中小企業経営のための情報発信ブログ16:輝かしい失敗研究所

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ビジネス・マーケティング
今日もブログをご覧いただきありがとうございます。
今日は、経営理論や戦略の話はやめて、「失敗」について書いていきます。
失敗に関しては、経営学者の野中郁次郎氏らが歴史学者と共に著者に名を連ねる「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」(文春文庫)という名著があります。この本は日本軍の組織論的研究を通して、『会社組織の経営に必要な戒めを学べる指南書』として、多くの経営者に読まれています。
今日は、日本軍の失敗という歴史から学ぶというのではなく(これについては後日書く機会もあるかと思います)、オランダにある「輝かしい失敗研究所」を取り上げます。
現在は変化のスピードが速く、かつ複雑になってきています。経済や政治、あらゆる場面で、大きな変革が起き、予想もつかない出来事が次から次へと起こっています。このような目まぐるしい変化の中で、常に成功するとは限りません。成功体験ばかりを称賛し、失敗を隠そうとする風潮では、成長も発展もあり得ません。むしろ生き残ることすらできません。「失敗は成功につながる学びの宝庫である」とは昔からよく言われることですが、今のように常に変化し続ける環境でこそ、真に生かされる言葉ではないかと思います。
1.輝かしい失敗
 オランダのマーストリヒト大学に「輝かしい失敗研究所」なる機関が存在し、その最高失敗責任者ポール・ルイ・イスケ教授です。冗談ぽい肩書のようにも見えますが、この肩書こそが「失敗を恥ずべきものではなく、ポジティブに、ひたすら前向きにとらえようとする意思」の表れです。このイスケ教授が「失敗の殿堂 経営における『輝かしい失敗』の研究」(東洋経済新聞社)という本を出版しました。
 「輝かしい失敗」は「価値を生み出そうとしたけれど、本来意図した結果が出せなかった試み」であり、「そこから学んだ教訓や学習経験」により「最終的に何らかの価値を生み出す失敗」のことです。
トーマス・エジソンが言う「失敗は成功のもと」の「成功のもと」になる失敗と同じではないかと思います。
 エジソンは次のような言葉を残しています。
・人生に失敗した人の多くは、諦めたときに自分がどれほど成功に近づいていたか気づかなかった人たちだ。
・私は失敗したことがない。ただ、1万通りの、上手くいかない方法を見つけただけだ。
・私は決して失望などしない。どんな失敗も、新たな一歩となるからだ。
・失敗したわけではない。それを誤りだと言ってはいけない。勉強したのだと言いたまえ。
 イスケ教授は、「輝かしい失敗」を次の16の類型に分類しています。
①見えない像・・・全体は部分の総和より大きいのに部分しか見ない
②ブラックスワン・・・予見できない出来事が頻発する
③財布を間違う・・・誰かには好都合だが、他の誰かに負担がかかる
④チョルテカの橋・・・解決すべき問題は1か所にとどまっていない
⑤欠席者のいるテーブル・・・すべての関係者が参加しているとは限らない
⑥熊の毛皮・・・成功する前に結論を急ぎすぎる
⑦電球の発明・・・何をやっているか分かっていれば、それを研究とは言わない。試行錯誤を軽んじる
⑧兵隊のいない将軍・・・アイデアはいいが、ヒト・モノ・カネ・情報・知識等のリソースが不足
⑨捨てられないガラクタ・・・やめる術が分からない
⑩深く刻まれた渓谷・・・染みついた思考・行動パターンから抜け出せない
⑪右脳の功罪・・・合理的根拠のない直感的な判断をしてしまう
⑫バナナの皮で滑る・・・アクシデントが起きる
⑬ポスト・イット・・・失敗したけど、偶然の幸運にも恵まれる
⑭アインシュタイン・ポイント・・・単純化しすぎても、複雑化しすぎてもいけない
⑮アカプルコの断崖ダイバー・・・タイミングを誤ってはいけない
⑯勝者総取りの理・・・生き残れるのは1人しかいない
 イスケ教授が挙げる16の類型が本当に「輝かしい失敗」の類型と言えるのか疑問がないわけではありません。なぜなら、「成功のもと」となる失敗には、少なくとも何がしかの「成功の芽」がなければならないからです。「成功の芽」がない失敗では、いくらもがいても「成功のもと」にはなり得ないのではないかと思います。
2.失敗の2つのタイプ
 イスケ教授は、失敗には2つのタイプがあると言います。
タイプ1・・・意図した結果と違うが依然として価値があり、時には意図した結果を上回ることもある。
タイプ2・・・当初に意図したほどの価値を生み出せなかったが、学習体験が詰める。
3.ビジネスでの失敗
⑴ ユニクロの柳井正氏の「一勝九敗」
 柳井氏は、著書「一勝九敗」の中で、「経営は試行錯誤の連続で、失敗談は限りなくある」「十回新しいことを始めれば九回は失敗する」と言っています。これが本の題名にもなっています。
 「失敗からの立ち直り」と題した一節では「問題は、失敗と判断したときに『すぐに撤退』できるかどうかだ」「儲からないと判断したら、撤退もスピードが大事」と言っています。
 エジソンは、「私たちの弱点は諦めることにある。成功するのに最も確実な方法は、常にもう一回だけ試してみることだ」と言います。
 エジソンが言うように、諦めず、軌道修正しながら再度チャレンジすることも重要ですし、柳井氏が言うように「すぐに撤退する」という判断もあり得ます。いずれにせよ、再チャレンジか撤退かは、経営者の判断であり、経営者の「即断即決、即実行」という姿勢が大切になってきます。
⑵ セブン&アイホールディングの鈴木敏文氏
 イスケ教授は、社員が失敗から学習できる「環境」を特に重視し、「安心して失敗できる場を作る」ことを奨励しています。
 セブン&アイホールディングの前会長兼CEOの鈴木敏文氏は、社員に対し、徹底して新しいことへの挑戦を求める厳しい経営者でした。新しいことに挑戦する限り、失敗はつきものです。鈴木氏は「どれだけ失敗しても、店がつぶれても構いません。ただ全力で新しいことに挑戦してください」と言っていました。また、セブン銀行設立プロジェクトでは「失敗してもいいじゃないか。失敗も勉強のうちだよ」と言っています。
 こうした経営者の発言によって、いずれも、担当者たちはプレッシャーから解放され、思い存分、能力を発揮し輝かしい成功へを導いたのです。
 エジソンは、「私は失敗したことがない。ただ、1万通りの上手くいかない方法を見つけただけだ」「私は決して失望などしない。どんな失敗の、新たな一歩となるからだ」と言います。鈴木氏の姿勢は、エジソンのこれらの言葉と合致しているように思います。
⑶ 稲盛和夫氏の失敗観
 自分の会社は輝かしい失敗が生まれる組織風土になっているか、イスケ教授は、次の3つの評価項目を挙げています。
実験・・・意思決定と行動において、リスクを取る自由度はどこまであるか
学習・・・成功と失敗の両方から学んでいるか
進化・・・どのくらい学習経験が生かされ、新しい洞察を踏まえてアプローチが変わったか
 中でも、失敗により習得した知識を活かし、より高レベルへと達するスパイラル上の成長を重視しています。
 「仕事で失敗した時にどうしたらいいか」という質問に対し、鈴木氏は「失敗したことは早く忘れろ。忘れて仕切り直せ」と言い、稲盛氏は「失敗しないために漠然と無意注意ではなく、目的を持って意識や神経を対象に集中させる有意注意」と言っています。
 仕事の失敗は誰もそう簡単に忘れることはできません。ただ、失敗したことを気にしてこだわっている限り、先へは進めません。だから、早く忘れて、次の挑戦へと一歩踏み出さなければなりません。挑戦していけば、前回の失敗がプラスに活かされてきます。無意注意ではなく、「今度はこれを目指してやっていこう」と目的をもって意識や神経を集中させる有意注意で臨めるようになるのです。これが稲盛氏の失敗観です。
実験→学習→進化』のプロセスが埋め込まれているかどうか。『愚かな失敗』で終わるか、『輝かしい失敗』が生まれるかどうかは、イスケ教授が言うように、多分に組織風土によります。
失敗を「愚かな失敗」で終わらせず「輝かしい失敗」へと高め「成功のもと」となるような組織風土、組織文化の醸成が重要です。 
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