どうも、FXトレーダー兼システムエンジニアのナオトです。
投資と心理の話の30回目です。前回は、材料を増やすほど自信だけが上がる話でした。
今回は、極端に良かった次や、極端に悪かった次に起きる変化を、直前にしたことの効き目と読んでしまうくせ、平均への回帰です。
ノーベル経済学賞を受けた心理学者のダニエル・カーネマンが、若いころの話として語っているものがあります。
イスラエル空軍の飛行教官たちに、うまくできたら褒めるほうが、叱るより学びが進む、と教えていたときのことです。
ベテランの教官が反論しました。
訓練生がきれいに飛んだときに褒めると、次はたいてい下手になる。ひどい飛び方を怒鳴りつけると、次はたいていうまくなる。だから褒めるのは逆効果だ、という話でした。
教官の見たことは、本当でした。でも、理由の読み方が違っていました。
飛行の出来には、腕前のほかに、その回の運の分が混ざります。
教官が褒めるのは、特にうまくいった回です。そういう回は、腕前に運が上乗せされていることが多い。次の回は運の分が抜けて、いつもの出来に戻ります。
怒鳴るのは特にひどかった回なので、次は放っておいても、いつもの出来に近づきます。
褒めたから下手になったのでも、叱ったからうまくなったのでもありません。どちらも、いつもの出来に戻っただけでした。
カーネマンはその場で、教官たちに的へコインを2回ずつ投げてもらいました。1回目に的の近くへ落ちた人ほど、2回目は遠くなっていたそうです。
この現象に名前を付けたのは、1886年のゴルトンです。
200組あまりの両親と、大人になった子どもの身長を調べました。背の高い両親の子は、平均すると両親ほど高くなく、背の低い両親の子は、両親ほど低くなかった。
極端な結果のあとは、ふつうに近い結果が来やすい。これを平均への回帰と呼びます。
取引では、2つの場面で、このくせが出ます。
1つ目は、総当たりのいちばんです。
勝率50%で、勝ちと負けの幅が同じ、まったくのでたらめな手法を100本用意して、100回ずつ取引させてみました。これを2,000回くり返して平均を取っています。
最初の期間で成績の良かった上位10本は、プロフィットファクターが平均1.42。
同じ10本に、次の期間も取引させると、1.02でした。でたらめの全体とほぼ同じです。
下位10本は、最初が0.71で、次の期間は同じく1.02まで戻りました。
上位10本は、腕があったわけではありません。たまたま運の分が乗っていただけなので、次の期間で抜けました。
投資と心理の26回目で、総当たりのいちばんは生き残りの1つだと書きました。いちばんの数字には、たいてい運の分が上乗せされています。
2つ目は、負けが込んだあとに設定を変えたときです。
ひどく負けた月のあとに設定を変えると、翌月は良くなって見えやすくなります。
でも、ひどかった月の次は、設定を変えなくても、ふつうの月に近づきやすい。変えたおかげなのか、戻っただけなのか、その1か月では区別できません。
投資と心理の12回目で、検証の結果が落ちても設定を変えない、と先に決めていた話を書きました。そのときの理由は、変えると確かめた意味が消えるから、でした。
平均への回帰から考えても、同じところに行き着きます。落ちた直後に変えると、次に戻ったとき、変えたのが効いたように見えてしまいます。
成績が良すぎたときと、悪すぎたときほど、次の変化は割り引いて見る必要があります。
良かった設定は、作るのに使っていない期間で確かめる。設定を変えたら、変えなかった場合と同じ期間で並べる。そこまでして、ようやく効き目が見えてきます。
いちばん良かった設定の成績を見たら、まず、運の分がどれだけ乗っているかを考えてみてください。
設定を選んだあとに、使っていない期間とでたらめで確かめる、過去検証のご依頼も受けています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。