中小企業経営のための情報発信ブログ176:モチベーションを高める科学的方法

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ビジネスや企業経営において、いかに従業員のモチベーションを高めるかということは重要な課題で、昔から多くの経営学者がモチベーションを高める方法論・理論を提唱しています。マズローの欲求五段階説、マグレガーのⅩ理論・Y理論、ハーズバーグの動機づけ=衛生理論などさまざまです。今日は、こうした理論ではなく科学的な観点からモチベーションを高める方法です。
1.ドーパミンとノルアドレナリン
 仕事であれ勉強であれモチベーションを上げるためのカギとなるのは「ドーパミン」と「ノルアドレナリン」という2つの神経伝達物質です。
 ドーパミンは、何かに興味関心を持つことで分泌されやすくなる神経伝達物質で、やる気や幸福感だけでなく、多くの生命活動、特に感情や意欲、思考などん心の機能にも大きくかかわっています。ノルアドレナリンは「何かをやらなければならない」というプレッシャーを伴うような神経伝達物質です。
 脳生理学者の有田秀穂氏は、三大神経伝達物質(ドーパミン・ノルアドレナリン・セロトニン)を「心の三原色」と表現し、次のように説明されています。分かりやすい説明だと思います。
 1:ドーパミン:ポジティブの赤・・・快感や意欲をつかさどる
 2:ノルアドレナリン:ネガティブの青・・・緊張感や危機感をつかさどる
 3:セロトニン:安定の緑・・・安らぎや充足感をつかさどる
 ドーパミンだけでなく、ノルアドレナリンも大きくモチベーションに関わります。例えば提出期限が迫ってきた場合に『そろそろやらなければマズい』といった気持が湧いてきて何とか期限に間に合い危機を脱出できたという経験がある人も多いでしょう。このような場合、ノルアドレナリンが出て、脳のあらゆる力を高めて鋭敏化するというノルアドレナリンの働きに助けられたのです。逆に、提出期限が刻一刻と迫ってきているという強迫観念に縛られて何から手をつければいいか分からなくなって期限を徒過したという経験を持つ人もいるでしょう。これはノルアドレナリンの過剰な働きで、脳が鋭敏化するためにやらなければならないこと以外のことにも過敏になり注意が分散してしまった結果です。
 集中して仕事に取り組まなければならないときほど、周囲の雑音が気になって集中できない、以前に体験した嫌な出来事や自分の中で気になっていることなどに注意が向かい集中できない、といったこともノルアドレナリンによる弊害なのです。
2.日常生活の中の興味関心を大切にする
 ノルアドレナリンには上記のような弊害がありますが、ドーパミンもノルアドレナリンも、モチベーションを高めるにあたって重要な働きをしてくれることは事実です。重要なのはドーパミンとノルアドレナリンとでバランスが取れていることです。ビジネスパーソンにとっては「やらなければならないこと」が多すぎて、ノルアドレナリンが分泌されやすい状態になっています。その結果、先ほどのノルアドレナリンの弊害が出てくるのです。むしろ、「やらなければ」という危機感によって分泌されるノルアドレナリンよりも「やりたい」という意欲によって分泌されるドーパミンの分泌を高めることが重要になってきます。
 「日常生活の中において自分の興味関心とできるだけ素直に大切に付き合っていく」ことで「やりたい!」「知りたい!」といった気持ちを持つ機会が増え、それだけドーパミンの分泌を誘発できるようになるのです。
 仕事に対するモチベーションを高めたいと言っても「やらなければならないこと」が多すぎて、最初から仕事に対して「やりたい」という気持ちが湧かないのが現実です。仕事から離れた日常の中で「やりたい!」「知りたい!」という興味関心を普段から大切にすることが重要なのです。仕事から離れた日常の中でドーパミンを頻繁に出せるようになれば、仕事の場でも比較的容易にドーパミンの分泌を促すことができるようになるのです。
3.「学習済み」ではない「未知の世界」に目を向ける
 ドーパミンはさまざまな場面で分泌されるものですが、特に「Want(欲する)」と「Seek(探求する)」という情動によるのです。その人が「もともと持っていた興味関心」というだけでは範囲が狭く十分なドーパミンの分泌には不十分です。そこで、「未知の世界」に目を向けることも大切です。
 「Want」は学習済み・経験済みのことを欲してドーパミンが分泌されたときの情動を指します。しかし、「Want」の情動では新たな未知の仕事に対して興味関心をもってやりがいを見出せる脳の仕組みを持つことができないと言われています。ここで「Seek」の情動が重要になるのです。「これをやれば自分は快楽を得られる」と学習済みのことではなく、「快楽を得られるかどうかは分からないけれども、とにかくやってみたい」という思いからドーパミンが分泌された状態が「Seek」の情動なのです。知らない世界に対する好奇心を持つということが大切なのです。
4.ゴールを据えない「無目的の興味関心」を大切にする
 ゴールや目的を設定するということがモチベーションを誘発することがあるのも事実です。しかし、ゴールや目的ばかりを重視する結果、あまりにも遠いゴールやあまりにも高い目標を設定しても、モチベーションにはなりません。全く経験のない人がその先にあるゴールや目的を立ててもその人のモチベーションにはならないのです。例えばジョギングの経験がない人がフルマラソン完走という目的を打ち立ててもモチベーションは高まらないでしょう。ジョギングをしていく中で「〇か月後に〇kmを〇分以内で走る」という風に目に見えた目的やゴールを設定し、それが達成されてさらに高い目的やゴールに向かうことでモチベーションが生まれるのです。ゴール・目的というのは自分が体験したうえで作られていくものです。
 ゴールや目的に縛られてしまうと、逆に身動きが取れなくなることもあります。そうなると、自分の世界を狭めてしまいます。
 「『よくわからないけど、なんか面白そう』という精神で自分の世界を広げていく」「『無目的の興味関心』を大切にすることで『Seek』の情動を持つ機会が増え結果的に未知の仕事やハードルの高い仕事に対するモチベーションも高まってくる」のです。
ビジネスにおけるモチベーションを高める理論とは異なり、科学的なドーパミン・ノルアドレナリンという情報伝達物質の分泌を効果的に促すことでモチベーションを高める方法について書きましたが、人間は年を取ると頭が固くなり興味や関心の対象が限定的になってしまいます。いくつになっても、少年のような心をもって何事に対しても目を輝かせ興味関心を持つことが、ドーパミンなどの化学物質の分泌を促しモチベーションを高めるために大切だということです。
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