楽しかったお泊まりデートが終わり、ホテルのチェックアウトの時間が近づいてくる。
荷物をまとめて部屋を出ようとするとき、隣にいるあの人の行動に、あなたの心はすっと凍りついてしまうことはありませんか?
「忘れ物がないか、ちゃんと見ておこう」
そう言って、相手が部屋の中をチェックし始める。
でも、そのチェックの仕方が、自分の財布やスマホを探すというレベルをはるかに超えて、異様なほどに執拗で、念入りで。
ベッドのシーツの隙間、洗面所の床、クッションの裏まで、まるでプロの鑑識官かのように何度も何度も確認して回る。
その無駄のない、あまりにも手慣れた手つきをじっと見つめているうちに、あなたの心には、冷たい風がヒューッと吹き抜けていきます。
あぁ、この人は忘れ物を心配しているんじゃない。
ここに私がいたという「証拠」を、1ミリも残さないために、必死になって証拠隠滅をしているんだな、と。
洗面台に落ちているかもしれない髪の毛一本、うっかり落としてしまったかもしれないピアスの小さなキャッチ。
自分の存在の痕跡を、徹底的に、完璧に消し去ろうとするその冷徹な横顔を見ていると、楽しかったはずの時間の余韻はどこかへ吹き飛んでしまいます。
「私は、あの人にとって、綺麗に片付けられるべき汚れのような存在なのかな」
自分の存在そのものが、まるで社会のゴミか、不都合なシミのように扱われている気がして、胸の奥がキリキリと痛み、静かに、深く傷ついてしまう。
そして、そんなふうに必死になっている相手の姿に対して、なんだかもの凄く冷めてしまっている自分がいませんか?
心理カウンセラーとして、僕はその息が止まるような切なさと、言葉にできない寂しさを、そのまま優しく包み込んであげたい気持ちでいっぱいです。
繊細な気質を持っている方は、相手の行動の裏にある「本当の目的」や「心の焦り」を、誰よりも敏感に肌で察知してしまう高いアンテナを持っています。
ただの「お片付け」という行動の向こう側に隠された、あの人の保身、恐れ、そして自分との関係を「隠さなければいけない現実」を、一瞬で全部読み解いてしまうんですよね。
だからこそ、その徹底的な手つきを見たときに、自分の人格や、相手を想う純粋な気持ちまでを一緒に消去されたような、言葉にできないショックを受けてしまうのです。
それは、あなたがひねくれているからでも、わがままで面倒な女性だからでも決してありませんよ。
あなたがそれだけ、そのお部屋で過ごした時間を、あの人と紡いだ温もりを、心から大切にしていたからに他なりません。
大好きなあの人と過ごした証を、少しでもこの世界に残しておきたい、せめて相手の心に深く刻んでおきたいと願うのは、恋をする女性としてあまりにも自然で、純粋な気持ちです。
だからこそ、それを目の前で完璧に消されていく痛みに、心が悲鳴を上げてしまうんですよね。
心理カウンセラーとして、僕はあなたに、今回はその傷ついた心の声を、どうか無視しないでいてあげてほしいなと思います。
「片付けられるべき汚れ」なんて、そんな悲しい言葉で自分のことを絶対に定義しないでくださいね。
あなたは汚れなんかじゃなくて、誰かを心から真っ直ぐに愛することができる、とても美しくて気高い心の持ち主です。
あの人が証拠隠滅に必死になっているのは、あなたの価値が低いからではなく、単にあの人が「自分の現実を守るための弱さ」に怯えているだけなんですよ。
相手のその必死な弱さを見たときに、あなたの心が「冷める」という反応を起こしたのは、あなたの心が「これ以上、この人の弱さに付き合って傷つかなくていいよ」と、あなた自身を守るために出してくれた、とても大切な防衛サインです。
無理にその冷めた気持ちを奮い立たせようとしたり、大人の余裕を見せて笑ったりしなくて大丈夫ですからね。
ホテルを出たあとの帰り道、少しだけあの人と歩く歩幅を緩めて、自分の呼吸を整えることを最優先にしてください。
あなたのその豊かで繊細な愛情は、完璧に消去されるべきものなんかではなく、本当はもっと広い世界で、堂々と、温かく育まれるべき宝物なのですから。
今夜は自分のお部屋に帰ったら、あなたの大好きな香りに包まれて、一生懸命に恋をした自分の心を、たくさんよしよしと労ってあげてくださいね。