最近、「人が動いてくれない」「気を使ってばかりで疲れる」
そんなご相談をよくいただきます。
今日は、ある講師の方とのセッションを通して見えた、
“他人軸の不安”から“自分軸の安心”へ変わる瞬間をお話しします。
「環境改善のセミナーをしているんですが……
社員さんが動いてくれない気がして、不安なんです。」
そう話してくださったのは、
企業研修を担当している女性講師のAさん。
依頼主は社長さん。けれど、実際に向き合うのは社員の皆さん。
「社長の期待にも応えたいし、社員にも響かせたい」
その想いが強いほど、心が落ち着かなくなってしまう。
研修が終わっても「これで良かったのかな」という不安が残るそうです。
私は少し間をおいてから、静かに尋ねました。
「Aさん、ほんとうは、どうしたいですか?」
彼女は少し黙ったあと、
ゆっくりと息を吐いて答えました。
「……社員さんを変えたいわけじゃないんです。
私、自分が安心して話せる場をつくりたいんです。」
その言葉が出た瞬間、空気がふっとやわらぎました。
長く抱えてきた“誰かを変えなきゃ”という緊張が、
静かに溶けていったのです。
人の不安の多くは、
「自分の力ではどうにもできないこと」を
なんとかしようとするところから生まれます。
それは、他人軸にいるサインです。
でも、自分軸に戻ると、
「自分ができること」と「相手に委ねること」の境界が見えてきます。
そして不安がやさしく静まっていきます。
Aさんもそのことに気づいたあと、
セミナーの内容が少しずつ変わっていきました。
以前は、
「職場を整える」「探し物を減らす」「ルールを守る」など、
社員さんに向けた“やり方”の話が中心でした。
でも今は、自分の体験を語るようになりました。
「机を整えると、自分の気持ちまで整いました」
「探し物が減ると、心に余裕が生まれるんです」
理屈ではなく、経験から生まれた言葉。
それが聞く人の心に届くようになったのです。
人は、整った人のそばで安心します。
安心できる場所では、人は自然と動き出します。
だから本当に大切なのは、
相手を変えるスキルではなく、
自分軸で立つ「あり方」なのだと思います。
セッションの最後に、Aさんは穏やかな笑顔で言いました。
「やっとわかりました。
社員を変えるより、自分が整えばいいんですね。」
その瞬間、もう焦りはありませんでした。
人を変えようとする不安の奥には、
「自分を信じきれない」小さな迷いが隠れています。
けれど、自分軸に戻ると、
不思議とまわりも変わり始めます。
それが、コーチングのいちばん深いところだと感じます。
もし今、
「人が思うように動いてくれない」
「頑張っているのに空回りしてしまう」
そんなもやもやを感じている方がいたら、
少し立ち止まって、自分の軸を見つめてみませんか。
人は、自分の軸に戻るだけで、
まわりの人の動きも、空気も、少しずつ変わっていきます。