親のお金の情報を知らない家族ほど後で困る

親のお金の情報を知らない家族ほど後で困る

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親の介護準備というと、通院、薬、介護保険、施設探しなどを思い浮かべる方が多いと思います。

もちろん、それらはとても大切です。
でも実際に介護が始まった時、家族がかなり困りやすいのが、『親のお金の情報が分からないこと』です。

どこの銀行に口座があるのか?
年金はどこに入っているのか?
生命保険や医療保険に入っているのか?
介護費用は親のお金で払えるのか?
通帳、印鑑、キャッシュカード、保険証券はどこにあるのか?

こうした情報が分からないまま介護が始まると、家族はかなり苦しくなります。

なぜなら、介護は気持ちだけでは支えられないからです。
どうしてもお金の確認と支払いが必要になります。

第31話では、介護費用は平均だけで見ても、一時費用と月々の費用を合わせると数百万円規模になり得ることをお伝えしました。

しかも実際には、施設費、医療費、交通費、家族側の減収なども重なり、平均以上に重く感じる家庭は少なくありません。

だからこそ、親のお金の情報は、介護が始まってから探すものではなく、『親が元気なうちに、最低限だけでも共有しておくもの』です。

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お金の話は「財産を狙う話」ではない

まず大事なのは、『親のお金を知ることと、親のお金を奪うことはまったく違う』ということです。

ここを誤解すると、親も子どもも話しづらくなります。

親からすると、
「お金のことを聞かれると、財産を狙われているようで嫌だ。」
「まだ自分で管理できるのに、子どもに口出しされたくない。」
と感じることがあります。

子ども世代も、
「お金の話をすると失礼ではないか」
「相続の話みたいで切り出しにくい」
と感じがちです。

でも、介護準備として必要なのは、親の財産を細かく把握して管理することではありません。

最初に必要なのは、『何か起きた時に、どこに何があるか分かる状態にしておくこと』です。

これは親の財産を奪う話ではなく、親のお金を親のために使えるようにしておく準備です。

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最初に困るのは、入院費や介護費用の支払い

親のお金の情報が分からないと、最初に困るのは『入院や介護費用の支払い』です。

たとえば、親が転倒して入院した。
退院後に介護ベッドや手すりが必要になった。
通院付き添いが増えた。
施設を検討することになった。

この時、親のお金の情報が分かっていれば、親の年金、預貯金、保険、介護費用の支払い方を確認しながら動けます。

でも何も分からないと、家族はまず探すところから始めなければなりません。

どこの銀行か分からない。
通帳が見つからない。
キャッシュカードの暗証番号も分からない。
保険に入っているかどうかも分からない。

そうなると、目の前の支払いを、いったん子ども世代が立て替えることになりやすい。

この立て替えが短期間ならまだしも、数か月単位で続くと、子ども世代の家計にもかなり響いてきます。

特に45歳から50代は、自分の住宅ローン、教育費、老後資金づくりも重なる時期です。

そこに親の介護費用まで一時的に乗ってくると、家計の余裕は一気に薄くなります。

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認知症が進むと「聞けば分かる」が通用しなくなる

さらに怖いのは、『認知症や判断力低下が進んでからでは、お金の確認が難しくなること』です。(冷静な話し合いが困難になってしまうこともあります。)

親が元気なうちは、

「この通帳はここ」
「年金はこの口座」
「保険はこの会社」

と本人に聞くことができます。

でも、認知機能が低下してからでは、本人も説明できなくなることがあります。

通帳をしまった場所を忘れる。
同じ銀行に複数の口座がある。
保険証券が古いまま残っている。
ネット銀行や証券口座があるのに、家族が知らない。

こうなると、家族は親のお金を親のために使いたくても、情報が分からない状態になります。

2022年時点で、65歳以上の認知症高齢者数は443.2万人、軽度認知障害であるMCIの高齢者数は558.5万人と推計されています。
つまり、認知症や判断力低下は、特別な家庭だけの話ではありません。
多くの家族にとって、将来起こり得る現実として考えておく必要があります。

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親のお金があるのに、すぐ使えないことがある

判断能力が低下すると、金融機関での手続きも簡単ではなくなります。
家族だからといって、本人名義の預金を自由に引き出せるわけではありません。

金融機関は、本人保護の観点から、本人の意思確認や使途確認を重視します。
医療費や介護費など、本人の利益に明らかに合う支払いについては柔軟に対応される場合もあります。
ただし、それは金融機関ごと、状況ごとの判断になります。

つまり、親のお金はあるのに、『使いたい時にすぐ使えない』ということが起こり得るのです。

これは、親のお金が足りないという問題とは別です。
お金があるのに、情報がない。
お金があるのに、手続きができない。
お金があるのに、誰がどう動けばよいか分からない。

この状態が、家族を追い詰めていきます。

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成年後見制度は「家族が自由に使える財布」ではない

ここで関係してくるのが、成年後見制度です。

認知症などで判断能力が不十分になった場合、本人の契約や財産管理を支える仕組みとして成年後見制度があります。
これはとても大切な制度です。

ただし、家族にとっては、「制度があるから安心」と単純に考えすぎない方がいいと思います。

成年後見制度は、本人を守るための制度です。
家族が自由に親のお金を使えるようにする制度ではありません。
申立て、審判、後見人等の選任、財産管理のルールなどがあり、必要な時にすぐその場で使える『便利な財布』ではありません。

令和6年12月末時点で、成年後見制度の利用者数は253,941人です。
制度としては重要ですが、認知症やMCIの人数と比べると、利用している人は限られています。
だからこそ、制度だけに頼るのではなく、親が元気なうちの情報共有が大切になります。

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兄弟間の不信感も、お金の不透明さから生まれる

親のお金の情報が分からないと、兄弟間の関係にも影響します。

たとえば、長女が親の通院や介護費用を立て替えている。
でも弟は、どれくらいお金がかかっているのか知らない。
親の預貯金がどのくらいあるのかも分からない。

すると、後から

「そんなに使ったの?」
「親のお金はどうなっているの?」
「誰が管理していたの?」

という不信感が生まれやすくなります。

介護のお金は、相続より前に家族関係を揺らすことがあります。
相続でもめる家は多いですが、実はその前に、『介護費用の立て替えや管理でもめる』ことも少なくありません。

だから、親のお金の情報共有は、単なる事務作業ではありません。
家族間の不信感を減らすための準備でもあります。

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親が亡くなった後の手続きにも影響する

さらに、親が亡くなった後にも、お金の情報が分からないと困ります。

どこの銀行に口座があるのか分からない。
保険に入っていたか分からない。
証券口座があるか分からない。
借入や未払いがあるか分からない。
公共料金やサブスク、クレジットカードの引き落としがどこから出ているか分からない。

こうなると、相続手続きがとても大変になります。

相続では、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を集めたり、金融機関ごとに必要書類をそろえたりする場面もあります。

預金については、遺産分割前に一定範囲で払い戻しを受けられる仕組みもあります。(ただし、同一金融機関からの払戻しには原則として150万円の上限があります。)

そして、そもそもどこの金融機関に口座があるのか分からなければ、手続きの入口に立てません。

つまり、親のお金の情報を知らないことは、介護中だけでなく、親が亡くなった後の手続きにも大きく影響します。

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最初に聞くべきは「金額」ではなく「所在」

では、親に何を聞いておけばいいのでしょうか。

私は、最初から金額を細かく聞く必要はないと思っています。
いきなり、「貯金はいくらあるの?」と聞くと、親も身構えます。

最初に必要なのは、金額より『所在』です。

どこの銀行に口座があるのか?
年金はどの口座に入っているのか?
生命保険や医療保険に入っているのか?
保険証券や重要書類はどこにあるのか?
実印、印鑑登録カード、マイナンバーカード、年金関係の書類はどこか?
クレジットカードや公共料金の引き落としはどうなっているのか?

この程度でも、いざという時の混乱はかなり減ります。

大切なのは、親のお金の全額を把握することではありません。
『困った時に、探し回らなくてよい状態にすること』です。

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切り出し方は「急な入院で慌てないため」が自然

切り出し方も重要です。

「財産を教えて」ではなく、

「急な入院の時に困らないように、最低限の場所だけ分かるようにしておこう。」

「何かあった時に、親のお金を親のために使えるようにしておきたい。」

「通帳の中身ではなく、どこにあるかだけ共有しておきたい。」

このくらいの言い方の方が、親も受け止めやすいと思います。

終活という言葉を出さなくても大丈夫です。

むしろ最初は、『急な入院で慌てないための確認』として始めた方が自然です。

お金の話は、相続の話として切り出すと重くなります。
でも、急な入院や介護費用の支払いに備える話として切り出すと、親も子どもも話しやすくなります。

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今やっておきたいことは3つ

今やっておきたいことは3つです。

一つ目は、親のお金について、金額ではなく所在から確認することです。
銀行名、保険会社、重要書類の場所。ここからで十分です。

二つ目は、介護費用の支払い方をざっくり考えておくことです。
親のお金でどこまで払えるのか?
子どもが一時的に立て替える場合、どう記録するのか?
きょうだい間でどう共有するのか?
ここを決めておくと、後の不信感を減らせます。

三つ目は、判断力があるうちに話すことです。
認知症や判断力低下が進んでからでは、お金の確認も手続きも一気に難しくなります。だからこそ、親がまだ元気な今が大切です。

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親のお金を、親のために使える状態にする

親のお金の情報を知らない家族ほど後で困る。
それは、親のお金が少ないからとは限りません。

むしろ、お金はあるのに、

どこにあるか分からない
どう使えばいいか分からない
誰が管理すればいいか分からない

ということで困るのです。

介護は、気持ちだけでは支えられません。
必ずお金の確認と支払いが必要になります。
だからこそ、親が元気なうちに、お金の所在だけでも共有しておく。

これは親を疑うことでも、財産を奪うことでもありません。
親のお金を、親のためにきちんと使えるようにしておくための準備です。

第33話では、
「認知症になると何が止まるのか。お金の面から解説」
というテーマで、判断能力の低下が金融取引や契約、家族の支払いにどう影響するのかをさらに具体的に整理していきます。

ご相談はお気軽に

【注】
[注1] 2024年度調査では、介護の一時費用は平均47.2万円、月々の費用は平均9.0万円、介護期間は平均55.0か月。単純計算では約542万円になる。

[注2] 2022年時点で、65歳以上の認知症高齢者数は443.2万人、MCI高齢者数は558.5万人。

[注3] 令和6年12月末時点の成年後見制度利用者数は253,941人。

[注4] 預金払い出しでは原則として本人の意思確認が重視される。不測の事態や本人利益に明らかに合う支払いでは柔軟対応の考え方も示されているが、各金融機関や個別事情によって異なる。

[注5] 遺産分割前の相続預金払戻し制度では、家庭裁判所を経ずに一定範囲で払い戻しを受けられるが、同一金融機関からは150万円が上限となる。

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