どうも、FXトレーダー兼システムエンジニアのナオトです。
投資と心理の話の26回目です。前回は、連勝のあとにまた勝てる気がする、ホットハンドでした。
今回は、途中で消えたものが見えずに、残ったものだけで判断してしまうくせ、生存者バイアスです。
よく知られている話から始めます。
第二次世界大戦のころ、アメリカのコロンビア大学に、軍のために統計を扱う研究グループがありました。
そこにいた統計学者のエイブラハム・ウォールドは、任務から帰ってきた機体の損傷をもとに、どこに当たると落ちやすいかを見積もる方法を考えました。
よく語られる形では、こうなっています。
帰ってきた機体の弾の跡を数えると、翼や胴体に多く、エンジンには少ない。そこで翼と胴体を補強しよう、という案が出た。
ウォールドは逆を言った。エンジンに当たった機体は、帰ってこられなかったのだ、と。
ただ、この話の細かいところには、はっきりした証拠が少ないそうです。
帰ってきた機体だけを見ると見誤る、という核の部分は本当で、記録で確かめられるのは見積もりの方法のほうです。
それでも、残ったものだけを見る危うさを、これほど分かりやすく伝える例はなかなかありません。
投資の世界では、投資信託の成績の調べ方で問題になりました。
成績の悪い投資信託は、途中で閉じられたり、ほかと合わさったりして、一覧から消えます。
今ある投資信託だけで過去の成績を測ると、消えた分が抜けるので、全体より良く出ます。
1996年に、エルトン、グルーバー、ブレイクの3人がこの差を測りました。
伝えられている数字では、生き残った投資信託だけで測ると、年に0.9%ほど高く出ていたそうです。小さい投資信託ほど、差は大きかったといいます。
FXでも、同じ形はよく出てきます。
たとえば、売られているEAの成績です。一般に、成績が悪くなったEAは、販売が止まって一覧から消えていきます。
今並んでいるEAの成績を眺めると、EAというものは勝てるものだ、と見えやすくなります。
もう1つは、自分の過去検証です。
入り口を何万通りも試して、いちばん成績の良いものを選ぶ。これは、何万の候補のうち、生き残った1つだけを見ていることになります。
候補が多いほど、偶然だけでも、いちばんの成績は高くなります。
検証ノートの37回目では、ドル円の入り口を5万2千通り試しました。いちばん良いものは、プロフィットファクターが1.43でした。
同じ手順を、でたらめな入り口でも回すと、いちばん良いものは1.33でした。
1.43のうち、選ぶこと自体が作った分がかなりある、ということです。
だから私は、いちばん良い1つを見たら、同じ数だけ試したでたらめのいちばんと並べるようにしています。
でたらめの側は、消えていった候補の代わりです。そこまで並べて、ようやく、残った1つがどれだけ本物かが見えます。
いちばん成績の良いものを見たら、その裏にいくつ消えたものがあるかを、一度数えてみてください。
ご自分の手法を、でたらめと同じ手順で比べる、過去検証のご依頼も受けています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。