すべての憂鬱にさよならするために うつ病罹患者のご家族の方へ

すべての憂鬱にさよならするために うつ病罹患者のご家族の方へ

記事
コラム
 暗闇の中にいるとき、私たちは言葉による励ましよりも、ただ静かに隣にいてくれる存在を求めているのかもしれません。
 うつ病という深い心の痛みの渦中にいるとき、そしてそれを見守るご家族にとって、回復への道のりは決して平坦ではなく、ときには先の見えない不安に押しつぶされそうになるものです。
 そんな一進一退のプロセスを、蒼俊が愛してやまないKANさんの「すべての悲しさにさよならするために」の一節をお借りして、筆を勧めたいと思います。

「君の真ん中に今ぼくがいること確かめるように、君の名を呼ぶ優しさの意味 間違がえぬように」

 本当の「優しさ」とは、一体どのような形をしているのでしょうか。相手を想うあまり、「早く元気になってほしい」と焦る気持ちは自然なものです。
 しかし、「本当に求められている優しさ」は、ただ相手の存在をそのまま認め、その名前をそっと呼ぶような、静かな肯定感なのかもしれません。
 言葉を並て励ますのではなく、ただ傍にいること。その温かさこそが、傷ついた心をゆっくりと耕していきます。

「君の隙間をうめて行こう。君が笑う時 君が悲しむ時そのすべてを 受けとめてたい」

 うつ病の回復過程は、三歩進んで二歩下がるような歩みです。
 昨日できたことが今日できない。
 そんな自分を責めてしまう患者と、どう接すればいいか迷うご家族。
 お互いに感じるもどかしさや不安の「隙間」を埋めるのは、調子が良いときも悪いときも、そのすべてを否定せずに「受け止める」という「覚悟」です。

「これから二人に起こり得るすべてを 許せるとき 愛は終わらない」

 病気と共に生きる日々の中では、感情がぶつかり合ったり、先の見えない未来に絶望しそうになったりすることもあります。
 しかし、思い通りにいかないお互いの不完全さを「許し合う」ことができたとき、二人の絆はより深いものへと変わっていきます。
 完璧な回復を目指すのではなく、今起こっている現実を共に受け入れ、許しを積み重ねていくこと。それこそが、回復を待つプロセスを支える土台となります。

「それでも時々は不安になる夜もあるよ。君がふとどこかに消えてしまわないかと」

 どんなに寄り添っていても、ふとした瞬間に消えない不安が夜の闇のように押し寄せることがあります。
 そんな息もできないほどの不安な夜は、ただお互いの存在を感じ合えるように、心の距離を近く保つだけで十分です。

「きっと重なりあう偶然に、気づかぬうちに守られてるそう信じていよう」

 私たちは今、同じ時代に生まれ、偶然のようで必然のような縁によって共に過ごしています。
 目に見える劇的な変化はなくても、見えない何かに守られていると信じること。その小さな希望が、明日へ進む力になります。

「声も許さぬほど 君のこと抱きしめてたい。すべての憂鬱にさよならするために」

 すべての悲しみや、心にのしかかる「すべての憂鬱」にさよならする日は、急に訪れるものではありません。
 日々のささやかな許しと、ただ傍にいるという温かさの積み重ねの果てに、気づけば少しずつ光が見えてくるものです。
 焦らず、言葉に頼りすぎず、ただお互いの存在を抱きしめ合うように。病気と共に生きる道のりが、少しでも穏やかな光で照らされることを願ってやみません。

                           沙門蒼俊  合掌

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