宝の山

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■宝の山
老人ホームにいる母が死んだ。
アパートの二階で暮らす息子のMは失業をして生活費にも困っていた。
母は高齢で、新聞配達をして生計を立てるMと暮らしていた。
父はMが若い頃に亡くなり、女手一つでMを育てた。
Mには年の離れた姉もいたが、嫁いでどこで暮らしているのか知らなかった。
Mは中学校を卒業して高校に進学したが1年も経たずに退学した。
家の暮らしが貧しく、就職して稼ぎたかった。
建設作業員、太陽光発電装置の営業など転職を繰り返し、現在は新聞配達をしている。
収入は少なく、母の僅かな年金も頼りに日々を送っていた。
ある日母は、毎日通うスーパーで米を万引きした。
すぐさま警備員に取り押さえられて、社員の控室に連れられて行かれ、警察が来て事情聴取をされるも、その場で謝罪してMが迎えに来ることで、家に返してもらえた。
次の日も母は、同じスーパーで米を万引きした。
事務室に連れていかれ、警備員から「どうしてレジでお金を払わない」「どうして盗んだ」
「どうして我慢ができないんだ」と質問責めに会い、理由などない。わかっていたら盗みなどしないと小さな言葉でつぶやく、
財布に入っていた保健証のコピーを取られて、もう二度としないと誓約書にサインをさせられた。
他の社員が警察官を呼んだ。
パトカーはサイレンも鳴らさずスーパーの駐車場に入ってきた。
2人の警察が来て警備員が経緯を説明をすると、母はは警察署に連れていかれた。
Mは新聞配達をしている。
毎朝3時になると配達用のバイクで家を出る。
新聞店はアパートから5分のところにある。
新聞店に着くと刷り上がった新聞に、チラシを閉じ込む、雨の日にはビニール袋に入れる。
配達員は20人 1人当たり300軒の家に配達をする。
新聞配達は誰にも顔を合わさなくて済む。わずらわしい挨拶も不要だ。
毎日決まった家の新聞受けに丁寧に入れるだけ、一か月フルに働くと
万円程度の報酬がもらえる。
儲からないけど人間関係は楽な仕事だ。
朝家に帰る途中コンビニで母と二人分の、のり弁を買って家に帰る。食べたらゲームをして寝るかパチンコ屋に行く、今度は夕刊を配達する為、
2時に新聞店に行き、5時までの配達の毎日。
仕事を終えると、コンビニで母と二人分の鮭弁当とカップ麺、缶チューハイを買って家に帰る。食べたらシャワーを浴びて寝る生活だ。
電気料金、水道料金の支払いも支払いが億劫だ、郵便ポストも溜まりに溜まって見る気もしない。電気は一か月、水道も二か月支払わないと止められてしまう。
母が居ないと支払いに行く気力もなくなり益々滞納が増える。
健康保険も市県民税も払っていない。督促状や役所の人が訪問してきても居留守を使う。
電気が止まると冷蔵庫は使えず、中の食品は全て腐る。
ゴミ捨ても、新聞配達の時間と重なり捨てられない。
前の日にゴミステーションに出すと町内会が違反シールを張り付け収集されないこともある。
電気が止まると、夜に帰宅すると室内がみえなくなるので、ライターやロウソクの明かりで耐え忍ぶ、冬は寒いので、窓を閉め切り厚着をする。
洗濯機も使えなくなり、毎日同じ服を着るか、新しい下着を買いだめする。
お風呂が使えないので、体ふきナプキンで過ごす。
ガスも止められ、お湯が必要なときはカセットコンロで間に合わす。
家の中でもサバイバルな暮らしだ。
トイレもうんこをすると流せなくなる。
紙も詰まり蛆が涌く、卵を産み付けハエ嵐、半年間は匂いにも悩まされるが、乾燥すると臭いは消える。トイレは近くの公園で済ますか、新聞店で済ます。
おしっこは、ペットボトルにためて、トイレに並べる。
トイレに並びきれなくなると、お風呂場に並べる。
洗面所、キッチンの流しに置ききれなくなるとダイニングの床に並べる、次に玄関も通れるように並べて行った、玄関も並べる場所がなくなると、最後に自分の寝る部屋にも並べることにした。
漏れても大丈夫なように畳みの床に余った新聞紙を敷き詰めた。
新聞紙は断熱材の代わりになるくらい暖かい、並べていくペットボトルを踏み間違えると、漏れることもある。
1段目が埋まると、おしっこの入ったペットボトルで寝られる場所もなくなる。
又新聞紙を敷き込みその上に布団を並べて寝ることにした。
宝の山のベッドの完成だ!
 臭いは流石にきついが慣れると嫌でなくなる。
体中に蕁麻疹ができた。痒くてたまらない。
わきの下も、手首も、腿の付け根も痒くてたまらない。
病院に行きたくても保険証が無いので、新聞配達をする同僚の保険証を借りて受診する。
蕁麻疹や熱が出るようになり、新聞配達もつらくなり休みがちになる。
収入も無く、家賃も税金も支払うことができなくなる。
新聞紙とペットボトルが溜まりに溜まって家の玄関も開けられなくなるなったころ、
市役所の職員が訪ねてくるようになった。
税金の取り立てが怖いので居留守を使う。
大家が来ても支払うお金も無いので居留守を使う。
離婚した姉が近くのアパートに住むことになった。
年の離れた姉が「Mくん、家に来てもいいよ」と声をかけてくれた。
Mは夜逃げを決意して、姉の元に行くことにした。
溜まった新聞もおしっこの入ったペットボトルも捨てる事も出来ずそのまま残し、
Mは玄関が開けられないので、窓から抜け出し、姉のアパートに駆け込んだ。
1年が過ぎると、アパートの周辺は悪臭が漂い、大家に近所からのクレームが入った。
流しもトイレも使えず、大家はアパートの前に汚水桝の蓋を開けて、
2階からペットボトルを一本ずつ下して、ふたを開け、下水道に流した。
食品が入ったままの冷蔵庫の扉を開けると蛆が涌き、蛆虫自体も乾燥していた。
ペットボトルの総本数3330本、染み付いた古新聞、古雑誌の総量3トン
古新聞の間には硬貨が落ちていた、大家はその硬貨で市指定のゴミ袋を購入した。
来る日も来る日もゴミを捨て続けた。夏が過ぎ、秋になり、冬が来てまた春が来た
大家は全てを捨て去ると、床を張り替え、クロスも張り替えるリフォームをした。
それから5年壁や床に染み付いた臭いは消えていない。
Tの転居先に役所の人が訪ねてきた。しかしMは居留守を使い、姉が出た。
母が亡くなった事の知らせだった。
老人ホームに居たこともあとからポストの封筒を渡されて知った。
老人ホームの職員が住所を調べたらしく督促状をもって追いかけてくる。
 Mは破産手続きを行い、生活保護の申請をした。

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