【悲劇】コンビニおにぎり、無慈悲な運命を辿る
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【悲劇】コンビニおにぎり、無慈悲な運命を辿る
深夜、小腹を満たすために近所のコンビニへ足を運んだ。あたたかい照明、冷たい夜風、静かなBGM──すべてが平和な空間だった。
しかし、私は知らなかった。
この夜、おにぎり地獄の幕が上がることを……。
おにぎり、シゴかれる
レジで順番を待っていたとき、視界の端に異様な光景が映った。バックヤードから運ばれてくるおにぎりたち。だが、それは「運ばれてくる」という生ぬるいものではなかった。
──叩きつけられていた。
店員は無造作におにぎりを掴み、ポイッ! バンッ! と次々に放り投げる。床に落ちようが、潰れようが、気にする様子は一切ない。
「こいつら、どうせすぐ売れるんだから関係ねえよな」
……。
私は息をのんだ。おにぎりたちは、何も言わずにただ耐えていた。
私は、おにぎりを買うことにした
こんな目に遭ったおにぎりを見捨てるわけにはいかない。私は棚からひとつ手に取った。
「すみません、これください」
レジに差し出すと、店員は面倒くさそうにピッとバーコードをスキャンし、無造作に袋へ投げ入れた。
私はおにぎりを受け取り、店を出た。
悲劇の幕開け
帰宅後、私はさっそくおにぎりを食べることにした。今日の試練を乗り越えた、おにぎり戦士の魂をしっかり味わおう。
ビニールを剥がし、パリパリの海苔を巻く──その瞬間。
おにぎりが、崩壊した。
──無惨な姿だった。
片側に押し寄せた米、粉々になった具材。もはや「おにぎり」と呼べる形ではない。ただの白い瓦礫がそこにあった。
私は言葉を失った。
……いや、違う。
これは、最初から決まっていた運命だったのだ。
このおにぎりは、最初から生き延びることなどできなかったのだ。
私は震える手でおにぎりを口に運ぶ。だが、それはただの潰れた米の塊だった。バランスを失った具材は偏り、醤油はしみ出し、食感は最悪だ。
「……おいしくない」
その一言が、静かな部屋に響いた。
私は手を止める。
このおにぎりは、生きるために生まれたわけじゃなかった。
最初から、無慈悲に消費される運命だった。
雑に扱われ、潰され、売られ、食われ、そして忘れ去られる。
そのことに気づいた瞬間、私は震えた。
──これは、おにぎりの話じゃない。
俺たちも、同じなのではないか?
社会というコンビニのバックヤードで、無造作に扱われ、叩きつけられ、消費され、やがて崩れ、消えていく。
そう考えた瞬間、私はそっと、おにぎりを置いた。
食欲は、すでに失せていた。
終焉
次の日、私はコンビニに行かなかった。
おにぎりを手に取る気になれなかった。
──だって、俺はもう知ってしまったから。
コンビニの片隅で、今日もおにぎりたちが、
無慈悲に並べられ、無慈悲に消費されていくことを。