アカデミック考察(その5) エッジワースの箱で競争均衡配分が3つ存在する状態とは?

アカデミック考察(その5) エッジワースの箱で競争均衡配分が3つ存在する状態とは?

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 財の交換によって、2つの経済主体が持つ2つの財がどのように変化するかを示す図である「エッジワースの箱」。エッジワースのボックス・ダイアグラムと呼ばれ、2つの市場の連関を扱う一般均衡分析の議論に使われています。
 通常競争均衡配分が1つとされる場合が多いエッジワースの箱は、実は複数の競争均衡配分を記述可能です。本記事では、エッジワースの箱で、3つの競争均衡配分が存在する状態を図示します。

エッジワースの箱での競争均衡配分とは

 エッジワースの箱での競争均衡配分とは、異なる経済主体が予算制約下で最大化原理を満たす財の組み合わせを選択するとともに、すべての財の需要と供給が一致する財と価格の組です。それぞれの経済主体が無駄なく財を配分し、全員に等しく資源が配分された状態だとされます。この状態は、パレート最適やワルラス均衡と呼ばれています。
 競争均衡配分は、経済主体AとBの無差別曲線が頂点で接する点です。スティグリッツは、無差別曲線が接する点では、どちらかの経済主体が効用水準を低下させることなく、他の人の効用水準を上昇させるのは不可能としています。つまり、競争均衡配分は、経済主体の効用がそれぞれ均衡している点であることもわかるでしょう。
 競争均衡配分を図で表すと、下記のようになります。各消費者が自分の保有している財を互いに交換する純粋交換経済で、経済にはA、Bの2つの経済主体、XとYの2種類の財が存在すると定義します。さらに、A、Bの無差別曲線は、それぞれの原点に対して凸で、右下がりとします。

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 図のように、AとBの無差別曲線は頂点で接し、交点Eが生まれていることがわかります。スティグリッツは、両者の無差別曲線が接している点は、XとYの価格比で算出したたAとBの限界代替率が一致している点であるとしています。
 逆に、無差別曲線が交わっていると、どちらか一方の効用が高かったり、低かったりするため、パレート優劣の状態が発生します。この状態は、競争均衡配分とは言えません。
 XとY、2つ財の価格は不変だとすると、無差別曲線が接する点は1つであるが、現実の純粋交換経済では、限界代替率であり、XとYの相対価格「px/py」は変化します。pxとpyが変化すれば、AとBのX、Yに対する需要も変化するため、AとB両者の無差別曲線が接する点は無限に存在し、競争均衡配分も無限に存在することがわかるでしょう。スティグリッツらは、競争均衡配分の点を結んだ曲線のことを契約曲線としています。図に表すと、下記の通りです。マイナスの傾きの一次関数の直線は、XとYの相対価格の比を示した予算制約線です。

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 競争均衡配分は、無差別曲線が頂点で接する点であると同時に、無差別曲線と予算制約線の接点でもあり、AとBの効用が最大となる最適消費点です。最適消費点では、A、Bの経済主体で構成される市場が均衡しており、市場均衡が、競争均衡配分を実現していると言えるでしょう。

競争均衡配分が3つ存在する図の作成

 競争均衡配分を契約曲線上に複数図示する際に用いるのが、厚生経済学の第2基本定理です。この定理は、どんな値の競争均衡配分でも、経済主体の財の再配分を行うことによって実現できるという考えです。
 競争均衡配分を可能にする資源配分によって市場均衡を達成するメカニズムを有しています。これにより、経済主体が政策などで財を再配分し、初期保有点を変化させたと仮定すれば、どちらかの効用を低下させることなく、競争均衡配分がエッジワースの箱に複数存在すると証明できます。
 この厚生経済学の第2基本定理の考えに基づき、2度に渡る政府の再分配によって初期保有の点が、別の2つの競争均衡配分にそれぞれ移ったと仮定し、下記のように図式化しました。Eが初期保有の点、Fが市場均衡による競争均衡配分、Gが1回目の再配分後の点、Hが2つ目の競争均衡配分、Iが2回目の再配分後の点、Jが3つ目の競争均衡配分とします。

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 初期保有のEが、再配分によって点Gに移行すれば、市場のメカニズムによって市場の均衡と、2つ目の競争均衡配分が実現します。さらに、2回目の再配分で点Iに移行すると、同様に市場のメカニズムが働いて、市場均衡を達成、3つ目の競争均衡配分が表出します。よって、3つの競争均衡配分の図示が完了となります。
参考文献集
ジョセフ・E・スティグリッツ、カール・E・ウォルシュ「スティグリッツミクロ経済学 第4版」東洋経済新報社、2013年
大西一弘「ミクロ経済学入門10:一般均衡分析」、2014年
神取道宏「ミクロ経済学の力」日本評論社、2014年
神戸伸輔、寶多康弘、濱田弘潤「ミクロ経済学をつかむ」有斐閣、2006年
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