【グリーフ話】失った悲しみの本質を知ることが、癒しになることもある。

【グリーフ話】失った悲しみの本質を知ることが、癒しになることもある。

記事
コラム

なぜ、失うことは、こんなにも人にダメージを与えるのか

これまでこのマガジンでは、グリーフケアカウンセラーとしての役割を元に、グリーフの中で起きる、いろいろな反応について書いてきました。

 涙が出ない。眠れない。誰にも会いたくない・・・などの様々な症状に寄り添って。
そのひとつひとつに、「それは、おかしいことじゃない」と、寄り添うように伝えてきました。

でも今日は、少し視点を変えてみようと思います。
 症状そのものじゃなく、そもそも、なぜそれが起きるのか。
 その"根っこ"を知ることで、見えてくるものがあると思います。


人は、一人で生きてこられなかった

人間は、生まれてすぐの頃、一人では何もできません。
 食べることも、身を守ることも、誰かに委ねるところから、人生が始まります。
その中で脳は、「この人がいないと、生きていけない」という存在を、深く記憶に刻みます。

 それが、最初の"大切な人"のカテゴリです。特別な事情がない限り、母親が生まれて初めての最初の大切な人ですね。

やがて自立して生きられるようになっても、このカテゴリは消えません。
 むしろ、生きていく中で出会う人やもの、時には場所やペットまで、少しずつそこに加わっていきます。
つまり、大切な存在というのは、脳にとって"生存に関わる情報"として扱われている。
 だからこそ、それを失うと、脳は「命に関わる一大事」として反応してしまうんです。


「明日も同じ日常が続く」という前提が、壊れる

もうひとつ、大きな衝撃の理由があります。
人は、無意識のうちに「今日と同じような明日が来る」という前提の上で生きています。
 その前提があるから、安心して、日々を過ごせる。
家族がいて、可愛いペットがいて、雨風しのげる家もあって・・・当たり前という認識の中で生きています。

喪失は、この前提そのものを壊してしまいます。
 失った対象そのものへの悲しみだけじゃなく、
 「自分が信じていた世界の形」が崩れる、という、もう一段深い衝撃も、同時に起きているんです。
当たり前が当たり前でなくなったということを知る時。自然災害などもグリーフが大いに影響しているのです。

だから、涙の理由が、ただ一つじゃないことがあります。
 その人がいないこと。可愛がっていたペットがいないこと。当たり前の暮らしが出来なくなったこと。
 そして、「ある」「いる」前提で作られていた、自分の日常そのものが、揺らいでしまったこと。
 その両方を、同時に悲しんでいるんだと思います。

大切な存在を失った時、自分の一部も、一緒に失われる

大切な存在との関係は、知らないうちに、自分自身の一部にもなっています。
誰かの子として。
誰かのパートナーとして。
その人と一緒に過ごした時間の中で育った、自分として。

その関係ごと失うということは、対象を失うと同時に、「その関係の中にいた自分」も、一緒に失うということでもあります。

なんだか、自分が自分じゃなくなったような感覚。
 心にポッカリ穴が空いたような喪失感に繋がります。
それは、決しておかしなことじゃありません。

歴史から。群れから離れることは、命の危機だった

そしてもうひとつ、これは進化の記憶です。
大昔、人間は群れで生きることでしか、生き延びられませんでした。
狩で食料を得ていた時代は、一人でマンモスなんて捕まえられないわけですし。

家族や仲間がいないと、何も出来ない仕組みが始まりだったということです。
孤独がどれだけ恐怖だったかというのも、この時から脳に刻み込まれたのでしょうね。きっと。

 仲間を失う、群れから外れる。
 それは、そのまま命を落とすことに直結していました。
だから今でも、大切な繋がりを失うと、脳は当時と同じように、強い警報を鳴らします。
 理性では「大丈夫」と分かっていても、心と体が過剰に反応してしまうのは、その名残なんです。

本能的なことを知ることで、少し外側から見られる

ここまで読んで、「なるほど」と思った方もいらっしゃるかもしれません。
これまで、症状ひとつひとつに「それは自然な反応です」と伝えてきました。
 それは、今も変わらず本当です。

でも今日伝えたかったのは、もう一歩先のことです。
 なぜそれが起きるのか、その理由を知ることは、自分の反応を、少しだけ外側から眺める力をくれます。
「今、自分はこんなに反応している。それは、これだけの根深い理由があるからなんだ・・・」
 そう思えると、渦中にいながらも、少しだけ、自分を客観的に見られるようになる。
その距離感が、たぶん、落ち着きに繋がるんだと思います。


人間は孤独になるのが本当に怖い生き物なんだなと感じませんか?
今、冷たさの中にいるあなたへ。
この記事が、少しでも温もりになれますように。



サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す