どうも、FXトレーダー兼システムエンジニアのナオトです。
投資と心理の話の45回目です。前回は、利益は早く売り、損は持ち続けるくせを、1万口座の記録で見た話でした。
今回は、長く取引していると判断が崩れる、という話によく使われる説と、その追試の話です。
自分を抑える力は、筋肉のように使うと減っていく。
だから、1つのことで我慢したあとは、別のことでも我慢しにくくなる。
1998年に、心理学者のバウマイスターたちが発表した説で、自我消耗と呼ばれています。
目の前のクッキーを我慢してラディッシュを食べた人は、そのあとの解けないパズルを早くあきらめた、という実験がよく知られています。
決断疲れの説明にも、この説がよく使われます。
よく一緒に語られるのが、2011年の裁判官の研究です。
イスラエルの裁判官8人の、仮釈放の判断を調べたものです。
認める判断の割合が、区切りの始めにはおよそ65%あり、休憩の前にはほぼ0まで下がり、休憩のあとにはまた65%ほどに戻っていました。
ただ、休憩が効いたのか、食事が効いたのかは分からない、と著者たち自身が書いています。
同じ年に、見落とされた要因があるという指摘も、同じ学術誌に出ています。
そして、肝心の自我消耗の説そのものは、大きな追試で崩れました。
2016年に、23の研究室が同じ手順で実験をやり直しました。参加したのは合わせて2,141人です。
効果の大きさを表す数字は0.04。0と区別がつかない大きさでした。
2021年には、2016年の追試に反論した研究者が中心になって、36の研究室、3,531人で確かめ直しています。
結果は0.06で、やはり意味のある差にはなりませんでした。
ただし、この2021年の研究では、疲れを強く感じた人ほど効果が大きく出る傾向も見られています。探索として調べた結果で、決着はついていません。
取引に置き換えると、こうなります。
長く画面を見ていると判断が崩れる、と言われても、その根拠として自我消耗を持ち出すのは弱い。
一方で、本当に疲れているときに崩れやすい可能性は、まだ消えていません。
どちらが本当でも困らない形は、1つです。
入る条件、損切り、利確を、落ち着いているときに決めておき、注文やEAに任せる。そうすれば、疲れの説が本当でも嘘でも、判断は同じになります。
投資と心理の35回目のジャムの実験、43回目のゼイガルニク効果に続いて、有名な説ほど追試を見てから使う、という話でした。
ご自分の取引の決まりを、過去のデータで確かめる過去検証のご依頼も受けています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。