その笑顔を見ていると、不思議と安心する。

その笑顔を見ていると、不思議と安心する。

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コラム
誰にも気づかれないくらいゆっくりと、
一人の少女の心も育ち始めていた。

「じゃあ今度は、凪ちゃんもやってみようか。」

おばあちゃんは、枝豆の株をそっと指さした。

「えっ、私がですか?」

「うん。」

「難しく考えなくていいよ。」

凪は少し緊張しながら畑にしゃがみ込む。

陽菜も隣にしゃがみ、にこっと笑った。

「大丈夫。」

「最初は私も失敗したから。」

その一言に、凪の肩の力が少し抜ける。

枝をそっと持つ。
どの莢なら採っていいんだろう。

さっき教わったことを思い出しながら、一つ選ぶ。

「これ……かな。」

恐る恐る摘み取る。

「あ。」

勢いがつきすぎて、枝が少し揺れた。

「ご、ごめんなさい。」

思わず謝る凪。

その瞬間、おばあちゃんと陽菜が顔を見合わせて笑った。

「謝らなくていいよ。」

おばあちゃんは優しく首を振る。

「野菜は、そのくらいじゃ怒らないから。」

凪はきょとんとする。

「それにね。」

おばあちゃんは、摘み取った枝豆を手に取った。

「ちゃんと採れてる。」

「最初から百点じゃなくていいんだよ。」

その言葉に、凪は何も言えなくなった。

最初から百点じゃなくていい。

その言葉は、今まで誰かに言ってもらいたかった言葉だったのかもしれない。

学校では、間違えないように。
迷惑をかけないように。
失敗しないように。

そんなことばかり考えてきた。
だから、何かをする前から怖くなることもあった。

でも今、失敗しても笑ってくれる人がいる。

「ほら。」

陽菜が、自分の手のひらを見せる。

「私も形がバラバラ。」

そこには、大きな枝豆も、小さな枝豆も混ざっていた。

「本当だ。」

凪が笑う。

「完璧じゃないでしょ?」

「うん。」

「でも、おいしく食べられるよ。」

陽菜はそう言って笑った。

その笑顔を見ていると、不思議と安心する。

完璧じゃなくていい。
上手じゃなくていい。
そのままでいい。

風が吹き、畑の葉がさらさらと揺れた。
遠くでヒバリが鳴いている。

凪は、もう一度枝豆の株へ手を伸ばした。

今度は少しだけ迷わずに。
少しだけ笑いながら。

その姿を見ていたおばあちゃんが、小さくつぶやく。

「いい顔になってきたね。」

陽菜はその言葉に静かにうなずく。

「うん。」

「最近の凪、本当によく笑うんだ。」

その会話は、凪には聞こえなかった。

凪は夢中で枝豆を摘んでいた。

誰かが自分の変化を、そっと喜んでくれている。
その優しさは、夏の風のように、静かに凪を包んでいた。

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