気楽に読んでください、呼吸のおはなし ~その68~

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本日もお読みくださりありがとうございます。
大丈夫ですか、最近の内容、書きっぷりは。
もう、音声表現の話はここらで一旦置こうかと思ったのですが、頭部共鳴のもう一つの重要なルートをご紹介することにしました。
昨日やったのは同じ頭部の響きでも、顔の正面側中央の響きでした。
今日ご紹介するのは、その正面の響きを後頭部で増幅させる技術です。
ここではこれまでに使った色んな音の中から、" U " や " M " や " Ü " を使っても良いのですが、もう一つの便利な子音を覚えて使うことにしましょう。
その子音は、" N " です。
これまで同様、充分に緩んでぶら下がったような顎で、口腔は平べったくならずに縦長のスペース確保が基本です。その中でこちらもリラックス感を得た舌先が、上前歯中央の裏側に軽く触れるようにし、口は閉じません。
それでそのままの状態で唸り声をだせば、それが子音 " N " ということになります。
この " N " を小さめに出しながら、鼻骨の上の方、メガネが乗っかる辺りを指で摘まみます。すると、そこに音が微かに響いて振動しているのが感じられるかと思いますが、先ずはここをスタート地点として設定します。
ゴールは後頭骨の中央下端にして首の骨との接点である、俗に言う盆の窪(ぼんのくぼ)という急所部分です。
N音を出しながら、両手の中指か人差し指でそのスタート地点からゴール部までゆっくりと目の下の涙袋をなぞり、耳の上を通過して辿り着きます。これを何度も繰り返してみましょう。
これに慣れて来たらルートを変えてみます。
今度は頬骨の下辺をなぞり、耳の下を通過してゴールの盆の窪へと指を滑らせてください。
これらを何度か繰り返す内に、鼻骨にあった微かな響きが、まるで指先に先導されるように後頭部側へと繋がり、その感覚を受けて、指が盆の窪に到達する直前には掌全体で後頭骨を上方に向けて撫で上げたい衝動が出て来ると思います。
それで、実際にそのように後頭部を盆の窪から上に向かって撫で上げていると、子音 " N " に母音 " O " が繋がって、" NーーOーーーーーー " と言ってしまっている自分に気が付くと思います。
誤解や危険を承知・覚悟の上で無理矢理日本語の音に書き換えるとするなら、「ヌーーオーーーーー」、「ヌオーーーーー」、「ノーーーーーーーーー」とでもなりましょうか。
喉の奥の天井部分、軟口蓋が本当に高く高くスペースを作り、掌が下から撫で上げる動きにつられるように、不思議ですが音階もほんの少しずつ上昇します。
このような音の出し方で遊んでいる時に大事なのは、自分の意思でコントロール出来ていないような変な音が出てしまうことを歓迎することです。
声がひっくり返ったりなんかは、もうそれこそを大歓迎してハプニングを楽しむゆとりが、拘りの無い開かれた本来の音を取り戻す契機となってくれるからです。
裏声が出せない方が時々いらっしゃいますが、このようなハプニングがきっかけで感覚を掴み、克服出来ることも大いにあり得ます。
それで、ここで決して先回りして音階を自分の意思で上げようとはしないでください。あくまでも、後頭骨を撫で上げる感覚に案内してもらうように、自然と音が高くなる気配に素直になってください。
今日のような体と音の遊びを楽しめると、生まれながらに高音が得意な人は更に省エネルギーで楽に、音域が伸びる可能性もあります。
また、高い音域を与えられていない人も、自分の声域内での高音部に違った解釈が生まれて、それなりの変化を味わえると思いますし、音色の多様化が進むと思います。
それから、このように後頭部の響きの感覚が目覚めて来ると、まるで共鳴板や反射板のような効果も発揮され、音の厚みやサラウンド感も加味されて来ます。
本当に、その表現を伝えたい対象に向かって益々届きやすくなりますし、内面にも浸透し易くなってゆきます。
それが言葉であっても、歌であっても、です。
数え上げればこのような音域に踏み込むような楽しい音遊びは他にもそれはそれは色々とありますが、声の話は今回で一旦一区切りとさせて頂きまして、明日からはまた、呼吸や体そのものの話題へと戻してみたいと思っています。

つづく
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