戸籍を見て、「特に何もなかった」と感じたとき
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戸籍を一通り見終えたあと、
こんな言葉を聞くことがあります。
「特に、何もなかったですね。」
有名な先祖が出てきたわけでもない。
大きな事件や、劇的な出来事が書かれているわけでもない。
けれど私は、
この言葉を聞くたびに、
「それは違います」と言いたくなるのを、
ぐっとこらえています。
戸籍調査の目的は、実は二つあります
戸籍調査の目的は、
実は一つではありません。
ひとつは、
できるだけ古い戸籍まで遡り、
明治19年式戸籍から分かる先祖を突き止めること。
これが、
多くの方がイメージする
「先祖調査」です。
けれど、
もう一つ、とても大切な目的があります。
それが、
戸籍で追える最古の本籍地を特定することです。
本籍地は、「暮らしの痕跡」です
本籍地というと、
今の住所と違っていても問題ありません。
理屈の上では、
皇居でも、
東京ディズニーランドでも、
どこに置いても構わない。
実際に本籍地にしている方もいるようです。
けれど、
江戸時代において、
本籍地は、ほぼそのまま住所地として機能していました。
自由に引っ越せる時代ではなく、
土地と人は、
強く結びついていたのです。
つまり——
戸籍で追える最古の本籍地が分かれば、
その土地の状況から、
先祖の暮らしを垣間見ることができる。
ということです。
「特に何もなかった」のではありません。
むしろ、
ここから調べ尽くせる入口に立った
という状態なのです。
戸籍調査は、「本格調査」のスタート地点
私は、
戸籍調査を
「ゴール」だとは考えていません。
むしろ、
本格的な先祖調査の、基礎の基礎。
ここから始まるものだと感じています。
土地を調べる。
地名の変遷を見る。
村の成り立ちを知る。
そうして初めて、
先祖が生きていた世界が、
少しずつ立ち上がってきます。
それこそが、
ルーツの旅の入り口です。
「ここで終えてもいい」と感じるタイミング
では、
どこで一区切りをつけるのか。
ひとつの目安は、
明治19年式戸籍が取得できたときです。
それ以前の
明治5年式戸籍(壬申戸籍)は、
身分に関する記載も多く、
現在は閲覧が制限されています。
役所から
「これ以上は遡れません」
と言われたとき。
あるいは、
依頼者ご本人が
「ここまで分かれば十分です」
と納得されたとき。
そこが、
ひとつの区切りになります。
それでも「もう一歩」を望まれたとき
一方で、
「どんな形でもいいから、
あと一つ、遡りたい」
そう感じる方も、
少なくありません。
そんなときには、
・廃棄証明書の取得
といった選択肢をお伝えします。
これは、
無理に深掘りするためではありません。
「ここまでしか取れなかった」
という事実を、
きちんと形として残すためです。
曖昧なまま終えるより、
納得感を持って一区切りをつける。
それも、
大切な調査の成果だと思っています。
戸籍調査は、「何もなかった」で終わらない
戸籍を見て、
何もなかったと感じる。
それは、
失敗ではありません。
むしろ、
先祖と土地に向き合う準備が整った
というサインです。
戸籍調査は、
終わりではなく、
始まりです。
どこから来て、
どこで生き、
どんな土地に暮らしていたのか。
その入口に立ったということ自体が、
すでに、大きな一歩なのだと思います。
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