親の住まい、いつ見直すべきか?

親の住まい、いつ見直すべきか?

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「親はずっとこの家で暮らしたいと言っている。」

親の介護準備について話していると、このような言葉をよく耳にします。

長年暮らしてきた家。
近所には顔なじみがいる。
思い出もたくさんある。
買い物する店も、病院も分かっている。

できるだけ住み慣れた家で暮らし続けたい。

そう思うのは、とても自然なことです。

しかし、ここで考えておきたいことがあります。

それは、「今住めていること」と「これからも安全に住み続けられること」は同じではないということです。

若い頃には何ともなかった階段が危険になる。

駅まで歩けなくなる。

車を運転できなくなる。

庭の手入れができなくなる。

買い物や通院が負担になる。

配偶者が亡くなり、一人暮らしになる。

認知症が進み、生活管理が難しくなる。

親の身体や認知機能が変われば、同じ家でも暮らしやすさは変わります。

だから親の住まいは、「暮らせなくなってから考える」のではなく、「まだ暮らせているうちに、この先も暮らせるかを考える」ことが大切です。

住まいの見直しは「施設に入れる話」ではない

住まいの話を親にすると、「老人ホームに入れたいのか?」と受け取られてしまうことがあります。

そのため、子ども側も話を切り出しにくくなります。

でも、住まいを見直すことは、必ずしも施設入居を意味しません。

今の家を安全にする。

手すりをつける。

寝室を二階から一階へ移す。

訪問介護や配食サービスを利用する。

見守りサービスを導入する。

駅や病院に近い場所へ住み替える。

子どもの近くへ引っ越す。

高齢者向け住宅を検討する。

介護施設を候補に入れる。

住まいには、いくつもの選択肢があります。

大切なのは、「自宅か施設か?」という二択にしないことです。

今の親の状態に合わせて、住み方を少しずつ変えていくという考え方を持っておくことが大切です。

最初の見直しサインは「家の中」に出る

親の住まいを見直すタイミングは、年齢だけでは決まりません。

70歳になったから住み替える。

80歳になったから施設へ入る。

というものではありません。

むしろ注目したいのは、生活の変化です。

たとえば、

階段の上り下りがつらそうになった。

家の中でつまずくことが増えた。

浴槽から立ち上がるのが大変になった。

夜中にトイレへ行くのが危なくなった。

玄関の段差が怖くなった。

二階をほとんど使わなくなった。

このような変化が出てきたら、住まいを見直す一つのサインです。

今まで普通に使っていた家が、少しずつ親の身体に合わなくなってきている可能性があります。

転倒してからではなく「転びそう」で考える

高齢期の住まいで特に注意したいのが、転倒です。

「一度転んでから手すりを付けよう。」ではなく、

「最近、歩く時に壁や家具につかまっている。」

「階段を降りる時に怖そう。」

「夜中のトイレで足元が危ない。」

という段階で考える方がよいでしょう。

介護準備で大切なのは、「事故が起きた後に対応する」のではなく、「事故が起こりそうなサインを拾うこと」です。

家の中を親と一緒に歩いてみると、

玄関。

廊下。

階段。

トイレ。

浴室。

寝室。

など、意外な場所に危険が見つかることがあります。

親本人は毎日暮らしているため、危険に慣れてしまっていることもあります。

子どもが久しぶりに実家へ帰った時こそ、「前より歩きにくそうではないか?」という視点で家の中を見ることが大切です。

「二階へ行かなくなった」は小さくない変化


実家へ帰った時、「最近、お父さん二階に行っていないな。」と感じることはないでしょうか。

これは、小さな変化に見えて、重要なサインになることがあります。

階段がつらくなった。

物を取りに行くのが面倒になった。

転ぶのが怖い。

息切れする。

こうした理由から、生活範囲が少しずつ狭くなっている可能性があります。

二階に寝室がある場合には、一階へ移す。

日常的に使う衣類や物を一階へ集める。

生活動線を短くする。

このような工夫だけでも、自宅で暮らせる期間を延ばせることがあります。

住まいの見直しは、大規模なリフォームや引っ越しから始める必要はありません。

「親の生活範囲に家を合わせていく」ことも立派な住まいの見直しです。

運転免許返納が「住めない家」を生むことがある

郊外や地方で暮らす親の場合、もう一つ重要なのが車です。

今は、

車でスーパーへ行く。

車で病院へ行く。

車で銀行へ行く。

車で友人に会いに行く。

という生活が成り立っているかもしれません。

しかし、将来運転をやめた時、その家で同じ生活を続けられるでしょうか?

スーパーまで徒歩30分。

最寄り駅まで遠い。

バスは1時間に1本。

病院へ行くにも車が必要。

こうした地域では、「運転できなくなることが、今のままの生活できなくなることにつながる。」場合があります。

住まいを考える時は、「今ここで暮らせるか?」だけでなく、「車を使えなくなっても暮らせるか?」という視点も必要です。

一人暮らしになった時、家の意味は変わる

夫婦二人で暮らしている間は問題がなくても、どちらか一人になった途端に生活が難しくなることがあります。

夫が車を運転していた。

妻が食事や薬を管理していた。

お互いに体調の変化に気づいていた。

何かあれば救急車を呼べた。

このように、高齢夫婦は知らず知らずのうちに、お互いを支えながら暮らしています。

どちらかが入院したり亡くなったりすると、その支えが突然なくなります。

残された親が、

一人で食事を用意できるか?

薬を管理できるか?

買い物へ行けるか?

ゴミを出せるか?

緊急時に助けを呼べるか?

こうしたことを見直す必要があります。

つまり、「夫婦なら暮らせる家」と「一人でも暮らせる家」は違うのです。

認知症が始まると「家に住めるか?」の基準も変わる

身体が元気だから、自宅で暮らせる。

必ずしもそうとは限りません。

認知症が進むと、

薬を飲み忘れる。

火を消したか分からなくなる。

同じ物を何度も買う。

訪問販売などの契約をしてしまう。

ゴミ出しができなくなる。

外出して帰れなくなる。

といった問題が起こることがあります。

身体的には歩けても、生活全体を安全に管理することが難しくなる場合があります。

だから住まいを考える時には、身体能力だけでなく、「一人で安全に生活を管理できているか?」見る必要があります。

家そのものの管理が負担になっていないか?

高齢になると、人の身体だけでなく、家も年を取ります。

屋根。

外壁。

給湯器。

エアコン。

水回り。

庭。

雨どい。

防犯設備。

戸建て住宅では、維持管理にも手間とお金がかかります。

以前なら自分でできた草むしりや掃除ができなくなる。

高い場所の電球を替えられない。

業者を呼ぶ判断が難しくなる。

修理の金額が適正なのか分からない。

家を所有していること自体が、親にとって負担になることがあります。

「持ち家だから住居費はかからない」

と思いがちですが、古くなった住宅には修繕費や固定資産税、維持管理費もかかります。

住まいを見直す時は、「住み慣れているかだけでなく、維持し続けられるか?」も考える必要があります。

実家が広すぎることも負担になる

子どもが独立した後も、親が家族4人、5人で暮らしていた家に、そのまま住んでいるケースがあります。

使っているのは一階の数部屋だけ。

二階は物置。

庭の手入れも大変。

掃除する場所も多い。

それでも、

「せっかく建てた家だから」

「子どもが帰ってくるから」

と住み続けている。

もちろん、その選択が悪いわけではありません。

しかし、「今の親の生活に、その家の大きさが本当に合っているか?」は一度考えてみてもよいでしょう。

小さくて管理しやすい家へ住み替えることで、生活が楽になる場合もあります。

子どもの家から遠すぎないかも考える

親が元気な時には、実家との距離をあまり意識しないかもしれません。

しかし介護が始まると、距離の意味が変わります。

片道2時間。

新幹線や飛行機が必要。

車でしか行けない。

こうした距離を何度も往復するようになると、子ども世代の負担は急激に大きくなります。

交通費だけではありません。

往復時間。

仕事の調整。

宿泊。

自分の家族との時間。

ワーキングケアラーにとって、遠距離介護は生活全体に影響します。

だからこそ、

親が元気なうちに、「もし介護が必要になったら、この距離で本当に対応できるのか?」を考えておくことが大切です。

子どもの近くへ住めばすべて解決するわけではない


では、親を子どもの近くへ呼び寄せればよいのでしょうか?

これも簡単ではありません。

親にとって引っ越しは、

友人との別れ。

かかりつけ医の変更。

買い物環境の変化。

地域とのつながりの喪失。

生活習慣の変化。

を意味します。

高齢になってからの環境変化が、大きなストレスになることもあります。

そのため、心配だから近くに来て」と子どもの都合だけで決めるのではなく、
親本人が何を大切にしているのかを聞く必要があります。

近居という方法もあります。

同居するのではなく、歩いて行ける範囲や車で数十分程度の場所で暮らす。

親の自立を保ちながら、緊急時には家族が動きやすくする方法です。

住まいの選択肢は、同居か遠距離かだけではありません。

元気なうちだから住み替えを選べる

住み替えについて考える時、非常に大切なことがあります。

それは、「本当に動けなくなってからでは、本人が選びにくくなる。」ということです。

認知症が進んだ。

突然入院した。

歩けなくなった。

退院期限が迫っている。

この状態で施設や住まいを探すと、

空いているところ。

すぐ入れるところ。

家族が何とか手続きを進められるところ。

から選ぶことになりやすくなります。

一方、元気なうちなら、

場所を見に行く。

食事を確認する。

周辺を歩く。

費用を比較する。

本人が気に入るか考える。

ということができます。

つまり、「早く考えるということは、早く家を出るということ」ではありません。

将来の選択肢を多く持っておくということです。

「今の家に住み続ける」ことも立派な選択肢

住まいを見直した結果、「やはりこの家で暮らしたい。」という結論になることもあります。

それで構いません。

大切なのは、何も考えずに住み続けることと、リスクを確認したうえで住み続けることは違うということです。

自宅で暮らし続けるなら、

手すり。

段差。

寝室。

浴室。

トイレ。

見守り。

食事。

買い物。

通院。

緊急連絡。

介護サービス。

こうした環境を少しずつ整えていきます。

「自宅で暮らしたい」という親の希望をかなえるためにも、実は早めの準備が必要なのです。

施設探しは「入ると決めてから」では遅いことがある

施設について調べることを、「親を施設に入れることを決める行為」だと思う必要はありません。

どんな施設があるのか?

どのくらい費用がかかるのか?

どの程度の介護状態から入れるのか?

自宅からどのくらい離れているのか?

医療対応はどこまで可能なのか?

こうした情報を知っておくだけでも意味があります。

いざ必要になってから初めて調べると、家族は非常に慌てます。

だからこそ、「施設探しは入居の決断ではなく、将来の選択肢を調べる作業」
として考えてみてください。

親への切り出し方は「どこに住みたい?」ではなく「困ることはない?」

いきなり親に、

「将来、施設に入る?」

「この家を売る?」

と聞けば、拒否される可能性があります。

そこで、もっと身近な話から始めます。

「最近、階段大変じゃない?」

「買い物は困っていない?」

「車を運転しなくなったら、病院はどうやって行く?」

「庭の手入れ、大変じゃない?」

「もし一人になったら、この家で暮らせそう?」

こうした会話から始めると、親自身も生活の課題に気づきやすくなります。

住まいの話は、「家をどうするかではなく、これからどう暮らしたいか?」
という話なのです。

住まいを見直す7つのサイン

親の住まいについて、次のような変化が出てきたら、一度家族で話すタイミングかもしれません。

1.家の中で転びそうになることが増えた

2.階段や浴室の利用がつらくなった

3.買い物や通院に車が欠かせない

4.一人暮らしになった、またはその可能性が高くなった

5.認知症や物忘れによる安全面の不安が出てきた

6.掃除、庭、修繕など家の維持が負担になってきた

7.子どもが遠方に住み、緊急時の対応が難しい

一つ当てはまったから、すぐ住み替えなければならないということではありません。

重要なのは、「サインが増えてきた時に、何も考えず放置しないこと」です。

今やっておきたいことは3つ

一つ目は、実家の中を「高齢者の目」で一度見てみることです。
玄関、階段、廊下、浴室、トイレ、寝室などを確認し、親が無理をしている場所がないか見てみます。

二つ目は、車がなくても暮らせるかを考えることです。
スーパー、病院、銀行、駅、バス停などへの移動手段を確認しておきます。

三つ目は、親に「これからどこで暮らしたいか」を少しずつ聞いておくことです

すぐ答えを出す必要はありません。

自宅。

住み替え。

子どもの近く。

高齢者向け住宅。

介護施設。

どんな選択肢があるのかを、親が元気なうちから一緒に考えておきます。

住まいを見直すタイミングは「住めなくなった時」ではない


親の住まい、いつ見直すべきか?

私は、「まだ大丈夫だけれど、少し不便が増えてきた時」が一つの大切なタイミングだと思います。

転んでから。

入院してから。

認知症が進んでから。

一人で暮らせなくなってから。

では、選べるものが少なくなってしまいます。

親が元気で、自分の希望を話せるうちなら、

今の家を安全にする。

生活動線を変える。

サービスを使う。

住み替える。

子どもの近くへ移る。

将来の施設を調べておく。

いくつもの選択肢を比較できます。

住まいの見直しとは、親を家から出すための準備ではありません。
「親ができるだけ長く、自分らしく、安全に暮らすための準備」
です。

そして子ども世代にとっても、突然の介護で、「明日からどうする?」
と慌てないための人生防衛になります。

だからこそ、「まだ元気だから住まいの話は早い。」ではなく、「まだ元気だからこそ、一緒に考えられる。」という視点を持ってみてください。

親の介護準備、終活はお早めに!!
ご相談はお気軽に!!

次回(第40話)では、「施設選びで見落としやすい7つの比較ポイント」というテーマで、料金や立地だけでは分からない、親に合った施設を選ぶために家族が確認しておきたいポイントを具体的に整理していきます。

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