中小企業経営のための情報発信ブログ175:言葉にできるは武器になる

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ビジネス・マーケティング
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今日は、梅田悟司著「言葉にできるは武器になる」(日本経済出版社)を紹介します。著者の梅田氏は、電通のコピーライターで、この本では、自身の仕事を通じて習得された「言葉にできる力」のつけ方が書かれています。
これまでも、コミュニケーションの重要性は書いてきましたし、コミュニケーションは「言葉と思いのキャッチボール」と言ってきました。言葉を発するだけでなく、その言葉に込められた思いが相手に伝わらなければ意味がありません。しかし、心の中にとどめていたのでは何も伝わることはありません。まずは言葉にする(言葉にできる)ことです。
梅田氏のコピーライターという仕事は、いうまでもなく「商品やサービス、企業を宣伝するために使用する文書(コピー)を書く仕事」です。企業はマーケティング活動の一環として広告に取り組み、その広告の一部分がクリエイティブであり、更にその一部分がコピーということになります。コピーライティングには自己表現が求められるのではなく、あくまでもクライアントワークであり、クライアントのマーケティング戦略から課題を理解し、コピーを書くことが求められるのです。そして、コピーはそれを見た顧客が ストレートに商品やサービス、企業を理解し、好意を抱かせるものでなければなりません。つまり、思いが詰まった言葉でなければならないのです。
この本は3章で構成されています。
1章:「内なる言葉」と向き合う
 言葉には「外に向かう言葉」と「内なる言葉」の2種類があります。前者は、人に意見を伝えることを目的とした言葉で、後者は意見そのもののことです。人に伝えるための言葉が「外に向かう言葉」で自分の頭の中で考えを深める言葉が「内なる言葉」です。一般的に、言葉とは「外に向かう言葉」を指しますが、言葉が意見を伝えるツールであるならば、まずは意見を育てる必要があります。そのためには、自らの内なる言葉と向き合い、自分の思考や視点に意識を持っていき、深めていかなければなりません。小手先だけのスキルで「外に向かう言葉」だけ磨いてもコミュニケーションは改善されません。美辞麗句を並べても意味はなく、思いが詰っていなければならないのです。まずは意見そのもの、つまり内なる言葉を磨かなければならないのです。 
 著者は、それを「内なる言葉」の解像度を上げると表現していますが、「内なる言葉」が薄いとそこから発せられる「外に向かう言葉」も薄っぺらいものになります。
 意見そのものを育てるには、物事を考えたり、感じたりするときに、無意識のうちに頭の中で発している言葉、すなわち「内なる言葉」の存在を確認し、その語彙力や解像度を高めていく必要があるのです。「内なる言葉」に日頃から意識を向け、時に声に出したり、書き留めたりすることで、自分の思考や視点に意識が向くようになり、「考えたつもり」という状態から抜け出せるようになるのです。
2章 正しく考えるための「思考サイクル」
 ここでは、「内なる言葉」の解像度の上げ方が書かれています。先ほども書きましたが、解像度の低い画像はぼやけているのと同じで、そこから発せられる言葉もぼやけた薄っぺらい言葉になります。例えば「うれしい」という感情表現は、解像度の低い言葉で、それを更に根源的な理由にまで掘り下げていくと、そこから発せられる言葉の意味も明確になっていくのです。
 そのための手法として、書き出す、T型思考、グルーピング、視点の拡張、客観性の確保、真逆思考、複眼思考などの方法が紹介されています。
 まず、頭に浮かんだ言葉を書き出し、紙面上に広げて深めていきます。特に、ここでは、3つの思考サイクルが推奨されています。
Ⅰ:アウトプットする
 Ⅱ:拡散させる
 Ⅲ:化学反応を起こす
具体的には、
 Ⅰ:内なる言葉をひたすら書き出し、グルーピングすることで、思考のクセ・傾向や考えの足りない領域を知る。 
 Ⅱ:考えが足りていないヨコ(幅)やタテ(深さ)に向けて思考を進めていく。
 Ⅲ:さまざまな思考ツールやフレームを用いて化学反抗を起こしながら、自分では考えないようなことまで到達する。
ということです。
 上記の3つのサイクルを7つの具体的な手法としてあげています。
Ⅰ:頭にあることを書き出す アウトプット・・・単語でも箇条書きでも文章でも、とりあえず紙か付箋に書き出す。
Ⅱ:T型思考 連想と進化・・・なぜ?本当に?それで?という問いを発し、思考を広げ、深める。
Ⅲ:グルーピング 同じ仲間を分類する・・・似た内容が書かれた紙を塊にし、すべて分類したら大きい塊が分解できないか考える。塊を横に並べ、本心に迫っているものを上から順に縦に並べる
Ⅳ:視点の拡張 足りない箇所に気づき、埋める・・・横の関係の抜け・漏れ・重複を頼りに足りない考えや情報を埋める。
Ⅴ:客観性の確保 時間をおいて思考を寝かせる・・・時間をおいてもう一度作業を行なうことで、より客観的に取り組める。
Ⅵ:真逆思考 逆転の発想・・・常識や先入観から抜け出して考えるために、敢えて真逆を試してみる。
Ⅶ:複眼思考 違う人の視点で考える・・・自分の視点を超えて発想するため、家族・友人・同僚などであれば、どう考えるかを想像し、参考にする。
3章 プロが行なう「言葉にするプロセス」
 ここでは、「内なる言葉」を「言葉にする」2つの戦略が紹介されています。
 1つ目は、「言葉の型」を知ることです。使える言葉の型は、中学ですべて習っています。例えば、比喩・擬人、反復、対句、断定、誇張等です。
 2つ目は、「言葉を生み出す心構え」を持つことです。①たった一人に伝わればいい ②常套句を排除する ③一文字でも減らす ④きちんと書いて口にする ⑤動詞にこだわる ⑥新しい文脈を作る ⑦似て非なる言葉を区別するなどです。例えば、みんなに伝えようとするのではなく、「たった1人に伝わればいい」という心構えを持つことで明確なターゲティングに繋がります。また、「常套句を排除する」という心構えを持つことで、自分らしい言葉を豊かにすることに繋がります。
ビジネスの世界でも「人を動かす」のは言葉です。しかし、その言葉に思いが込められていなければ人は動いてくれません。思いというのは「内なる言葉」あり本音です。それを深め、豊かにしないと「人が動く言葉」は生まれてきません。「人が動く言葉」を磨くには役に立つ本だと思います。
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