気楽に読んでください、呼吸のおはなし ~その67~

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今日もお読みくださっている皆さん、誠にありがとうございます。
書いている本人も、コアな呼吸の話からどういう展開で今のような内容へと進んで来たのかよく思い出せない時もある位、特異な話題が続いてます。
それをここで少し整理するならば、深い呼吸に目覚めた時に初めて折り返しの方向性、内界から外界へと働き掛ける本能が開花し、その最も代表的な表現媒体が声であること。
その声を、自分の感覚の最深部から途切れず一繋がりのポジティブなエネルギーとして周囲へと波及・共鳴させる術を、五つの代表的な母音を使って解説しているところです。
そして昨日の I の音で、五つの代表的な母音の中では最も明るくて上昇志向の広がりある響きに到達したことになります。
今日はそれにもう一つ、更に深い、この深いとは、勿論骨盤底の感覚そのものとも言える U の母音の持つ深さの意味でもありますし、顔や額の奥深くを縦に貫く感覚という意味での深いでもありますが、そういう深い音に触れていこうと思います。
これは、昨日の要領で顎や舌に余分な緊張を持たずに I の音を出せる人には易しい作業です。
先ず、上唇と鼻の間の縦筋の所に片手の中指を当てます。
そして、鼻筋の上端、眉間の下辺りの窪みにもう片方の手の中指を当てます。
この両中指を強めに食い込ませるように、I の音を出しながら上下に開くようにスライドさせます。
かなりの変顔になります。
でも音は、I だったものが、ドイツ語で言うところの、" Ü " (ユー ウムラウト) という音に変化しています。
上唇の方は中指でグニュっと下方へゆがめられ、小さな嘴みたいな形になってしまいます。
鼻筋の上端に当てた中指は眉間から額の中央に溝でも掘るような感じで上へゆっくりと実際に滑るように移動します。
この " Ü " の音で五つの母音は、その上端の I と下端の U でループすることになります。両方の音の豊かさ深さを兼ね備えた音がこの " Ü " と言えるからです。
この音を実際に自分の体と顔で響かせてみて感じることは、I では若干希薄になり掛けていた骨盤底の深さへの回帰、そして、より顔や頭部の中心に向かって深い処での頭の天辺から頭上の空間へと抜ける響きの筋道のようなものです。
この音が出せている時は、本当に眉間の辺りから額の上部、髪の生え際の辺りに掛けて、縦に筋というか溝のような感覚を実感します。そこに音が響いているような感じです。
そうなったら、指はもう顔から離してください。
指の補助が無くなっても、その音をキープするよう試みてください。
きっと、普段の表情や言語使用では使わない色々な筋が作用して、豊かな音の響きを助けようとしてくれる筈です。目の表情なんかも自然に変わることと思います。
頭部共鳴とか、共鳴腔とか昔から音声の響きに関しては様々な仮説や有力視されている学説など色々とありますが、ある研究によると、これら頭部や顔面は、実際にはさほど、というか殆ど、共鳴なんかしていないというものもあります。
そこで大事になってくるのが、だからこそ冷静に感覚を研ぎ澄ますことなんです。
実際に振動計を装着して結果がどうとか、そのようなことは科学が後から付いて来ているだけで、大事なのは表現者はひたすらに本当の心地好い感覚を呼び起こし、それらを信じることに尽きます。
恰も本当に眉間や額に響きの道筋が通って感じられる時、その時の音声には周囲の耳が、静かに聞き入るなどの好反応を確実に示しますから直ぐに分かります。
その感覚で上手くいっているのであれば、科学の " 助言 " によってその大事な感覚に迷いなんか生じさせることは無いのです。
今日ご紹介した " Ü " の響きが楽に出来て楽しめるようになると、更に話し声の響き、明瞭度にも好反応が現れます。
マイクにも拾ってもらい易くなったり、歌を歌う時には特にその恩恵を感じるかも知れません。勿論マイク無しの生音でも。
喉に負担の掛からない、詰まりは、聞き手の心身にもより負担の掛からない優しい響きの声を、知らず知らずの内に発している自分がそこに居ることになります。

つづく

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