どうも、FXトレーダー兼システムエンジニアのナオトです。
投資と心理の話の43回目です。前回は、今の自分の状態が先の自分の選択まで引っぱる、共感のずれの話でした。
今回は、やりかけのことが頭に残る、という有名な説と、その追試の話です。
ゼイガルニク効果という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
途中で止められた作業は、最後まで終えた作業より、よく覚えている。
1927年に、ブルーマ・ゼイガルニクという心理学者が発表しました。
きっかけとして、よく語られる話があります。
レストランの給仕が、まだお金を払っていない注文はよく覚えているのに、払いが済むと、その中身を思い出せなくなっていた、というものです。
実験では、いくつもの作業を順にやってもらい、そのうち半分を途中で止めます。あとで、どんな作業があったかを思い出してもらうと、止めたほうをよく思い出した、という結果でした。
ところが、この結果は、あとの追試でなかなか再現しませんでした。
2025年に、スイスのベルン大学の研究者が、同じやり方の研究を集めてまとめ直しています。
思い出した数を、止めた作業と終えた作業で比べると、38本の論文を合わせた比は0.99。ほぼ同じでした。
やりかけの作業をよく覚えている、という差は、まとめると見えなかったわけです。
差が出るかどうかは、課題にどれだけ入れ込んでいるか、実験の場の雰囲気のような条件に左右される、と著者たちは書いています。
一方で、同じまとめの中で、はっきり残った結果があります。
途中で止めた作業は、あとで機会があると、頼まれなくても再開されやすい。
ゼイガルニクと同じく、心理学者クルト・レヴィンの考えから生まれた研究で、オブシアンキナが1928年に報告しました。
21本の論文を合わせると、止めた作業が再開された割合は、およそ67%。偶然の50%をはっきり上回っていました。
覚えているかどうかより、終わらせたくなる気持ちのほうが確かだった、ということです。
もう1つ、2011年に発表された研究があります。
終わっていない目標を抱えた人は、関係のない文章を読んでいる最中にも、その目標のことが頭に浮かび、関係のない課題の出来も落ちました。
ところが、その目標について、いつ、どうやって片づけるかの具体的な計画を立ててもらうと、こうした影響は消えました。
終わらせなくても、計画を決めれば、頭の中では片づいたことになる。そう読める結果です。
取引に置き換えると、持っている取引は、まだ終わっていない作業です。
出口を決めないまま持つと、ほかのことをしている最中にも、チャートが気になりやすい。
2011年の研究を当てはめるなら、損切りの位置、利確の位置、閉じる時刻を、入るときに決めて注文に付けておくことが、その計画にあたります。
投資と心理の1回目や、前回の42回目で書いた対策と同じところに行き着きます。決まりを先に決めて、注文に任せる。取引で確かめた研究ではありませんが、そうしておく理由が、もう1つ増えました。
有名な説でも、追試を見ると話が変わることがあります。投資と心理の35回目のジャムの実験と同じです。
持っている取引の出口の決まりを、過去のデータで確かめる過去検証のご依頼も受けています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。