あ、入り口ですか?
この裂け目から入って、梯子で上がるんですよ。
元はね、家じゃなかったみたいで、
この芽が窮屈そうにしていたのを、誰かが穴をあけてあげたみたいなんです。
この芽はほんの少しずつ、成長しているらしいんです。
一年に数ミリ程度だから、我々には全然わからないんですけどね。
前の住人は、この芽をどう扱っていいかわからなかったようですが、
でも私は、洗濯物を干すのに使っちゃってます。
ずいぶん丈夫ですからね。
このままこの家が空き家になったら、
この洗濯物は、芽と一緒に、ずっと高いところに上っていってしまいますね。
そうやってずっとずっと後には、ここは森のなかの廃墟になっているのかもしれないって、
そんなふうに思うと、とっても素敵じゃないですか?