相続でもめる前に、介護分担でもめる家が多い理由

相続でもめる前に、介護分担でもめる家が多い理由

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「うちは、兄弟仲がいいから大丈夫」

親が元気なうちは、そう思っている家庭も多いのではないでしょうか?

ところが、親の介護が始まると、それまで表面化していなかった家族間の不満が少しずつ出てくることがあります。

「なぜ私ばかり実家に行っているの?」
「兄は何もしてくれない。」
「妹は口は出すのに、実際には動かない。」
「介護費用をずっと私が立て替えている。」
「こちらにも仕事や家庭があるのに...。」

こうした不満が積み重なっていくと、やがて介護そのものより、兄弟関係の方がつらくなることがあります。

相続でもめる家庭はよく知られています。

しかし実際には、その前段階にある介護で、

誰が動いたのか?
誰がお金を出したのか?
誰が仕事を休んだのか?
誰が親の不安を受け止め続けたのか?

という感情が積み上がっていることがあります。

つまり、相続の場面で突然もめたように見えても、その火種は何年も前の介護中から始まっていることがあるのです。

介護分担でもめる最大の理由は「負担が見えない」こと

介護の難しいところは、負担を数字だけで測れないことです。

たとえば、長女が週に2回実家へ通っているとします。

往復2時間。
病院への付き添い。
薬の確認。
買い物。
ケアマネジャーとの連絡。
親からの電話対応。
施設探し。
役所への手続き。

一つひとつを見ると、それほど大きな作業に見えないかもしれません。

しかし、それが毎週、毎月、何年も続けば、相当な負担になります。

一方、遠方に住む兄から見ると、

「介護サービスを使っているのだから、そこまで大変ではないだろう」

と思っていることもあります。

この認識の差が、不満を生みます。

介護でもめる大きな原因の一つは、「介護をしている人にしか見えない負担が多すぎること」なのです。

「近くに住んでいる人」に介護が集中しやすい

介護が始まった時、最初に動くのは誰でしょうか?

多くの場合、

親の近くに住んでいる人。
連絡が取りやすい人。
比較的仕事を調整しやすい人。
親から頼られやすい人。

に負担が集中しやすくなります。

最初は、「近いから私が行くよ」という善意から始まります。

ところが、それが何度か続くと、

「今回もお願い」

になり、

やがて、

「あなたがやるのが当然」

という空気に変わってしまうことがあります。

介護で注意したいのは、「一度できた役割が、そのまま固定化されやすいこと」です。

最初の数回だからできたことが、数年間続けられるとは限りません。

親の近くに住んでいるというだけで、その人が介護の責任者になる必要はないのです。

長男・長女・ひとりっ子ほど「自分がやらなければ」と思いやすい

親世代の価値観によっては、

「長男なのだから」
「娘なのだから」
「あなたが一番近くにいるのだから」

と、特定の子どもに期待が集まることがあります。

特に長男・長女やひとりっ子は、

「自分がやらなければ」

と思いやすい傾向があります。

責任感が強い人ほど、家族へ相談する前に自分で抱えてしまいます。

その結果、

仕事を休む。
有休を使う。
残業を減らす。
出張を断る。
昇進や異動をためらう。

ということが少しずつ増えていきます。

介護の負担は、単なる「手伝いの回数」だけではありません。

ワーキングケアラーの場合には、「自分のキャリアや収入まで影響を受ける可能性がある」ということも、家族で理解しておく必要があります。

「私は忙しい」が介護をしなくていい理由になってしまう

兄弟で話をすると、

「仕事が忙しいから難しい。」
「子どもがまだ小さいから無理。」
「遠方だから頻繁には帰れない。」

という話が出ることがあります。

もちろん、それぞれに事情があります。

問題なのは、

「できない理由」がある人は介護から外れ、
「できる人」に全部集まってしまうことです。

介護分担は、全員が同じことをする必要はありません。

遠距離で実家へ頻繁に行けないのであれば、

介護費用の一部を負担する。
施設を調べる。
役所や制度について情報収集する。
親へ定期的に電話する。
オンラインで家族会議に参加する。
介護している兄弟の話を聞く。

という役割もあります。

大切なのは、「自分は何ができないか?」ではなく、「自分なら何ができるか?」を考えることです。

介護は「身体介護」だけではない

介護分担について話すと、

「誰が親の世話をするのか?」

という話になりがちです。

しかし、介護にはさまざまな役割があります。

通院同行。
買い物。
食事の準備。
服薬確認。
ケアマネジャーとの連絡。
介護サービスの調整。
施設探し。
役所への申請。
銀行や保険会社の手続き。
介護費用の管理。
親からの電話対応。
緊急時の連絡。

さらに見落とされやすいのが、「考える介護」です。

この施設でよいのか?
在宅を続けるのか?
病院を変えるのか?
介護サービスを増やすのか?
親の希望をどこまで優先するのか?

こうした判断を一人で背負うことも、大きな精神的負担です。

実際に身体介護をしていなくても、介護全体を調整している人には相当な負担がかかっています。

一番もめやすいのは「私はこれだけやっているのに...。」


介護を続けている人の不満が大きくなる瞬間があります。

それは、「私はこんなにやっているのに、他の兄弟は分かってくれない」と感じた時です。

介護そのものが大変でも、

「ありがとう。」
「いつも助かっている。」
「今月は私が代わるよ。」

といった言葉があれば、気持ちが救われることがあります。

反対に、「親なんだから、それくらいやるのは当然でしょう。」と言われれば、不満は一気に大きくなります。

介護分担では、作業を分けることだけでなく、「介護を担っている人の負担を家族が認識すること」が非常に重要です。

お金の立て替えが、後から大きな火種になる

介護でもめやすいもう一つの問題が、お金です。

病院の支払い。
おむつ。
介護用品。
交通費。
タクシー代。
施設への入居準備。
実家の修理。
食料品や日用品。

一つひとつは数千円でも、それが何年も続けば大きな金額になります。

特に危険なのは、「とりあえず私が払っておく」という状態が続くことです。

介護中は忙しいので、領収書を整理せず、そのままになることがあります。

そして数年後、「私はこれだけ立て替えた」と言っても、他の兄弟から、

「そんなに使ったの?」
「何に使ったの?」
「親のお金から払えなかったの?」

と言われる。

ここから、不信感が生まれます。

介護費用は、できるだけ親本人の財産から支払うことを基本にし、家族が立て替えた場合は、

日付。
金額。
用途。
誰が払ったか。

を残しておくことが大切です。

「介護した人」と「お金を出した人」は同じとは限らない


介護分担を考える時に大切なのは、「全員が同じ方法で負担する必要はない」ということです。

近くに住む姉が親の通院を担当する。

遠方に住む弟が介護費用の一部を負担する。

別の兄弟が、施設探しや行政手続きを担当する。

このような分担でも構いません。

重要なのは、全員が完全に同じ負担をすることではなく、

「私はこれを担当する。」
「あなたにはこれをお願いする。」

と役割を見えるようにすることです。

介護分担で目指すべきなのは、「平等ではなく、家族が納得できる公平さ」なのだと思います。

「一番介護した人」が相続で報われるとは限らない

介護を長く担った人の中には、「これだけ介護したのだから、相続では少し考えてもらえるだろう。」と思う人もいます。

しかし、介護をしたからといって、その負担がそのまま相続財産の分け方に反映されるとは限りません。

一定の条件で「寄与分」などが問題になる場合はありますが、「親の面倒を見たから自動的に多く相続できる。」という単純な仕組みではありません。

ここに大きなギャップがあります。

介護をほとんどしなかった兄弟と、何年も介護してきた人が、相続の場面では同じように権利を持つことがあります。

すると、

「介護の時は何もしなかったのに、相続になったら同じなの?」

という感情が生まれます。

相続争いに見えても、その本当の原因は、お金そのものではなく、「介護中に感じていた不公平感」ということがあるのです。

 親自身の言葉が、兄弟関係を悪くすることもある

もう一つ注意したいのが、親自身の言葉です。

介護している娘には、

「いつもありがとう。」

と言いながら、別の息子には、

「お姉ちゃんは何もしてくれない。」

と言ってしまう。

認知症や不安が強くなっている場合には、本人に悪気がなくても、その時の感情によって話す内容が変わることがあります。

それを家族がそのまま受け取ると、

「姉は親を放っているらしい」
「弟は何も知らないのに口を出してくる」

という誤解につながることがあります。

だからこそ、介護の情報は親からの話だけではなく、兄弟同士でも共有することが大切です。

介護が始まる前に家族会議をしておく

介護分担でもめないために最も有効なのは、「大変になってから初めて話し合わないこと」です。

親がまだ比較的元気な段階で、「もし介護が必要になったら、誰が何をできそうか?」を話しておきます。

たとえば、

通院同行は誰ができそうか?

緊急時に最初に駆けつけられるのは誰か?

遠方の兄弟は何を担当できるか?

介護費用は基本的に誰のお金から支払うのか?

家族が立て替えた場合はどう精算するのか?

連絡は誰を中心にするのか?

こうしたことを決めておくだけでも、介護開始後の混乱はかなり減ります。

もちろん、その時の状況によって役割は変えて構いません。

重要なのは、「誰か一人がやるもの」にしないこと」です。

家族会議では「できること・できないこと」を言葉にする

介護について話し合う時は、無理な約束をしないことも大切です。

「全部私がやる」

と言ってしまうと、後で苦しくなります。

それより、

「平日の通院同行は難しい。」
「月に1回なら実家へ行ける。」
「お金の管理なら担当できる。」
「施設探しならオンラインでできる。」

と、具体的に伝えた方が分担しやすくなります。

家族だからこそ、「これくらい分かってくれるだろう」と思ってしまいます。

でも介護では、言葉にしなければ分からないことがたくさんあります。

できること。

できないこと。

お願いしたいこと。

この3つを言葉にすることが、介護分担の第一歩です。

介護分担は一度決めたら終わりではない


介護は、親の状態によって変化します。

最初は月に1回の通院同行だけだった。

その後、買い物支援が必要になった。

さらに認知症が進み、毎日の見守りが必要になった。

施設入所を検討するようになった。

このように負担は変化していきます。

だから介護分担も、一度決めたら終わりではありません。

「今の分担で無理が出ていないか?」を定期的に確認する必要があります。

特に、中心になっている介護者が、

「大丈夫」

と言っていても、本当に大丈夫とは限りません。

責任感の強い人ほど、限界になるまで助けを求めないことがあります。

家族側から、

「仕事は大丈夫?」
「何か代われることはない?」
「今の分担を変えた方がよくない?」

と確認することも大切です。

今やっておきたいことは3つ


一つ目は、介護で必要になりそうな役割を書き出すことです。
通院、買い物、行政手続き、施設探し、お金の管理、親への連絡など、介護を「一つの仕事」と考えず細かく分けてみます。

二つ目は、兄弟それぞれが「何ならできるか?」を確認することです。
距離、仕事、家庭事情が違う以上、全員が同じことをする必要はありません。

近くに住む人は現地対応。
遠方の人は情報収集や費用負担。

このように、それぞれができる形を考えます。

三つ目は、お金と立て替えのルールを決めておくことです。
介護費用は誰のお金から支払うのか?
家族が立て替えた場合は、どのように記録し、精算するのか?

ここを曖昧にしないことが、後のトラブル防止につながります。

相続でもめないためにも、介護中の納得感を大切にする


相続でもめる前に、介護分担でもめる家がある。

その理由は、単純です。

介護では、

時間を使う人。
お金を出す人。
仕事を休む人。
親から頼られる人。
判断を背負う人。

が必ずしも同じではありません。

その違いが見えないまま何年も続くと、「自分ばかり」という思いが積み重なります。

そして親が亡くなり、相続の話になった時、それまで抑えていた感情が一気に表面化することがあります。

だからこそ、相続対策は遺言や財産の分け方だけではありません。

親が生きている間の介護を、家族でどう支えるかを話しておくことも、大切な相続対策の一つだと思います。

完璧に平等な介護分担はできません。

住んでいる場所も、仕事も、家庭環境も違うからです。

だから目指すべきなのは、完全な平等ではなく、

「それぞれ事情は違うけれど、みんなができる範囲で関わっている」と家族が納得できる状態です。

親の介護を誰か一人の問題にしない。

負担を見えるようにする。

お金も記録する。

そして、ときどき家族で話し直す。

この小さな積み重ねが、親を支えるだけでなく、介護が終わった後の兄弟関係を守ることにもつながります。

親も子も笑顔の終活を実現するために最も大切なことは、
・親子のコミュニケーション
・兄弟間のコミュニケーション
だできていることです。

早め早めの準備をお勧めします。
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