この子、本当に大事な人しか連れてこないからね。

この子、本当に大事な人しか連れてこないからね。

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コラム
風がそっと吹き抜けた夏の日。
凪の心には、小さな種が、静かに芽を出し始めていた。

「こっちだよ。」

陽菜が畑の小道を歩いていく。
畑には、朝の光を浴びた野菜たちが生き生きと並んでいた。

真っ赤なトマト。
大きく葉を広げたなす。
支柱につるを巻きつけるきゅうり。

どれも太陽に向かって、まっすぐ伸びている。

「わあ……。」

凪は思わず立ち止まった。

「すごい。」

「学校とは全然違うね。」

「でしょ?」

陽菜はうれしそうに笑う。

そのときだった。

「陽菜かい?」

畑の奥から、やさしい声が聞こえた。

麦わら帽子をかぶった、小柄なおばあさんが手を振っている。

「おばあちゃん!」

陽菜は小走りで駆け寄った。

「今日はお友達を連れてきたの。」

「こんにちは。」

凪は少し緊張しながら頭を下げる。

「初めまして。」

おばあさんは目を細め、にっこり笑った。

「よう来たねぇ。」

「陽菜がお友達を連れてくるなんて、珍しいこと。」

その言葉に、陽菜が少し照れたように笑う。

「そう?」

「そうだよ。」

「この子、本当に大事な人しか連れてこないからね。」

その一言に、凪は思わず陽菜を見る。

陽菜は恥ずかしそうに、

「もう、おばあちゃん。」
と小さく笑った。

凪の胸が、少しだけ熱くなる。

(大事な人……。)

その言葉が、心の中で静かに響いていた。

「さあさあ。」

おばあさんが手を叩く。

「まずは枝豆を採ろうか。」

「はい!」

陽菜は子どものように笑う。

学校では見たことのない笑顔だった。

凪はその姿を見つめながら、小さく微笑む。

「凪ちゃん。」

おばあさんが優しく声をかける。

「野菜も人もね。」
「急いで育てようとすると、うまくいかないんだよ。」

凪は静かに耳を傾ける。

「毎日ちゃんと見て。」

「水をあげて。」

「待ってあげる。」

「そうすると、自分の力で大きくなる。」

おばあさんは、枝豆の葉をそっと撫でた。

「人の心も、同じなんだよ。」

その言葉を聞いた瞬間。
凪は、なぜだか陽菜のことを思い浮かべていた。

陽菜は、待ってくれる人だった。

急がせない。

決めつけない。

変えようとしない。

ただ、隣で笑っていてくれる。

だから、私は安心できたんだ。

その答えが、夏の風と一緒に、凪の胸へ静かに届いた。

遠くで風鈴が、ちりん、と鳴った。
夏は、まだ始まったばかりだった。

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