気楽に読んでください、呼吸のおはなし ~その66~

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本日もお読みくださり誠にありがとうございます。
今日はテンポ良く、5つの母音の最後、" I " の音に触れたいと思います。無理矢理日本語表記にすると、「い」もしくは「イ」になります。
けれどもこれからここに書こうとしているような音を皆さんが出せば、それは厳密に言うと「い」でも「イ」でも無く、" I " となります。
それでは今回もやっぱり音の変化する様から体感しましょう。
E では鳩尾とお臍の中間部分を起点に左右へぐるりと帯状に体を撫でました。
それで得た E の音を出しながら今度は胸骨を通過して鎖骨の方へ撫で上げて行きます。
右の手では胸骨を通って左の鎖骨を、左の手では胸骨から右の鎖骨へと手を滑らせて、特に鎖骨に手が到達したら、鎖骨そのものに加えてその近辺もよく擦ってみてください。
少しずつ音が " I " に変化して行きますから。
ここでは E の時よりも更に、顎関節の緊張からの誘惑が迫って来ます。
口の中を平べったくして簡単に、意地悪で「イーーーーーーだ!」と言う時のような音を出そうとしてしまう人は多いと思います。
しかしそれでは体を、胸骨や鎖骨を触っていることとは全く繋がりません。
この I の音でもやはり、上下奥歯の距離は遠く保たれており、理想としてはこれまで同様に顎はリラックスしてぶら下がったままです。
その中で何が変わるのかと言いますと、E 音で左右への広がりを目一杯に活用していた口蓋が、中央寄りに意識が集約し、更に鼻腔の方、詰まり上に向かって伸びて行く、或いははみ出して行く感覚が現れます。
そうです、I の音は口の中の空間が上下にペシャンと平べったくなるのでは無くて、E の空間が中央に圧縮されるような形となります。
このようなことが起こると、事実関係は別にして、鼻の奥とか眉間とか頭蓋骨の中央辺りに、音の響きが芽生えて来たような感じにもなりますから不思議です。
U の音は地中深く掘り進むような縦のラインを感じ易かったのに対し、今やっている I は頭を抜けて天の方へ向かう縦のラインを意識させてもくれます。
ここまで来るとさすがに E 音のように A と同じ位に口をはっきり大きく開けたままという訳にはいかず、外から見た口の形は自然と少し中央寄りに狭くなる感じです。 
そしてこの音もやっぱり難易度が高いので、頬骨を指で補助する方法をプラスします。
昨日の説明のように、鍵型に曲げた人差し指で頬骨をしゃくり上げるようにリフトアップしたら、その指を左右から中央に向けて寄せます。
そうです、かなり変顔になります。でも、音は勝手に I に変わってしまいます。
先ずは「 Aーーー 」と出して直ぐに人差し指で頬骨をしゃくり上げて「 Eーーー 」に変化させたらすかさずその指を中央によせて「 Iーーー 」に変えて、そしたらまた直ぐに指を離す、すると一瞬にして音は「 Aーーー 」に戻る、そんな遊びを繰り返してみてください。
本当に、発声とか発音の概念が変わって来ますから。
そうしてこのような感覚に慣れて来ましたら、" I " の音が出ている時に指を離してしまってもそのままの音がキープ出来るように口腔内部の形を保存するよう心掛けてみてください。
この取り組みと胸骨から鎖骨に掛けて触るやり方を組み合わせて、縦への高い高い方向性を持った " I " 本来の響きを取り戻すことが出来ます。
このような純度の高い I の響きなど、生きている中で直接的に使用する場面など皆無に等しいかと思います、正直言いまして。
しかし、この響きを出すことが出来る程に柔らかで、過度な緊張から解放された顎関節や舌や口腔内部から共鳴腔までを持ち得た人が発する日常の音声のクオリティーをちょっと想像してみてください。
そして更に付け加えますと、この I の響きまでを取り戻せた後のその他の四つの母音、中でも対極の暗さが特徴の U の音にも、I に U の深さが息づいているように、U には I の明るさが隠し味のように加味されます。
全ての音が割と苦労なく再現出来るようでしたら是非、骨盤底からの折り返しのエネルギーに乗せて、「UーーOーーAーーEーーIーーーーーー」、「IーーEーーAーーOーーUーーーーーー」と繋いでみてください。
きっとその響きで、体の中のパイプ掃除をしているような、そんな心地好さが味わえます。
余り高い声を出すのが得意でない方、特に男性は、裏声も試してください。
声の明瞭度や響き具合にもきっと変化が起きて来ます。
さあこれで、五つの母音に関しての一応の説明は全て終えたことになります。
が、ここにもう一つ、豊かな響きの仕上げをご提案します。
先程も、五母音の端っこの二音である U と I の関係性に付いて述べましたが、もっと具体的に、実際の音を用いてこの U と I の長所を結合させます。
これには、ドイツ語特有の音を借りて来ます。

つづく
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