親の通院・服薬管理が怪しくなったら要注意

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親の介護は、転倒や入院のような大きな出来事から始まることもあります。

でも実際には、もっと日常的なところから、静かに始まることも少なくありません。

その代表が、通院と服薬管理です。

厚生労働省の令和4年国民生活基礎調査では、65歳以上で介護が必要になった主な原因として、総数で『認知症16.6%、脳血管疾患16.1%、骨折・転倒13.9%』が上位に挙がっています。つまり、家族が先に気づきやすい「物忘れ」や「転倒」の背景には、日常の通院や薬の管理の乱れがにじんでいることもある、ということです。

私は、親の通院・服薬管理が怪しくなってきた時は、まだ要介護認定が出ていなくても、家族の支えが必要になり始める入口だと考えた方がいいと思っています。

「通院が怪しい」は、単に病院へ行っていないことだけではありません

家族がまず見たいのは、病院へ行ったかどうかだけではありません。

たとえば、

予約日を間違える。
通院の理由をうまく説明できない。
同じ症状で複数の医療機関にかかっている。

どこの病院で何の薬をもらっているのか、本人も家族も整理できていない。

こうした状態は、単なるうっかりではなく、段取りを組み立てて維持する力が落ちてきたサインであることがあります。

高齢者の服薬に関する厚労省の指針でも、高齢者は加齢変化や多剤服用により薬の問題が起きやすく、患者の服薬状況や症状の把握、服薬支援が重要だとされています。

通院が怪しくなると、その次に起きやすいのは、

検査や受診の抜け、
薬のもらい忘れ、
重複受診や重複処方、
家族の付き添いの増加です。

この時点で、実は家族の役割はもう始まっています。

いちばん分かりやすいサインは「残薬」です

服薬管理の乱れで、家族が一番見つけやすいのは残薬です。

引き出しに薬がたまっている。
シートが中途半端に残っている。
新しい薬があるのに古い薬も残っている。
朝・昼・夜の飲み分けが崩れている。
こうした状態は、とても重要なサインです。

厚労省の2025年の資料では、自宅に残薬があると答えた患者は全体の約半数で、残薬がある人は60歳以上に多い傾向が示されています。

さらに、1か月分以上の残薬がある患者では、残薬整理を希望し、その『相談しやすい相手として薬剤師を挙げた人が78%』でした。

つまり、薬が余っていること自体が珍しいわけではありません。

ただし家族にとって大事なのは、『なぜ余っているのか』を見ることです。

飲み忘れなのか。
飲み方が分からないのか。
通院がずれて処方が重なったのか。
副作用がつらくて自己判断で止めているのか。

ここに、老いのサインや生活機能の低下が隠れていることがあります。

多すぎる薬は、転倒や物忘れを悪化させることもあります

高齢者の薬の問題は、「飲み忘れ」だけではありません。

薬の数や組み合わせそのものが、生活機能を落とすことがあるのです。

厚労省の「高齢者の医薬品適正使用の指針」では、ポリファーマシーは単に薬剤数が多いことではなく、薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態だとされています。

さらに、薬物有害事象は薬剤数にほぼ比例して増加し、6種類以上が特に関連したというデータもあると示されています。

また同指針では、高齢者で慎重投与が必要な薬として、睡眠薬や一部の向精神薬などが、過鎮静、認知機能の悪化、運動機能低下、転倒、骨折のリスクを持つとされています。

つまり、

最近ふらつく、
昼間ぼんやりする、
前より転びやすい、
同じ話が増えた、

という変化が、年齢だけでなく薬の影響と重なっていることもあるのです。

入院や退院の後に、急に服薬管理が崩れることもあります

もう一つ要注意なのが、入院や退院のあとです。

入院中は医療者が関わるため薬は比較的きちんと管理されます。

でも、家に戻った途端、

薬が増減して分からなくなる、
以前の薬と新しい薬が混ざる、
本人の認知機能や生活環境では管理しきれない、

ということが起きやすくなります。

PMDA・厚労省の資料でも、在宅や施設療養へ移行する際には、認知機能の低下等によるアドヒアランス低下に留意する必要があるとされ、服用管理能力の把握と、同居者の有無を見据えた服薬支援が必要だと示されています。

ですから、退院して薬が変わったあとに、「本人に任せておけば大丈夫」
と考えるのは危険なことがあります。

ここで家族が薬の整理や確認に入るなら、それはもう立派な介護準備の一部です。

家族が見るべき「要注意サイン」は、意外と日常の中にあります

私が特に要注意だと思うのは、次のような変化です。

一つは、通院の段取りが怪しいことです。
予約日や受診先を間違える、診察内容を説明できない、同じ話を何度もする。

二つ目は、薬の現物が合わないことです。
飲み残しが多い、薬が重複している、どの薬が何のためか本人が分からない。

三つ目は、生活の変化と薬の問題が一緒に出ていることです。
ふらつく、眠そう、転びやすい、便秘や口渇が強い、食欲が落ちた。

こうした変化は、一つだけなら様子見でもいいことがあります。

でも、いくつか重なっているなら、

「まだ大丈夫」より
「今が相談のしどき」

と考えた方がいいと思います。

では、家族は何をすればいいのか

ここで大事なのは、親を責めないことです。

「ちゃんと飲んでないの?」
「なんで病院を間違えるの?」
と責めても、たいていは改善しません。

むしろ本人は隠すようになります。

先にやった方がいいのは、全部の薬を一度見える化することです。

病院ごとの薬、残っている薬、お薬手帳、市販薬、サプリ。

これを一度まとめて確認するだけでも、かなり状況が見えます。

厚労省は、保険薬局で患者や家族が持参した服用中の薬剤を確認して服薬管理につなげる取組、いわゆるブラウンバッグ運動を周知しています。

つまり、「余っている薬を全部持って相談する」は、制度の世界でも推奨されている現実的な方法です。

そして、相談先としては薬局や薬剤師だけでなく、地域包括支援センターも有効です。厚労省は、地域包括支援センターを地域の高齢者や家族介護者に対する総合相談の中核機関として位置づけており、全国で5,487か所設置されていると案内しています。

まとめ

親の通院・服薬管理が怪しくなったら要注意。

それは、まだ要介護認定が出ていなくても、
家族の支えが必要になり始めるサインだからです。

通院の段取りが崩れる。
残薬が増える。
薬の説明ができない。
ふらつきや眠気や物忘れが重なる。
退院後に薬の管理が難しくなる。

こうした変化は、単なる年齢のせいではなく、介護の入口であることがあります。高齢者の薬の問題は、多剤服用による有害事象、服薬過誤、アドヒアランス低下とも結びつくため、早めに見つけて整える意味が大きいのです。

第24話では、
「『まだ自立している親』にこそ必要な備え」
というテーマで、介護が始まっていない段階で何を整えておくべきかを、さらに具体的に掘り下げていきます。

まずは、親に何を・どの順番で・どう話せばよいかを一緒に整理してみませんか?

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