今日は待ちに待った給料日。オフィスには異様な熱気が漂い、すでに床は汗と涙で湿っている。誰もが知っている。この日はただの金銭授受の儀式ではない。「戦い」の日なのだ。
昼過ぎ、ついに「それ」は始まった。給与明細を握りしめた経理の男が、無表情のままバットを構える。彼は審判であり、処刑人であり、そして神だ。
「○○君、給料だ」
名を呼ばれた者は静かに立ち上がる。顔には恐怖と歓喜が交錯し、足取りは震えている。それでも、前へ進むしかない。給与明細を受け取った瞬間――「ゴシャッ!!!」鈍い音が響く。バットが後頭部を捉えた。衝撃とともに、男は地面に沈む。
「ありがとうございます!!!」
血を噴き出しながら、彼は感謝を叫ぶ。そう、それがこの会社のルール。給料をもらう者は、命を懸けて感謝を示さなければならない。感謝とはすなわち、肉体をもって証明するものなのだ。
次々と社員が呼ばれ、次々とバットが振り下ろされる。まるで壮絶な音楽のように、鈍い衝撃音と「ありがとうございます!」の絶叫が交互に響き渡る。誰もが満身創痍、しかし誰もが幸福に満ちている。
そして、ついに私の番が来た。足が震える。しかし、逃げるわけにはいかない。私は経理の男を真っ直ぐに見据え、給与明細を受け取る。
「よろしくお願いします!!!」
次の瞬間、視界が弾け飛ぶ。頭蓋を貫く衝撃。星が舞う。そして、私は床に崩れ落ちた。口の中に鉄の味が広がる。
「……ありがとうございます!!!」
意識が遠のく中、それだけは叫ばねばならない。これが、この会社に生きる者の宿命だから。
薄れゆく視界の中、ふと経理の男と目が合う。彼は満足そうに頷いた。そして次の獲物へと歩み寄る。
こうして、今月もまた「給料日」という名の祭典が幕を閉じたのだった。