父ちゃんは、専門家の話をきちんと聞くけれど、その話をそのまま信じるわけではないところがありました。今回は、そんな父ちゃんらしさが、よく表れているエピソードを紹介したいと思います。
おばさんから土地の相談を受けたとき
僕が小さい頃の話しです。田舎に住んでいた、うちの親戚のおばさんが、父ちゃんに相談を持ちかけたことがあったそうです。
おばさんは、自分の土地の一部をある人に貸しました。借りた人は、そこにいろいろな資材を持ち込み、作業場として使い始めたのですが、しばらくすると、資材を置きっぱなしにしたまま、何年も連絡が取れなくなってしまいました。
おばさんとしては、放置されたその土地を返してもらって、農地として使いたい。でも、残された資材を勝手に処分してしまっていいのか、判断がつかず、父ちゃんに相談したそうです。
弁護士に感じた違和感
相談を受けた父ちゃんは、知り合いの弁護士に会いに行き、アドバイスを求めました。「資材を処分して、土地を自由に使いたいが、問題ないか?」と聞いたところ、その弁護士は「好きにしたらいい」とだけ言って、父ちゃんに背中を向けたそうです。
普通なら、専門家がそう言うなら安心して行動すると思います。でも、父ちゃんは、違いました。その弁護士の態度から、何かを感じ取り、「今動いたら、逆に損害賠償で訴えられるんじゃないか」と、直感的に思ったそうです。
六法全書を自分で読み解く
家に帰った父ちゃんは、自分で六法全書を開いて調べ始めました。そして、一定の期間を待たずに、貸した土地の上にある他人の所有物を勝手に動かすことは、法律違反になり得ることを理解したそうです。
父ちゃんは、おばさんに「今は動くな」と伝え、しばらく待つように言いました。そして、自分なりに計算した日になったとき「今やさ!」と、ゴーサインを出したそうです。
僕は、この話を聞いたとき、「専門家である弁護士が『好きにしたらいい』と言ったのなら、僕ならそのまま従って動いていたと思う」と、父ちゃんに話しました。
すると、父ちゃんの答はこうでした。「あの弁護士は、俺に背中を向けたんだ。もし、あのとき好きに動いて他人の所有物を処分していたら、相手の弁護士から損害賠償を請求されていたと思う。弁護士同士は、裏でつながって情報を共有しているからな」
勘ぐりすぎる父ちゃん
ただ、父ちゃんの最後に発した「弁護士同士は、裏でつながって情報を共有しているからな」というひと言は、今にして思うと、さすがに父ちゃんの勘ぐりすぎだったのではないかと思います。弁護士には守秘義務があります。また、利益が相反する弁護士同士で情報を共有することは、実際にはまずあり得ないと思います。おそらく、専門家に対する独特の警戒心が強かった父ちゃんらしい、少し行き過ぎた深読みだったのだろうと思います。
専門家の話を聞くけど自分で考える
専門家の意見を聞きに行きながらも、その言葉を鵜呑みにせず、自分の頭で裏付けを取って、自分なりの判断を出す。しかも、その判断が、結果的にある程度理にかなったものだったことを考えると、父ちゃんの生き残る嗅覚は鋭かったと思います。
父ちゃんの場合には、勘ぐりすぎてしまったこともあったと思いますが、専門家の話を聞いた上で、最後は自分自身で納得できるまで考えてみる。そういう姿勢は、今の時代にも通用することなのかもしれません。
サービス内容で公開している18の質問には、こうした「父親らしさが表れたエピソード」を掘り起こす問いも含まれています。ご自身の記憶をたどってみると、思いがけない発見があるかもしれません。