家族が見落としがちな認知症の初期サイン

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認知症の初期サインというと、
「同じことを何度も聞く」
「物忘れが増える」
というイメージを持つ方が多いと思います。

もちろん、それも大事なサインです。

ただ実際には、家族が見落としやすい初期サインは、物忘れそのものより、日常の『やり方』や『雰囲気』の変化として表れることが少なくありません。

認知症の症状は、記憶障害だけでなく、

・時間や場所が分からなくなること
・理解力や判断力の低下
・家事や身の回りのことがうまくできなくなること
・不安・抑うつ
・怒りっぽさ
・意欲低下などの行動
・心理症状

も含むと整理されています。

しかも厚生労働省の調査では、65歳以上で介護が必要になった主な原因のトップは認知症です。

だからこそ、「まだ介護ではない」と見える段階の小さな変化を、家族が早めに拾えるかどうかがとても大切になります。

いちばん見落とされやすいのは、「物忘れ」より『段取りの乱れ』です

家族が最初に気づきやすいのは、必ずしも『はっきりした物忘れ』ではありません。むしろ多いのは、今まで普通にできていたことが、少しずつぎこちなくなることです。

国立精神・神経医療研究センターの解説では、認知症のサインとして、

・仕事や家事・趣味の段取りが悪くなる
・時間がかかるようになる
・調理の味付けを間違える
・掃除や洗濯がきちんとできなくなる
・季節に合った服装を選べなくなる

などが挙げられています。

厚労省の若年性認知症ハンドブックでも、

・家事が今までのようにきちんとできなくなる
・買い物で同じものを何度も買う
・料理の手順を忘れて完成できなくなる

という例が示されています。

つまり、家族が気づくべき初期サインは、「覚えているかどうか」だけではなく、いつもの段取りが崩れてきていないかを見ることです。

「お金」「服薬」「電話」の変化は、かなり重要です

もう一つ、とても重要なのが、お金や薬や電話のような、少し複雑な生活動作の変化です。

MCIハンドブックでは、認知症は「一人暮らしが困難なほど認知機能が低下した状態」であり、お金の扱い、服薬や食事など、生活のさまざまなことを一人で行うことが難しくなる状態だと説明されています。

同じ資料では、認知症の早期から低下しやすい生活機能として、「買い物」「食事の支度」「服薬管理」「金銭管理」などが挙げられています。

国立精神・神経医療研究センターの解説でも、理解力・判断力の低下として、手続きや貯金の出し入れができなくなることが示されています。

・最近、通帳や印鑑をなくす
・薬が余っている
・電話番号を調べてかけるのが難しい
・請求書や手続きが分かりにくくなっている

こうした変化は、家族がかなり見落としやすいのですが、実は初期サインとして重要です。

「道に迷う」「乗り間違える」も、ただのうっかりで済まないことがあります

家族が「年のせいかな」で流しやすいのが、移動の変化です。
でもここにも、初期サインが出ることがあります。

国立精神・神経医療研究センターは、時間や場所が分からなくなるサインとして、

・日付や曜日が分からなくなること
・慣れた道で迷うこと
・出来事の前後関係が分からなくなること

を挙げています。

厚労省の若年性認知症ハンドブックでも、

・バスや電車で乗る駅や降りる駅が分からない
・よく知っている道なのに迷ってしまう
・目的地に着けない

という例が具体的に示されています。

ここで大切なのは、「一度迷ったから認知症」と決めつけることではありません。

ただ、

以前より道に弱くなった
移動の説明が曖昧になった
出先で不安が強くなった

という変化が重なっているなら、見過ごさない方がいいと思います。

「やる気がなくなった」「趣味をやめた」も初期サインになることがあります

認知症の初期サインというと、どうしても『できないこと』に目が向きがちです。

でも実際には、意欲の低下や関心の薄れとして始まることもあります。

国立精神・神経医療研究センターは、行動・心理症状の例として、

・憂うつでふさぎこむ
・何をするのも億劫がる
・趣味や好きなテレビ番組に興味を示さなくなる

ことを挙げています。

厚労省の若年性認知症ハンドブックでも、

・テレビや新聞を見なくなる
・好きだった趣味の活動をしなくなる
・外出したがらない

という変化が「気づき」のチェック項目として示されています。

親が、

「もう面倒だからいい」
「最近あまり出かけたくない」
「好きだったことをしなくなった」

という時、それを単なる年齢のせい、性格の変化だけで片づけない方がいい場合があります。

怒りっぽさや疑い深さも、家族は見落としやすいです

家族が戸惑いやすいのが、性格が変わったように見えるケースです。

・前より怒りっぽい
・イライラしやすい
・物をなくすと「盗られた」と言う
・些細なことで不機嫌になる

国立精神・神経医療研究センターでは行動・心理症状として、

・不安
・一人になると怖がる
・怒りっぽくなる
・自分のものを誰かに盗まれたと疑う(もの盗られ妄想)

などを挙げています。

厚労省の若年性認知症ハンドブックでも、

・失敗を取り繕って言い訳をする
・どうしていいか分からず不安になる
・イライラする
・意欲がなくなる
・人格が変わったように見える

ことがあると説明されています。

ここで注意したいのは家族が、

「性格が悪くなった」
「わがままになった」

と受け取ってしまいやすいことです。

でも実際には、本人も混乱や不安の中にいることがあります。

『まだ一人暮らしできている』段階でも、初期サインはあります

見落としがちな理由の一つは、まだ何とか一人暮らしができていることです。

この段階では、家族も「まだ大丈夫」と思いやすいからです。

MCIハンドブックでは、MCIは認知症そのものではなく、日常生活は基本的には送れるものの、新しい場所や機械が苦手になり、どうにか送れていても「テキパキ」と行うことが難しくなっている状態だと説明されています。

つまり、家族が見落としやすいのは、完全にできなくなる前の、少し鈍くなった段階です。

だから、

まだ一人で暮らせている、
まだ買い物に行けている、
まだ病院にも行けている、

ということだけで安心しすぎない方がいい。

家族が見るべきなのは、「できるか」だけでなく「以前と同じようにできているか」です。

ただし、自己判断で「認知症だ」と決めつけないことが大切です

ここはとても重要です。

似たような症状は、認知症以外でも起こりえます。

国立精神・神経医療研究センターの解説では、認知症のような症状が現れても、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下症、ビタミン欠乏、自己免疫性疾患、内科的疾患、さらには処方薬などの薬剤によっても、認知症のような症状が出ることがあるとされています。

つまり、家族が気づくことは大切ですが、家族が診断することとは別です。

また、国立長寿医療研究センターの初期集中支援資料では、認知症様の症状が急激に出現・悪化している場合や、薬の副作用の可能性がある場合は、緊急度が高い視点で見る必要があるとされています。

急に悪くなった、短期間でおかしくなったという時は、特に早めの受診が大切です。

家族が今やるべきこと

大事なのは、親を問い詰めることではありません。

また忘れたの?
なんでそんなことも分からないの?

と責めると、本人は隠すようになりやすいからです。

先にやった方がいいのは、以前との違いをメモすることです。

・同じことを何度も聞く
・家事の段取りが悪くなった
・薬が余る
・道に迷う
・怒りっぽい
・趣味をやめた

こうした変化は、厚労省のハンドブックでも、受診時に役立つのでできればメモしておくとよいとされています。

そして相談先としては、厚生労働省が、認知症かもしれないと思ったときの窓口として地域包括支援センターを案内しています。

地域包括支援センターは全ての市町村に設置されており、軽い段階でも相談できます。症状が軽い段階で気づき、適切な治療を受けられれば、進行を遅らせられることもあるとされています。

まとめ

家族が見落としがちな認知症の初期サインは、物忘れだけではありません。

・段取りの乱れ
・お金や服薬や電話の変化
・道に迷うこと
・意欲低下や趣味離れ
・怒りっぽさや疑い深さ

こうした変化は、まだ一人暮らしができている段階でも表れることがあります。

だからこそ、「まだ介護ではない」「まだ大丈夫」ではなく、以前と違う小さな変化を、家族がどう拾えるかがとても大切です。

第26話では、
「親の一人暮らしで先に確認すべきポイント7選」
というテーマで、離れて暮らす親に対して、何を先に確認しておくと仕事と介護の両立が崩れにくいのかを、さらに具体的に掘り下げていきます。

まずは、親に何を・どの順番で・どう話せばよいかを一緒に整理してみませんか?

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