的に動いた手順を公開します。

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