中小企業経営のための情報発信ブログ174:週休3日制の問題点

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今日もブログをご覧いただきありがとうございます。
週休3日制については以前にも書きましたが、働き方が多様化する現在において、採用を検討している企業も既に採用している企業もあります。
ライフワークバランスを求める人や副業を行う者など多様な働き方を求める人には好ましい制度のようにも見えますが、週休3日制といっても、企業によってさまざまです。
「選択的週休三日制」というのは、希望者が週に三日間休むことができる働き方のことで、2021年4月に自民党の一億総活躍推進本部が提言したものです。選択的週休三日制が導入されれば、育児・介護・治療・学業・ボランティア・副業など、さまざまな事情を抱える人にとって仕事との両立がしやすくなり、企業にとっても多様な人材を確保できることになります。導入には法改正の必要はなく、企業の労使の合意を得て制度を導入すればいいだけなので、導入も比較的容易にできます。
1.選択的週休三日制の議論が進む背景
 現在では多くの企業が週休二日制・完全週休二日制を導入しています。かつての長時間労働から労働環境は大幅に改善されています。2019年における日本の年間労働時間は1644時間で、全世界で22位です。1位メキシコ(2137時間)、3位韓国(1967時間)、10位アメリカ(1779時間)、15位イタリア(1718時間)、20位カナダ(1670時間)などに比べても短い数字になっています。それにもかかわらず、なぜ今、選択的週休三日制が議論されているのでしょうか。 
 その理由の1つは、労働力の縮小という問題があります。日本の生産年齢人口は1995年以降減少の一途をたどり、従来の男性に依存した労働環境のままでは労働力の確保が困難になっています。女性やシニア、外国人などの様々な属性の人を職場に呼び込むために多様な労働環境の整備が必要になるのです。
 今回の選択的週休三日制は単に「休むを増やす」ことが目的ではなく「生産性を高める」ことが目的です。とくにIT分野などで高度技術を持つ人材が不足しており、新たな知識やスキルを学び社会に還元するということが期待されているのです。
2.日立製作所とパナソニックの週休3日制
2022年中に導入を検討している日立製作所とパナソニックの両者を比較して、週休3日制の問題点を見てみます。
⑴ 日立の週休3日制 ポイントは「給与維持」
 日立製作所の週休3日制のポイントは「給与を維持する」ということです。「給与維持」と言われればありがたいと思ってしまいますが、週休3日制になっても労働時間は変わらないということです。つまり休日が週に1日増えた分、それだけ他の曜日に働かなければなりません。
 これは自分の裁量で働きたい労働者にとっては需要が大きい制度で、給料が変わらないために自分の予定に合わせて働く時間を調整できるというメリットがあります。
 しかし、毎週週休3日を確保しようとすれば、他の曜日には平均10時間働かなければならなくなり、体力や時間の余裕がなければ続けることが難しくなります。
 この制度は、選択的週休3日制とは異なり、週休3日制というコースが用意されているのではなく、自分の働き方を自己管理する中で週休3日にもできるというものです。
 育児・介護や副業、学び直しなどのために余裕のあるプライベート時間を確保したい人のニーズには必ずしも合致していません。
⑵ パナソニックの週休3日制 ポイントは「1日の労働時間は維持」
 パナソニックの週休3日制のポイントは、「1日の労働時間を維持する」というものであり、休日が1日増える分、月間や年間の総労働時間は減少します。従ってそれに伴い給与は減少します。週の労働時間が5日から4日に変わるので、給与が約2割減少するということになります。
 パナソニックは、週休3日制導入の意図について、社外副業や地域ボランティア、自己学習などに挑戦する時間の創出と説明しています。余裕のあるプライベート時間を確保できるというのがメリットです。
 しかし、給与や・評価、昇進への影響がなくならない限り、他の社員よりも総労働時間が減るコースを選ぶ者はそれほどいるとは思えません。
3.塩野義製薬やヤフー、ユニクロは?
 現在、週休3日を選択できる企業ではパナソニックのように「選択的週休3日制」の制度を設けているところが多いのです。その代表が塩野義製薬、ヤフーです。これらの企業も総労働時間を減ら須縄に比例して給与も減らして対応しています。
 一方で、日立製作所のように給与を変えず他の日に多く働くことで週休3日を選べる制度を導入した企業もあります。その代表は佐川急便とファーストリテイリング(ユニクロ)です。
 「労働者の理想は」と言えば、「給与は維持し、総労働時間は減る」という形式でしょうが、このような制度を導入しているのは、一部ベンチャー企業に限られています。
 週休3日制には、企業ごとの働き方改革の方向性が表れています。今後週休3日制の導入によってどのように変わっていくのか、今後どのような制度を導入する企業が増えるのかを見極めながら、中小企業も必要に応じて導入していけばいいと思います。世間の流れだからと安易に飛びつくと自分の首を絞めかねません。
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